野次に動揺して試合中に涙を流した大坂を海外メディアも大きく報道、敗戦後に訴えた“インディアンウェルズで起きたあの出来事”とは?
WTAツアー公式戦の「BNPパリバ・オープン」(WTA1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月日9~20日/賞金総額836万9455ドル/ハードコート)の女子シングルス2回戦で、大坂なおみ(フリー)が客席からの野次に動揺して試合中に涙を流すという一件が起きた。
この試合で大坂は第21シードのベロニカ・クデルメトワ(ロシア)に0-6 4-6で敗れるのだが、『デイリーメール』など英語圏の新聞報道によれば、第1セット第1ゲームを落として0-1となっただけのところで観客席から女性客のひとりが「Naomi, you suck」と何度か叫んだ。これは誰かに非常にがっかりしたようなときに言う言葉とされているが、「酷い」「お前は最低」「役立たず」というような侮辱的ニュアンスを込めて使われることが多いスラングだ。
大坂は審判台に近づいて何とかするように頼んだが、審判は誰が声を出したかわからないためどうしようもないと答えて却下した。そして0-2となったところで大坂は涙を流し始めた。
デイリーメール紙によれば、大坂は第3ゲームの前に観客に話しかけるためマイクを貸して欲しいと主審に頼み、何を言いたいのか聞かれた大坂は「罵ったりはしない。ただ心に重くのしかかっているから、あることを言いたいだけ」と答えたが願いは受け入れられなかった。しかし0-3となったあとのチェンジエンドで涙にくれる大坂と話したWTA(女子テニス協会)のスーパーバイザーは、もしもう一度その人物が野次を飛ばしたらその人物を見つけ出すと約束したのだという。
明らかに動揺した大坂はそのセットを0-6で落とし、結局ストレートセットで敗れた。そして敗戦のあとマイクを通して観客と話したいと頼み、聞き入れられると涙を流しながらこう話した。
「正直に言うと、以前にも野次を飛ばされたことはあります。そのときはそれほど煩わされませんでしたが、ここで野次られるのは…。私はビーナスとセレナ(ウイリアムズ姉妹)がここで野次られたビデオを観ました。もし観たことがないなら、観るべきです。どうしてかわからないけど、それが頭の中に入り込んで何度も再生されました。泣かないようにしたんだけど…」
世界のメディアは敗者が試合後に観客に向けて話すというのは異例の事態であると述べた上で、この一件を大きく報道している。
2001年のインディアンウェルズで、ビーナスとセレナのウイリアムズ姉妹(アメリカ)は罵倒された。その年に膝をケガしたビーナスは、セレナと対戦するはずだった準決勝を開始少し前に棄権した。そのあと父のリチャードとビーナスがキム・クライシュテルス(ベルギー)とセレナの決勝を観るために席についたとき、観客がブーイングを始めた。そして試合が進むと、観客はセレナにも野次を飛ばし始めた。父のリチャードは試合後に「人種差別的中傷の標的にされた」と言い、姉妹はそれから何年も大会をボイコットしていたという背景があった。
クデルメトワは野次について、「私にはその女性が何を言ったのか聞こえていなかったわ。というのも本当にテニスに、自分のサービスゲームに集中していたから。彼女が言っていることが理解できていなかったの。でもその後、なおみが泣き出したのを見たのよ」と試合後に語った。
「彼女は数年前にセレナに起きたことを思い出し、その一件と似ていたから泣き出したのね。でも彼女は強い人よ、素晴らしい人でもある。きっと状況は好転すると思うわ」
写真◎Getty Images
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