ナダルが決勝に進出するもズベレフの負傷に沈痛「本当に悲しく、今日は多くを語れない」 [フレンチ・オープン]

写真は棄権を告げたアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/中央)と抱擁を交わすラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)


 今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の男子シングルス準決勝で、第5シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第3シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)の途中棄権により最終ラウンドに駒を進めた。

 この試合は出だしから非常に激しく並外れたレベルの死闘となったと同時に、想像もできない形で終わりを告げた。目覚ましいプレーをして全般的な試合内容で見れば優勢だったズベレフが、第2セット6-5からのレシーブゲーム40-30からのポイントでフォアハンド側に打たれたショットを追って走った際に右足首を酷く捻って転倒したのだ。

 転んだ瞬間に上げたズベレフの叫び声から、そのケガの深刻さは伺えた。声を上げて泣くズベレフのもとにスタッフが駆けつけ、ナダルも歩み寄ったあとにズベレフは車いすでコートから退場した。転びながら打ったショットがサイドアウトとなったためスコアではナダルがキープして6-6となり、これから第2セットのタイブレークという場面だったが、ズベレフがプレー継続どころから立つのも難しいことは想像に難くなかった。

 数分後に松葉杖をつきながら戻ってきたズベレフは主審と握手をしたあとナダルと抱擁を交わし、観客に手を振ってからコートをあとにした。試合は7-6(8) 6-6の時点でズベレフの棄権という形でナダルが勝者となった。

 試合後のオンコートインタビューで、「彼にとって本当に厳しく、悲しいことだ」とナダルは険しい表情で語った。

「彼は素晴らしい大会を送っていた。彼がグランドスラム大会で優勝するためにどれほど懸命に戦っていたかは知っている。でもここまでのところ、彼は凄く不運だった。僕が確信している唯一のことは、彼がいずれ一度だけでなくいくつもグランドスラム大会のタイトルを勝ち獲るだろうということだ。彼に幸運と、早い回復を祈りたい」

 実際にナダルが第1セットを取ったのが不思議に思えるほどズベレフは優勢を保ち、目覚ましいプレーをしていた。アグレッシブにポイントを掴みにいくズベレフはストロークで打ち勝ち、ナダルを振り回してラリーの主導権を握っていた。それでもナダルがタイブレークの末にセットを取れたのは、全体的に見て劣勢でもかの有名な『重要な場面でレベルを上げ、ポイントを掴む能力』で勝っていたからだ。

 タイブレークで6-2とリードしたズベレフはセットポイントを握ったが、不屈のナダルがそこでレベルを著しく引き上げた。サーブ&ボレーを試みたズベレフのボレーミスに相手の決め球をナダルがクロスのパッシングショットで切り返すスーパーエースが続き、点差はみるみる縮まっていった。追い上げられる中でもズベレフは気持ちを切らさず張り合い続けたが、最後はフォアハンドの逆クロスをナダルがダウン・ザ・ラインに叩いてタイブレークはナダルの手中に落ちた。

 プレーの調子という面で波に乗っていたズベレフは、このような形でセットを落としても心を折られなかった。ブレーク合戦となった第2セットも、互いに仕掛け合いながらも続いた44本のラリーなど驚くべきポイントが見られる壮絶な凌ぎ合いとなった。このセットでもじりじりと優位に立ったズベレフは5-3からサービスゲームを迎えたが、ここでこの試合で唯一のまずいゲームした。彼は3本のダブルフォールトを犯し、絶好のチャンスでブレークバックを許してしまった。

 それでもズベレフは直ぐに体勢を立て直し、6-5としたあとのナダルのサービスゲームで前述の転倒が起きた。

 手にした好機を繰り返し逃し、それでも挫けず高いレベルを維持していたズベレフは、ここでの自分の調子からこのロラン・ギャロスでの優勝の可能性を強く感じていたはずだ。ケガをして倒れた直後に泣き叫んだのは、痛みのためだけなく手にしていた絶好のチャンスをもはや追えなくなったと悟ったためでもあったのかもしれない。

「スーパータフな試合だった。3時間を超えたのに、まだ第2セットも終わっていなかったんだ。彼が今日のように途轍もなくハイレベルなプレーをすると、ツアーの中でも一番難しいチャレンジになる」と試合後のオンコートインタビューでナダルは話した。

「この状況で多くを話すのは難しい。皆も知っての通り、僕にとってはまたロラン・ギャロスで決勝の舞台に立つということは間違いなく大きな夢だ。それと同時にこんな終わり方は…。実は、今コートに戻ってくる前、小さな部屋でサーシャ(ズベレフ)と2人で一緒にいたんだ。彼が泣いているのを見るのは辛かった」

 少なくともズベレフはその別次元のプレーと勇敢な戦いぶりで、観客の目に強烈な印象を焼き付けて去っていた。その壮観なバトルのもうひとりの主役であるナダルは日曜日に、初のグランドスラム大会決勝に挑む第8シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)と顔を合わせることになる。

 ルードはナイトセッションで行われたもうひとつの準決勝で、第20シードのマリン・チリッチ(クロアチア)を3-6 6-4 6-2 6-2で退けた。

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写真◎Getty Images

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