「ファンが観たいのは鳥かごの中のキリオスじゃない!」ルールの厳格化に反対するブブリク
ATPツアー公式戦の「ロレックス・モンテカルロ・マスターズ」(ATP1000/モナコ・モンテカルロ/4月10~17日/賞金総額580万2475ユーロ/クレーコート)の男子シングルス1回戦で、アレクサンダー・ブブリク(カザフスタン)がワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したスタン・ワウリンカ(スイス)を3-6 7-5 6-2で退けた。ブブリクは試合を振り返り、テニス界の未来に向けて独自の考えを明らかにした。
第1セットを失ってから逆転できた要因、ターニングポイントは?
「彼が十分フィットしていなかったからだ。もう4回も同じことを言ったけど、5回目も言うよ。彼はスピードが戻っていないんだ。僕は勝利には値しなかった。シンプルにそれだけだ。クレーコートで象のようにドシドシと走ってしまう。ストップもできないし、瞬間的に素早く動くこともできない。でも、スタンが戻ってきたことを皆が喜んでいる。できるだけ早く、トップレベルに戻ることを皆が願っているよ」
凄く正直に話すね。
「彼はケガ明けだとしても、クレーコートでは今の僕より強い。もしここで僕が“素晴らしいプレーができた。素晴らしい勝利”と言ったら、それは真実ではない。3ヵ月後にはまったく歯が立たないと思う。僕は負けて静かにビーチへ行くだろうね」
13歳差のある相手で、当然小さい頃に観ていたであろう選手。どんな気持ちだった?
「もちろん素晴らしい経験だ。今年はアンディ・マレー(イギリス)と2度対戦、ここでスタンと戦った。今度はカルロス・モヤ(スペイン)に現役復帰してもらい、相手をして欲しいね。それかロジャー・フェデラー(スイス)かな?」
このところコート上で怒りを爆発させてラケット破壊をする行為などに対して、より厳しい措置が取られるという。ルールを厳しくすべき? それとも少し緩めるべきだと思う?
「どうだろうね。アメリカン・スイングでニック・キリオス(オーストラリア)が爆発したけど、彼は多くのファンをスタジアムに呼び寄せることができる。僕ら選手は何のためにここにいるのか、観に来てくれるファンは何を求めているのか? スーツを着た紳士がコートに立つのを観たいのか?という話になる。鳥かごのように窮屈に囲まれて、話すこともできないのは、あまりに窮屈過ぎる。僕はまだ24歳だけど、誰が観客を集めているのかが気になる。誰がファンを呼ぶのか? 誰がファンをダブルスに惹きつけるのか? ダブルスのファンが来る訳じゃない。ニックがファンをダブルスの試合に惹きつけているんだ。時折、彼はテニスにとってよろしくない行為を見せたり、ルールを破ることもある。でも、だからといって鳥かごを今より窮屈にしてルールを厳格化するのは、テニスの発展のためにならない。もし65歳の老人がテニスのスタジアムに孫を連れてきて、選手が口にする汚い言葉を聞かせたくないなら、厳しいルールがいいかもしれない。でも、現実にはニックのおかげでアメリカやオーストラリアのスタジアムが満員になっている。インディアンウェルズもヒューストンも一杯だ。僕はルールを厳しくするより、ある程度のゆとりがあったほうがいいと思う。当然、守らなければいけないルールは必要で、ファンやボールキッズに向かってラケットを投げてはいけない。でも現実には起こり得るんだ。先日、NBAの試合を観に行ったんだ。単純にバスケットボールと比較できないのはわかっている。テニスは紳士のスポーツでモンテカルロという上品な街で行われる。でも、観客を呼べる選手が必要なんだ」
もっと感情を解放させろということ?
「ああ、少しね。もちろん禁止されている行為もあるし、それは罰せられるべき。でも、もっと自由に話をする権利があるべきだ。アンパイアと話をしても許されるべきだと思う」
今、カメラが舞台裏の選手たちを追っているが、もしカメラが君を24時間密着取材したら、どんな面白いものが見られる?
「もし四六時中カメラに追われていたら、素の自分ではいられないね。僕の発言はすべてカットされてしまうだろう。僕はコーチと絶え間なく、くだらない会話をしているんだ」
そんなはずはないだろ? もっと面白いものがあるだろ?
「常にカメラに撮影されて、僕がそこでいつも通りの姿を見せたら僕は消されてしまうよ。二度と表舞台に出られなくなる。もし、僕がコーチやチームのメンバーと話していることがすべて公になったら、僕は消されるか、誰も僕に話しかけてくれなくなるか、そのどちらかだ」
或いは、テニス界で一番人気の選手になるかもしれない。
「人気の種類にもよるね。チェンジエンドのときに相手の顔につばを吐きかけたら、テニス界で誰よりも有名人になるだろう。どう有名になるか、その内容が重要なんだ」
次の試合に向けて、どのように過ごす?
「しばらくツアーに帯同していなかった妻が今大会は一緒に来ている。コーチもいるからレストランでゆっくり食事でもしてリラックスしたいね。面白いことを教えてあげよう。昨年のクレーコートシーズンが始まったとき体重が80kgだったのが、フレンチ・オープンのときには86kgになっていた」
何故そんなに太った? パスタを食べ過ぎた?
「いや、何もすることがなかったからさ。僕を追い込んでくれる練習相手も、コーチもいなかった。僕は通常モンテカルロに向けてクレーコートで2週間練習している。それがたった1日だけになったら、どうなると思う? 昨年はクイーンズでの試合の前、グラスコートではたった1時間しか練習していなかった。それに比べると今年は大きな違いだよ」
では、次の試合に向けてしっかりリカバリーしてくれ。そしていつでもここに戻ってきて、また話を聞かせて欲しい。
「ああ、負けたときにでも来るよ。負けたらロッカールームに行って泣かなきゃいけないという風潮がまったく理解できないんだ。そしてコーチをクビにしたほうがいいとわめき散らす。いつもそんなことが起きている。ファンは勝敗に関係なく、選手の話を聞きたいはず。僕もそう思っている」
ブブリクは2回戦で、第13シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)と対戦する。
写真◎Getty Images
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