「テニスへの愛、情熱、ポジティブな姿勢と努力を惜しまない心」ナダルが語った優勝への道のりと要因 [オーストラリアン・オープン]

優勝翌日にメルボルンのガバメントハウスで行われたラファエル・ナダル(スペイン)のフォトセッション(Getty Images)


 今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月27~30日/ハードコート)の男子シングルス決勝で第6シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)との死闘を2-6 6-7(5) 6-4 6-4 7-5で制したあと、記者会見でこれまでの道のりを振り返った。

ナダル「この4ヵ月、一滴もお酒を飲んでないよ!」

クレイグ・タイリー大会ディレクター「もう遅いけど、21回目のグランドスラム優勝、何という最高の試合だ」 

ナダル「ありがとう、クレイグ」

タイリー「君は僕ら皆を誇りに感じさせてくれた。これは一生忘れられないことだ。おめでとう。午前2時40分にここに来てくれた皆さんもありがとう」

ナダル「ありがとう。すべてのことをありがとう」

タイリー「ラファに盛大な拍手を!」


ロッカールームでラファエル・ナダル陣営。左からマルク・ロペスコーチ、ナダル、カルロス・モヤコーチ、ラファエル・マイモ フィジオ(Getty Images)

以下、一問一答。

君がこれまでに戦ったグランドスラム決勝で最大の逆転劇と言える?

「すべての要素を考えるとそう言えるね。シナリオ、勢い、この優勝が意味するもの。自分のキャリアの中で間違いなく最大の逆転劇と言えるだろう」

2セットダウンから第3セットの6ゲーム目で3つのブレークポイントに直面した。その大ピンチをどう乗り越えた?

「わからない。あの瞬間は、最大の危機だった。でもスポーツとは予測不能なものだ。最後までファイトしても、普通の状況ならあのままストレート負けだろう。でも、第2セットを取る大きなチャンスがあったのも確かだ。何度もチャンスを逃してきたが、不運もあったと何度も自分に言い聞かせた。最後まで信じ続けた。自分にチャンスを与えたかったんだ。必ず何か打開策はあるはずだと信じ続けた。もちろん、ブレークされなかったのはラッキーだった。決勝の行方を決定づけるような大事な瞬間がたくさんあった。つまり、彼にはたくさんのチャンスがあったんだ。今日は自分が勝てたが、2012年、2017年、2014年とオーストラリアン・オープンでは何度も準優勝の立場を味わってきた。今夜は忘れられない。とてもラッキーだったと思う。それと同時に、ツアーに復帰するために、テニスを続けるために、並々ならぬ努力をしてきたと自負している」

数字上では男子のグランドスラム史上最多優勝者となった。自分が史上最高の選手になったと思う?

「いいや、そうは思わないし、自分の姿勢や考え方を変えるつもりはない。もちろん、キャリアの終盤にきてグランドスラムを獲れたのは最高だ。凄く意味のあること。「21」は特別な数字だということも理解している。その意味もわかっている。このタイトルは凄く重要なもの。先日話したように、この大会で優勝することこそが一番大事なことで、忘れられない日になる。自分が優勝に相応しいとは絶対に言わない。多くの選手が力を振り絞り、優勝に値したと思う。ひとつ言えるのは、とてもポジティブなメンタルを持っているということ。この6ヵ月、コートに戻ってこられるように努力を惜しまずにやってきた。本当に困難な瞬間が何度もあった。ツアーに戻れるかわからなかったから、本当に厳しい話し合いもあった。でも今は誇りに思える。自分のキャリアの中にもうひとつ特別なものを加えることができた。史上最高か最高でないか、唯一の存在かそうでないかはどうでもいいことだ。今日、そんなことは気にしていない。今日のような夜を楽しむことを大事にしている。それがすべてなんだ。オーストラリアン・オープンで2つ目のタイトルが獲れたことが、他のどんな記録よりも意味のあることなんだ」

自分が乗り越えてきたことを考えると、この優勝はキャリア最大の功績になる?

「間違いなく、もっとも予想外のものだろう。君らも含めて、皆にとって最大の驚きだろう。僕にとっては特別だ。ここまでの道のりをすべて知っているのだから。とても感動的な夜だ。フィジカル的には、今ボロボロだ。頭も働かない。試合の記憶があまりないんだ。でも、観客の声援は大きなものだった。試合を通して感情を揺さぶられた。疲労困憊だったから、いつものようには皆と一体になって喜ぶことはできなかった。でも心の中では、試合を通して皆の声援が大きな支えになっていた」 

ダニールの試合中の変化をどう見ていた? 観衆が完全に君寄りだったことが難しかったと言っている。

「よくわからないが、ダニールは偉大なチャンピオン。いい態度で敗北を受け入れていたと思う。辛い夜になっただろうから、彼にはありがとうとしか言えない。あれほど勝つチャンスがあった中で、現在の状況は簡単には受け入れられないだろう。彼は僕に対してはいつもナイスガイだ。このタイトルが僕にとってどれほど感動的で重要なものなのかを理解していた。試合後もとても感じがよかっただろ? 観客が彼に影響を与えたのかどうかはわからない。当然、応援してもらうほうがいいに決まっている。自分にとっては物凄い応援、雰囲気だった。でも彼には輝かしい未来が待っている。彼はこの先、この観客からの愛情を感じられるようになるだろう。それを受けるのに値するからね」

君はビッグマッチで勝つのは犠牲も大きいと常々言っている。足のケガと欠場期間を考えると、今日は更に犠牲が大きかった?

「正直、フィジカル的にはこのようなバトルの準備ができていなかった。練習量が足りなかった。でも今夜は凄く特別なものになった。自分を信じて、自分の中のすべてを出しきった。すべての面で疲れきっている。祝う力も残っていないほどだ。でも今日はすべてを捧げるべき日だった。この戦い、感動を心から楽しんだ。このトロフィーを手にしたことがすべてなんだ。これ以上の喜びはない。少しリカバーして、少し楽しみたいね」

この試合中に足はどのくらい痛みがあった?

「今夜はまったくなかった。見てもらったように、制限なく思い切り走れた。明日になってどんな状態になるかわからないけど、何も気にすることなく純粋に思い切りテニスができてよかった。最高の気分だ。しかし、この先何が起こるかわからない。このケガを完全に治すのは不可能だ。でも1ヵ月プレーを続けられた。予想外でもあり、今後もプレーを続ける大きなエネルギーになる。この瞬間を楽しんで、プレーし続けられるように努力する。ツアーに戻ってこられて最高の気分だ。無理をせずに自分に合ったカレンダーで転戦していくつもりだ」

1ヵ月半前はキャリアを続けられるかどうかもわからなかったが、今はエネルギーに満ちている。今後もトップ選手と戦い続けられる自信はどの程度ある?

「わからない。状況は一瞬で変わるものだ。この1ヵ月のように戦うことができたのはうれしい限りだ。素晴らしいし、忘れられない。これだけ激しい試合と練習に足は耐え続けて、プレーを続けられる。この美しいスポーツをまだ楽しめるという自信は大きく膨らんでいる。プロとしてはそこにとても満足している。しばらくテニスを続けられるだろうと思っている」

この歴史的な決勝戦が今日のように困難で素晴らしいものになったことでさらに喜んでいる?

「歴史に残るのは勝利という結果。でも試合の勝ち方によって気持ちは大きく変わる。このトロフィーを勝ち獲った今日の試合は忘れられない。間違いなくキャリアの中でももっとも感動的な試合のひとつだ。重大な意味がある」

ここまでの道のりで一番困難だったのは何だった?

「足首を捻ったり手首を痛めると、回復まで一定の期間がある。それだと目標が立てやすく、やりやすい。何度も経験してきたプロセスだ。4ヵ月間欠場とわかれば、復帰の日までカウントダウンしていける。その期間の中で回復を実感しながら徐々に実戦に近づいていくことができる。治る確信があるから比較的簡単だ。今回はそれとはまったく異なる状況だった。多くのことが手探りだった。長期間に渡ってまったく前進がなく、回復しなかったんだ。これまでの経験から、この歳での大きなケガで不安が大きかった。ケガが治らないのだから、当然不安は大きくなる。メンタル面でかなりきつかった。毎日ジム、リハビリ、プール、練習コートに行っても、復帰のためにやらなければいけないことがこれほど長くできないのは苦痛以外の何物でもなかった。何度か心が折れたよ。自分の魂、すべての努力、修行の毎日が大きな実を結んだ。すべての時間に支えてくれたチームがいたことに感謝しないといけない。チームというよりは友人のように支えてくれたときもあった。僕には素晴らしいファミリーがいてくれる。いいときも、特に悪いときに支えてくれる。このチーム無くして今日の僕はない」

初めてグランドスラム大会でタイトルを獲得したかのような喜びようだった。クレーコートシーズンに向けてどれほど自信は膨らんだ?
 
「今はクレーのことは考えていない。間違いなく初優勝よりも感情が高ぶった。ベテランになると以前よりチャンスが少ないとわかっているから、このような瞬間の喜びは格別だ。19歳で初優勝のときは当然物凄くスペシャルなものだが、その後もいいプレーを続ければ、また大きな喜びを味わうチャンスが必ずくる。今日は何が起きても不思議ではなかった。もちろん誇りに思う。満足度は何年も前より明らかに大きい。今この瞬間を存分に味わって、先のことはあまり考えないようにする。クレーコートでは何が起こるかわからない。クレーコートの前にも大会に出られればいい。このように忘れられない瞬間を家族と一緒に分かち合いたい。そのあとに次どうするか考えたい」

ここで達成できたことの最大の要因は?

「テニスへの愛、情熱、ポジティブな姿勢と努力を惜しまない心だ。そして1日も欠かさずに支えてくれる素晴らしい人が側にいること。それがすべてだ」

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写真◎Getty Images

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