ジョコビッチの『医療的義務免除』にオーストラリアの怒りが爆発

写真は2021年オーストラリアン・オープンで自身の最多記録を更新する9度目の優勝を果たしたノバク・ジョコビッチ(セルビア/左)と大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏(Getty Images)


 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が予防接種義務免除の許可を得てオーストラリアに旅立とうとしていることをインスタグラムで告げた数時間後にオーストラリアン・オープン主催者がジョコビッチの申請していたものが医療的理由での免除許可だと裏付けて以来、オーストラリアや他国のから次々に非難と怒りの声が上がっている。

 現地新聞の報道によれば、オーストラリアのスコット・モリソン首相は「もしジョコビッチが受けた免除の根拠が不十分なものなら、彼は次の飛行機で家に送り返されることになるだろう」と発言した。

「証拠が不十分だった場合には、彼は他の誰とも同じように扱われる。ノバク・ジョコビッチのための特別な規則などない」

 オーストラリアン・オープンの主催者はジョコビッチは特別扱いを受けた訳ではないと主張しているが、この決断は新型コロナウイルス(COVID-19)に関して世界的に見てももっとも厳格と言えるオーストラリアの規制を経験してきた国民の怒りを煽った。これらの規制が部分的に解かれたあとオーストラリアの感染者数は――欧州と比べればかなり少ない(例えばフランスの1月4日の新規感染者は約27万人)とはいえ――増加傾向にあり、12月29日から1月4日の1週間に毎日平均3万人強の感染者が出た。

 オーストラリアのステファン・パルニス医師は、「彼がどれほど優秀なテニス選手だろうが関係ない。もし彼がワクチン接種を拒否するのであれば、彼は入国を許されるべきではない。もしこの免除許可が真実なら、それは自分や他者へのリスクを減らそうと奮闘している多くの者たちにぞっとするようなメッセージを送ることになる」とSNSにコメントを投稿した。

 ATPカップに出場中だったジェイミー・マレー(イギリス)はこの件について尋ねられ、「何と言ったらいいのかわからない。もしワクチンを接種していないのが僕だったら、特別免除は得られなかったろうね」と回答した。

 一方でテニス界のレジェンドであるロッド・レーバー(オーストラリア)はジョコビッチの義務免除の理由は公表されるべきであり、さもなければ状況は見苦しいものになるだろうと語った。

「彼は偉大なプレーヤーであり、多くの大会でプレーして勝っているのだから肉体面の問題ではないはずだ。では問題は何なのだろうか?」

 オーストラリアン・オープンの大会ディレクターを務めるクレイグ・タイリー氏は、「もしジョコビッチがどのようなコンディションで義務免除を申し込んで許可されたのかを説明すれば、それは間違いなく(騒ぎを鎮める)助けとなる。でもそれは彼次第だ」と話した。ジョコビッチと連絡を取り合っていたタイリー氏は、ジョコビッチは自分に免除措置を許可された理由を明かしていないと明言していた。

 ちなみにワクチンを接種しない道を選んでオーストラリアン・オープン出場を断念したピエール ユーグ・エルベール(フランス)はジョコビッチの一件が明るみに出た直後に「あなたは免除を申請しなかったのか」とフランス紙に尋ねられ、「僕の場合、申請を正当化するものがない。僕は一度も感染していないから抗体もない。検査したけどまったくの陰性で、心臓のエコー検査でも何の問題も見られなかった」と答えていた。

 エルベールはこの一件を肯定的に捉えている選手のひとりで、「申請が受け入れられたなら、正当な理由があったからなのだろう。僕はこれを『ワクチン未接種者も仕事にいく権利がある』という事実として受け取るよ」と私見を述べた。

 なお現地1月5日夜のニュースによれば、ビクトリア州政府とテニス・オーストラリア(豪州テニス協会)はジョコビッチにどのような理由から自身のワクチン接種の状況を明かすことなく入国するための医療的免除許可を与えられたのか世間に説明するようにと進言したという。

 豪州テニス協会の責任者でもあるタイリー氏はまた医療的理由での免除措置を申請したアスリートは26人おり、「連邦政府のガイドラインの下、許可を得た者は数人いる」と明かした。豪州テニス協会によれば、免除申請のほとんどは過去6ヵ月に感染した経験を持つ(したがって抗体を擁する)プレーヤーやオフィシャルからのものだったという。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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