バーティをテニスに復帰させたセレナからのメッセージ

写真はオーストラリアン・オープン優勝翌日のフォトセッションでのアシュリー・バーティ(オーストラリア)(Getty Images)


 15歳にして2011年ウインブルドンでジュニアの部を制したアシュリー・バーティ(オーストラリア)のテニス選手としてのキャリアは、ごく早い段階から将来を嘱望されるものではあった。比較的単調にパワーショットを叩き込むトレンドとは対照的に、バックハンドのスライスと両手打ち、ショットの緩急や球種を巧みに使い分け、ネットプレーやドロップショットを織り交ぜながらプレースメントの見事さでポイントを獲得していく、ある意味で古きよき時代を彷彿させるバーティの多彩なスタイルはそれだけでも目を惹くに十分だった。

 しかしオーストラリアのメディアは、ある出来事がなければバーティがテニス界に戻ってこなかった可能性もあったのだと示唆している。ジュニア時代に大きな成功をおさめて15歳で臨んだオーストラリアン・オープンで初のグランドスラム本戦を経験したバーティは、わずか18歳だった約8年前の2014年にテニスから一時離れること決めた。

 バーティのオーストラリアン・オープン優勝後に彼女の元コーチがオーストラリア・ブリスベンの日刊新聞『クーリエ・メール』に明かしたところによれば、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)から送られてきたメッセージがバーティに復帰を促すきっかけとなったのだという。

 セレナが最終的にグランドスラム大会で3つのタイトルを獲って世界ランク1位の座に君臨していた2015年、当時の女王はバーティにテキストメッセージを送った。

「アッシュ(バーティの愛称)はレストランにいたと記憶していますが、セレナが彼女に『あなたは引退するには優秀すぎる。あなたは復帰しなければいけないわ』とメッセージを送ってきたんです」とバーティの元コーチであるジム・ジョイス氏はクーリエ・メール紙に説明した。

 ジョイス氏は当時、もしバーティが復帰しなければ「それはオーストラリアのテニス史上最大の(才能の)浪費だ」と周囲の人たちに話していたのだという。そしてそれが正しかったことが証明されたと彼は言った。

 またスポーツ専門チャンネル『FOXスポーツ』の報道によれば、2013年にバーティと組んでグランドスラム3大会(オーストラリアン・オープン、ウインブルドン、USオープン)で女子ダブルス決勝に進出した元パートナーのケーシー・デラクア(オーストラリア)は、バーティが今回の全豪で「簡単に勝ち上がった」という言葉を使うのは間違っていると指摘した。彼女は決勝が終わったあと、いち早くバーティを抱きしめにいった人物だ。

「“楽勝”などと言うのは、アッシュがつぎ込んでいる努力を正しく評価していない表現だと思う。ときにアッシュは試合中劣勢に立たされてきたけれど、彼女は戦術的に何をする必要があるのかを明晰に割り出すことができている。それは一夜にして生まれたものではなく、何年にも渡る努力に培われたものなのよ。彼女が体と頭に注ぎ込んだ努力のことは知っているわ」

 元トップ選手で大会中にオンコートでのインタビュアーを務めていたエレナ・ドキッチ(オーストラリア)は、「セレナとバーティはプレースタイルこそ違うけど、ともに比類ない選手であり素晴らしいチャンピオンだわ。アッシュはもう3年も1位の座に就き、グランドスラム大会でいくつものタイトルを獲っている。彼女はこれからも優勝していくと思うわ」とコメントした。

 タイプはセレナがパワーならバーティは多彩さと対照的だが、双方がサービスを重要な武器のひとつとしている。実際バーティは身長166cmと比較的小柄な体格にもかかわらず、しなやかな身体の使い方やコースと回転の使い分けによってサービスで多くのポイントを生み出してきた。

 ここ数年の女子テニス界では単発的にグランドスラム大会でタイトルを獲る者は出ているが、かつてのセレナのように一貫して好成績を挙げて長く1位の座に留まれる存在はいなかった。ドキッチはその意味でも、バーティがセレナと比較できる存在になり得ると考えている。

 ドキッチはまた、「パワーとサービスのセレナ、相手のリズムを崩してパワーを無効化させる能力を持つ多彩さのバーティの対決が実現したら、凄く興味深いと思うわ」とも言い添えた。

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写真◎Getty Images

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