ATPツアー公式戦の「マイアミ・オープン」（ATP1000／アメリカ・フロリダ州マイアミ／3月23日～4月3日／賞金総額955万4920ドル／ハードコート）の男子シングルス4回戦で、第9シードのヤニク・シナー（イタリア）がワイルドカード（主催者推薦枠）で出場したニック・キリオス（オーストラリア）を7-6(3) 6-3で倒してベスト8に進出した。

　第1セットは互いにブレークチャンスを握りながらもキープし合う熱戦となったが、もつれ込んだタイブレークではポイント間に誰にともなく話していたキリオスにポイントペナルティを与えるという、その競った状態を考えればやや無粋な主審の行為に水を差される形となった。

　これで集中力を失ったキリオスはダブルフォールトでタイブレークを落とし、さらにチェンジコートで審判にペナルティに関する文句を言ったため、更なるペナルティで1ゲームを剥奪された。ワンブレークが大きな違いを生む接戦だっただけに、これはキリオスに大きなダメージを与えることになった。

　しかしそれを差し引いても、前のラウンドと比べてレベルを上げたシナーの安定した戦いぶりは目覚ましかった。

「僕は今日、プレーレベルを上げた。彼（キリオス）は非常にアグレッシブな選手だから、そうしなければならなかったんだ。今日のパフォーマンスには凄く満足しているよ。第1セットの序盤にいくつかのブレークポイントをセーブできたおかげで、自信が膨らんだんだ」とシナーは試合後にコメントした。

　キリオスと比べて明らかに冷静さとプレーの安定性の面で勝っていたシナーは、「フラットに打ってくる彼（キリオス）のバックハンドは、非常に安定していると思う。僕は特にリターンゲームでは可能な限り多くのボールを返そうとしながら、彼を動かして彼のバランスを崩そうとしたんだ」と試合を振り返った。

　シナーは準々決勝で、第28シードのフランシス・ティアフォー（アメリカ）を6-7(2) 7-6(3) 6-2で破って勝ち上がった世界ランク103位で23歳のフランシスコ・セルンドロ（アルゼンチン）と対戦する。

　より見応えのある戦いになる可能性があったふたりの対決に水を差した、試合の局面を考慮しない主審の裁定には疑問を禁じ得なかった。しかしキリオスはそのあと、同日に第2シードのアレクサンダー・ズベレフ（ドイツ）に敗れていた同胞のタナシ・コキナキス（オーストラリア）とともに雪辱を果たす機会を得た。

　ふたりは同日午後に男子ダブルス準々決勝を戦い、第3シードのマルセル・グラノイェルス（スペイン）／ホレイショ・ゼバロス（アルゼンチン）を7-5 6-2で下して4強入りを決めたのだ。

　信じられないようなロブエースを含む数々のスーパーショットで会場を沸かせたキリオスとコキナキスが勝利を決めたあと、観客席からはキリオスコールが上がり、キリオスは笑顔でコートから去った。

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