2018年USオープン決勝「大坂なおみ vs セレナ・ウイリアムズ」_丸山淳一コーチが戦況分析&ショット解説
女王セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)と大坂なおみ選手(日本/日清食品)の新旧スター対決は、お互いが力を出し尽くす攻防を………期待したのですが、そうはいきませんでした。非常に心を揺り動かされることになったそのUSオープン決勝で、大坂選手はどのようにセレナを倒したのか、そして大会優勝の要因は何か、丸山淳一コーチが“コーチの視点”で振り返ります。【2018年11月号掲載記事】
解説◎丸山淳一 写真◎毛受亮介、Getty Images
まるやま・じゅんいち◎1965年4月8日、東京生まれ。早稲田大学時代の88年にインカレ準優勝。95、96年全日本選手権混合複2連覇。元デビスカップ日本代表選手。現役引退後は杉山愛プロ(95~99年)、岩渕聡プロ(2000~03年)を指導。その間、フェドカップやシドニー五輪の日本代表コーチとしても活躍した。現在は森田あゆみプロ、内藤祐希プロ、早稲田大学テニス部を指導
戦況分析
この試合は「70%のセレナ vs 110%の大坂」という試合だった
戦況分析|注目点(1) それぞれの心理状態とテニスの出来栄え
大坂選手とセレナの勝敗を分けたもの、それは気持ちの持ち方〈メンタル〉だと思います。
セレナは出産してから身体が重くなり、動きも悪く、サービスの速度も以前より、おそらく10km/hくらい落ちています。今年復帰した彼女は、徐々に感覚や動きを取り戻し、グランドスラムの決勝の舞台にやっとたどり着きました。ただ、まだ本来の動き、ストロークの精度、サービスの速度はなく、今回は80%くらいの状態だったと思います。
セレナは間違いなくグランドスラム最多優勝記録「23」を更新するために今大会に出場しました。優勝したい気持ちは人一倍強かったはずです。ところが、気持ちと裏腹に身体がついてこない。80%の状態で臨んだ決勝も、相手が大坂選手ということもあって、完全ではないという気持ちやテニスの出来栄えの低さなどで、さらに70%くらいまで落ちてしまいました。
大坂選手のほうは、まさか決勝までこられるとは思っていなかったでしょう。その舞台に立てただけでも幸せと思っていたかもしれません。そういうときは負ける怖さを感じませんし、やっていて楽しいという、自分の実力が完全に発揮できる状態だったと思います。ですから、70%のセレナに対して、大坂選手は100%もしくは110%で対戦していたと私は見ています。
昨年出産し、今年復帰を果たしたセレナ。ウインブルドン、USオープンと決勝の舞台に上がったが、まだ身体は重く、以前の自分のプレーと葛藤している
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