土に塗れた12のタイトル----ナダルが12回目のフレンチ・オープン・タイトル獲得
それは、ティームにとって気持ちを挫かれることだったに違いない。しかしティームは、ロジャー・フェデラー(スイス)がナダルに敗れた準決勝でやったように、ボールをスタンドに打ち込んだりはしなかった。ティームはサイドラインにある灰色の椅子に座って脚を揺らし、ナダルのほうに密かに一瞥を投げながらエナジー・バー(栄養補給のためのスナック)を噛んでいた。
たとえ短い時間だったとしても、ティームは奮起した。驚くべき流れの移行があり、観客が双方の選手の名前を呼び合う中、そこまで自分のサービスからの26ポイントのうち25ポイントを取っていたナダルがブレークを許し、第2セットを献上したのだ。
それはロラン・ギャロスでの4度の対戦で、ティームがナダルから奪うことのできた唯一のセットだった。その時点では、これは長い試合になるかもしれないという期待も生まれた。
ところがティームは、端的に言ってしまえば、そこから萎れてしまったのだ。彼のわずかな勢いの減退は、ナダルが突破口を開くに十分なものだった。ナダルはネットでマジックを生み出し、ネットに出た27回のチャンスのうち23回でポイントを取った。ティームにできるのは、ただ見守ること、そして称賛するため親指を上に向けることだけだった。
「ほぼ皆が、彼はテニス界のベストボレーヤーのひとりだと言うだろうね」とティームは言った。
「なぜって、彼が最後にボレーをミスしたのは、たぶん7年くらい前だと思うよ」
そしてまもなく、すべては終わった。クレーの王者の名で知られるナダルは、変わらず王座に君臨している。
(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
※写真はフレンチ・オープン決勝でドミニク・ティーム(オーストリア)を破り、大会12度目の優勝を遂げたラファエル・ナダル(スペイン)(撮影◎毛受亮介)
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