テニス界にも影響を与えるウクライナ問題「母国のために使命があった」とスビトリーナ

写真はGNP保険オープン1回戦勝利後のオンコートインタビューでのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)(Getty Images)


 ロシアによるウクライナ侵攻は、テニス界にも影響を与え始めている。ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)は国際オリンピック委員会(IOC)が薦めるようにロシアとベラルーシの選手が大会に参加することを拒否したりはしていないが、過去のものも含めて大会のドロー表や選手プロフィールのほかランキングの国籍表示から両国の国旗を外した。

 現在男子世界トップ30の中には1位のダニール・メドベージェフ(ロシア)、6位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)、22位のアスラン・カラツェフ(ロシア)、25位のカレン・ハチャノフ(ロシア)と4人のロシア人選手がいる。また女子でも3位のアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)、14位のアナスタシア・パブリウチェンコワ(ロシア)、16位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、24位のベロニカ・クデルメトワ(ロシア)、26位のダリア・カサキナ(ロシア)がトップ30の中で国籍非表示となった。

 また元選手のセルゲイ・スタコウスキー(ウクライナ)は国を守るため軍隊に参加し、キエフの軍事保護区に向かうことを決めた。フランスの日刊スポーツ新聞『レキップ』のインタビューに応じた彼は、「現在キエフだ。爆弾投下は一度だけだった。彼らはテレビ塔を破壊しようとし、失敗したが5人の一般市民を殺した。人々は恐怖に震えている。彼らはロシアの小隊の奇襲を疑っているので、我々が基地に向かう間も疑惑の目を向けてきた」と生々しい現状を語った。

 家族をハンガリー・ブダペストに非難させて車でキエフに向かったというスタコウスキーは、「妻は反対で、何とか止めるよう私を説得しようとした。妻の両親も同様だった。理解してくれていたのは私の両親だけだった。やる必要があると心の奥底で感じていた。私には妻と3人の子供という家族がおり、家族を守らなければならない。無事に戻り、妻に許しを請えるよう祈っている」と明かした。

 テニスコートでは、ウクライナ人選手がロシア人選手との対戦をボイコットするということも起きていた。もっともエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)は迷った末、メキシコ・モンテレイの大会でアナスタシア・ポタポワ(ロシア)との試合を戦うことを決めた。国旗の色である水色と黄色のウェアで戦い6-2 6-1でポタポワを圧倒した彼女は試合後、「私は母国のためにミッションを担っていた」とコメントした。

 実際にスビトリーナは試合に先立ち、「これはただのWTAの1試合じゃない、肩に母国の重みを背負っていると感じている。母国の民が勇敢に国を守る様子を見ることは、私に多くの勇気を与える」と話していた。

「ここで勝ち取った賞金はすべて、軍隊に寄付します。応援をありがとう」と試合後に彼女は観客の拍手に包まれながら言った。

 スビトリーナの同胞であるデヤナ・イエストレムスカ(ウクライナ)はリヨン・オープン1回戦に臨み、アナ・ボグダン(ルーマニア)に3-6 7-6(7) 7-6(7)で競り勝った。試合後に崩れ落ちた彼女は、「本当に大きなストレスを感じた試合だった。人生を通してこんな感情を経験したことはなかった。凄くナーバスになったわ。もちろん勝ちたかったけど、頭の中を様々な思いが駆け抜け、試合の終りには感情を抑制することができなかった」と打ち明けた。

「私の心は母国にあったけど、魂はコートで戦わなけれならなかった。ドバイではテニスのことだけを考えていたけど、ここでは心はウクライナにあり、魂はリヨンにいる。凄く難しかったわ」

 大会は避難の意味もあって彼女の妹で15歳のユース選手であるイバンナ・イエストレムスカ(ウクライナ)を迎え入れ、妹は試合をコートサイドから見守っていた。

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写真◎Getty Images

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