「観客の頭にボールを当ててなぜ失格じゃない? 俺ならアウトだ」キリオスが3回戦でチチパスの行為を批判 [ウインブルドン]

ウインブルドン3回戦でステファノス・チチパス(ギリシャ)を倒したニック・キリオス(オーストラリア)(Getty Images)


 今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月27日~7月10日/グラスコート)の男子シングルス3回戦でニック・キリオス(オーストラリア)が第4シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)を6-7(2) 6-4 6-3 7-6(9-7)で倒し、試合後の会見ではマスコミを通して批判の応酬となった。

「ジェットコースターのような試合だった。いいレベルのプレーができた。グランドスラムの第2週の勝ち残ることができてうれしい。これでウインブルドンの第2週目は4度目かな? グラスコートで取り組んできたことが結果にも出て、スーパーハッピーだ」

チチパスが君についての発言をここで繰り返したい。“彼はいじめっ子。いじめっ子は好きじゃない。邪悪な面がある” どう思う?

「何て言ったらいいかわからない(笑)。俺がどれほどいじめていたかわからない。彼のほうこそ、俺をイジメた。観客を攻撃した。俺は何もしてないぞ。アンパイアにはいろいろ言ったが、ステファノスには何も言っていない。ボールを打ちつけた訳でもない。君はどう思っているんだ?」

もっと選手同士コミュニケーションを取って、君がコートに持ち込むものに対処したほうがいいと言っていた。

「もし俺が2大会連続で同じ相手に負けたら、かなり悔しがると思う。まずは、俺を倒す方法を考えるのが先じゃないか。そのあとにコミュニケーションについて考えるべきだ」

君がアンパイアと言い合って、ステファノスが気分を害した。これは狙ってやっているのか? それとも感情に任せて言っただけ?

「俺がフィリップ・クライノビッチ(セルビア)とプレーしたとき、彼は観客に向けてボールを打ったりしなかった。だから、ステファノスが打ち込んだあともプレーを続けていたのが不思議でならない。俺が同じことをしたなら退場させられている。何が起きているんだ?と疑問に思った」

今は基本的に選手が観客席にボールを打ち込むことで失格になることはない。このルールは変わるべき?

「君は選手が観客の頭にボールを打ち込むことで失格にならずにOKだと思っている? 今日のシーンでどう思ったんだ?」

実際に当たった訳じゃないと思う。

「いや、壁に跳ね返ったボールが頭に当たった。映像で見返したんだ」

OK。でも観客席にボールを打ち込んで罰せられた事例は見たことがない。

「ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は?」

彼はラインジャッジに当てたんだ。

「じゃあ、俺はボールを観客に当てても失格にならないのか?」

そうじゃなくて、一発で失格になるべきと思わない?

「君はどう思うんだ? 俺が観客にボールを当てても失格にならないでいいと思う? 君は現状のルールに反対で、失格になるべきだと思っているんだろ?」

そう思うわ。

「じゃあ、俺たちの意見は同じだ。これでいいじゃないか! どうして彼はプレーを続けられたんだ?」

一般的に選手はあれでは失格にならない。

「一般的とは何だ? 今日の行為は正当化されるのか? 彼は観客席に向かってボールを打ち込んだ。それが壁に当たって観客の頭に直撃した。以上だ。次の質問」

今日の試合で君らは2人ともコードバイオレーションを受けた。ステファノスはボールを打ち込んで…。

「彼の行った行為と俺を同等レベルで扱うのはやめてくれ。頼むよ」

彼は謝罪した。

「それでOKなのか? 俺は何度も謝罪したが、多額の罰金を支払ってきた。俺は何をやったんだ?」 

相手を侮辱した。

「俺は罰金を科せられた。罰金を科せられたのに謝罪する必要があるのか? いつも罰金を科せられてきた。だから、彼にどんなことが科せられるのか、凄く気になっている」

君は今大会素晴らしいプレーを見せている?

「ありがとう!」

優勝する自信はある? 優勝したら今日のサーカスのような出来事をどう振り返る?

「絶好調だ。今日のサーカスは彼が主役だった。俺はフィジカル面でも調子がいいし、明日試合があってもプレーする準備はできている。彼は重大な問題を犯した。俺はロッカールームでは人気者だ。友人もたくさんいる。悪いが、彼は好かれていない。俺の調子はいいが、とにかく1試合ずつだ」

かなり相手と揉めた試合だが、今後もすぐ友人に戻れるのか?

「気にしていないね。俺が地元に帰ったときの姿を見てごらんよ。一緒にバスケットボールをしている仲間は、やんちゃな奴ばかりだ。ウインブルドンで対戦する相手はもっと柔らかい。俺はもっと激しい奴らを相手にしている。彼が今日の出来事で影響されるなら、それまでのこと。俺以外の選手でも今日のようにする選手はいるかもしれないが、それで彼との関係がダメになってしまうのか? 今日揉めたというのは大したことじゃないと思う」

ベスト16に(女子のアイラ・トムヤノビッチを含めて)4人のオーストラリア人選手が残っているのは1999年以来のこと。特にジェイソン・クブラー(オーストラリア)の健闘をどう思う?

「アレックス・デミノー(オーストラリア)が勝ち進んでいるのは驚きではない。このところ調子を上げている。かなり安定感があり、第2週に残っても不思議ではない実力者だ。クブラーは先週、インドアコートでの試合を観たが、素晴らしいプレーを見せていた。今日は、俺の親友の一人ジャック・ソック(アメリカ)を倒した。クブラーは調子がよさそうで、ボールが大きく見えているようだ。オーストラリア勢がウインブルドンで活躍する姿をとても誇りに思う」

もしベスト16で勝てば、アレックスと対戦する可能性がある。楽しみじゃない?

「どちらも4回戦でかなりタフな相手と戦う。彼はフリッツ・テイラー(アメリカ)で、俺はブランドン・ナカシマ(アメリカ)だ。ナカシマは3回戦でストレート勝ちで楽勝だった。ウインブルドンのグラスコートで圧勝するのは簡単なことじゃない。警戒している」

今日君はデニス・ロッドマン(NBAのスターだったが、私生活で問題があった)のTシャツを着ている。彼のことはどう思っている?

「このTシャツは洗い立てだ。家で見つけたから着ただけだ。今日もテレビでバスケットボールを観てきたが、NBAは素晴らしい手本だ。選手たちは凄く勝つことに飢えている。トラッシュトークもする。俺は今日の試合、トラッシュトークさえもしていない。でも、彼は俺がいじめたと言う。何もしていないさ。何か意図したものは何もない。ただ、コートに立って試合に勝とうとしただけだ。成功した。うまくいったよ。チチパスと仲よくするためにコートに立った訳じゃない。ステファノスを褒め称えるためじゃない。俺はデニス・ロッドマンになろうとしている訳でもない。自分自身でありたいだけだ」

君はいつも批判の的になっている。今日の出来事以外にもあまりに批判され過ぎているると感じないか? ただ、今日の試合で相手が簡単なショットをミスしたとき、君は“グッドショット!”と言った。これはよくないと思う。

「でも、ここにきてイジメられたとは言われたくないね。俺は“ナイスショット!”と言っただけだ。ちょっと自分でコントロールできない状況になってきているな。周囲の評価は気にしていない。何を言われようと、マスコミは俺がウインブルドンの4回戦を戦う姿を観ないといけない。今週は凄くいい状態だし、マスコミにどう思われているかは関係ない。自分のことに集中するだけだ。自信を持ってプレーする。いい準備をして、自分の思った通りにプレーするだけだ。ステファノスがミスしたときの話をすると、あれは実際には簡単なショットじゃなかった。俺はいいサービスを打ったんだからね。昨日、彼がバックハンドのリターンを練習する姿を見かけたんだ。彼のショットが後ろのフェンスに直撃したから、“グッドショット!”と言ったんだ」

ステファノスがグランドスラム大会で優勝できない理由がこれだと君は言ったね?

「いいや、グランドスラムとは言っていない。それは君が勝手に付け加えたんだ」

では、自分がグランドスラム大会で優勝できない理由は何だと思う?

「移動が好きじゃないんだ。テニスは移動が多くて大変だ。オーストラリアに住んでいると、フルスケジュールを戦うのに年間8ヵ月は遠征に出ないといけない。それは自分が望むような生活じゃない。それがまず一番の理由だと思う。あとは継続性の欠如かな。年間を通して高いレベルのプレーを維持したことがない」

今年は一番調子がよく、継続性もあるのでは?

「そうでもない。世界で13位になったことがある。でも、今はトップ10に留まるほど、ツアーで十分な大会数に出ていない。毎週のように上位に勝ち上がらなければならないだろう。俺はランキングなど見ない。今日の試合で自分が優位だと思っていた。彼も同じように思っていたはずだ」

ステファノスがいろいろ言ってきて、君もここで応戦した。彼のほうから1対1で話し合うことを提案すると思う?

「彼は絶対にそんなことしないさ。俺が今日一体彼に何をしたのかわからない。彼に対して攻撃的だったとは思わない。彼の顔を狙ってボールを打った訳でもない。この試合で怒りがあったとは思っていなかった。少なくとも俺はステファノスに対して何も怒ることはなかった。彼の怒りがどこからきているのかわからない。彼がボールをスタンドへボールを打ち込んだとき、彼のチームがいる場所を目掛けていた。明らかに、チームの人間と何か言い合っていた。負けているときは怒りがこみ上げるものだ。こちらから彼と話をすることもない。どうして怒っているのかわからない」

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写真◎Getty Images

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