フェデラーがその比類なきキャリアに涙の別れ [第5回レーバー・カップ]
2017年に創設された『欧州選抜vs世界選抜』のチーム対抗戦「第5回レーバー・カップ」(イギリス・ロンドン/9月23~25日/室内ハードコート)が開幕し、2勝2敗で初日を終えた。
3日間に渡って5つのセッションが行われるこの大会は、チームが勝つためには13ポイントを獲得する必要がある。各試合の勝利は金曜日が1ポイント、土曜日が2ポイント、日曜日は3ポイントの価値を持つ。
今大会を最後に引退することを表明していたロジャー・フェデラー(スイス)と友人であり宿命のライバルでもあるラファエル・ナダル(スペイン)が仲間として手を組む夢のダブルスが5年ぶりに実現し、フェデラーはその友と一緒にキャリア最後の試合をプレーした。
「僕は幸せだ。悲しくはない。もう一度僕のショットを試すことを楽しんだ。やることすべてが最後だった」と試合後にフェデラーは語った。
また今大会にはフェデラーとナダルに加え、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に地元のアンディ・マレー(イギリス)と『ビッグ4』が勢揃いし、フェデラーの比類なきキャリアと4人で築き上げてきた黄金時代を欧州選抜のチームメイトとして祝い合った。
レーバー・カップの第1回大会で初めて実現し、ファンを歓喜させた“フェダル(フェデラーと&ナダルのダブルス)”は彼らの長く特別な関係を締めくくるのに相応しいものだった。
膝のケガと手術により2年以上プレーしていなかったフェデラーは試合前、「うまく対処できるかわからないが、トライする。過去にも非常にナーバスになったことはあったが、ラファと一緒にプレーできるのだからまったく違う気分だよ」とちょっぴりの不安を口にしながらもナダルへの完全な信頼を見せていた。彼は大会前、身体の状態を考慮するとシングルスをプレーすることは不可能だと明かしていた。
しかしジャック・ソック/フランシス・ティアフォー(ともにアメリカ)に対するこの試合で、フェデラーはダブルスで見る限り変わらず輝かしいその美技も披露してみせた。見事なボレー、ぎりぎりでラインを割ったものの奇跡的なポール廻しのフォアハンドも飛び出した。
試合は非常に接戦となり、第1セットはフェデラー/ナダルが先取したが、第2セットはタイブレークの末にソック/ティアフォーが取り返した。第3セットのスーパータイブレークでフェデラー/ナダルは9-8からマッチポイントを手にしたが、最終的にソック/ティアフォーが11-9で制して試合は世界選抜の勝利となった。
最後の試合を勝利で終えられなかったことがほろ苦い味を残したとはいえ、フェデラーはスーパータイブレークの6-7から見事なボレーを決めて7-7と追いつくなど最後まで全力の好プレーで観客を沸かせた。
試合後に涙を抑えきれないフェデラーを皆が抱擁し、会場には感動と悲しさの入り混じった雰囲気が溢れた。欧州選抜がコートに並んでフェデラーを祝福したあと、ジム・クーリエ(アメリカ)のオンコートインタビューを受けたフェデラーは涙を拭きながら「素晴らしい日だった。僕は幸せだ。悲しんではいない。ここにいることができてうれしいし、もう一度僕のショットを打つことを楽しんだ。試合は素晴らしく、僕はこれ以上ないほど幸せだ」と観客たちに挨拶した。
それからフェデラーは自分のため駆けつけてくれたナダル、ジョコビッチ、マレー、そして他の選手たちに感謝の気持ちを捧げ、「僕はこれを、お祝いのようだと感じている。僕はそんなふうに感じたかった。だから、皆ありがとう」と話した。
「素晴らしい旅だった。もう一度やれるとしても、僕は同じ道を辿ることを選ぶだろう」と言ってフェデラーが涙を流すと、客席のミルカ夫人も両親も、近くにいたナダルも涙を流した。
「ここにいることができてうれしい。ラファと同じチームでプレーし、駆けつけてくれた他の皆、すべてのレジェンドたちとここにいられることは…。ロケット(ロッド・レーバー氏の愛称)、ステファン・エドバーグ(スウェーデン)…、皆ありがとう。そしてもちろんチームメイトたち。アンディ、ノバク、マッテオ、カム(キャメロン・ノリーの愛称)、ステファノス、ラファ、キャスパー、そして他のチームの皆、君たちとここにいられることは本当に素晴らしい」
フェデラーは皆にお礼を言い、欧州選抜の仲間全員が彼に暖かい眼差しと拍手を送ったが、その中でもフェデラーとナダルの関係がやはり特別なものだったことはそのあとのワンシーンから見て取れた。挨拶を終えたフェデラーがコートサイドに座って涙を流しながら歌手の歌声を聴く間、その横に並んで座っていたナダルも負けないほど泣いていたのだ。
挨拶を終えてベンチで涙を流すロジャー・フェデラー(スイス/左)とラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)
写真◎Getty Images
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