「自分の呼吸する音が聞こえる」無観客で開催される初のグランドスラムはUSオープンを変えるか?

野球のメジャーリーグやNBAのようなチームスポーツを空のスタジアムやアリーナで行う場合、同じユニフォームの誰かが背中を叩いてくれたり励ましの言葉をかけてくれたりする。しかしテニスでは、プレーヤーはそこでたったひとりだ。チームメイトもいなければ、近くにいて細かい指示を与えたりプレーの分析をしてくれたりするコーチもいない。
「テニスはとてもメンタルなスポーツだ。だからこそ、ファンなしではもっと難しくなるのだと思う。アーサー・アッシュ・スタジアムのナイトセッションで、午前零時過ぎに第5セットをプレーしていると想像してみるといい。通常の年なら観客から非常に大きなエネルギーを得られる。彼らは本当に多くのもの、素晴らしい雰囲気を提供してくれる」とドミニク・ティーム(オーストリア)は私見を述べた。グランドスラム準優勝歴3回の彼は、ニューヨークでノバク・ジョコビッチ(セルビア)に次ぐ第2シードとなっている。
「そして今、無人のスタジアムには恐らく自分のコーチとチームがいるだけだ。彼らは(サポートしてくれる)唯一の存在なんだ。その状況は選手をもの凄く孤独な気持ちにさせるだろう。とんでもなく厳しいだろうね。非常に興味深い経験になりそうだ」
それはウインブルドンやロラン・ギャロスよりも遥かに騒々しい観客で有名なフラッシングメドウでは、特に異常なことだ。特にニューヨークのナイトセッションでは気持ちも解放されてお酒も入り、また違った盛り上がりを見せる。
「ウインブルドンのセンターコートに足を踏み入れるとき、そこには“静寂”がある。USオープンでスタジアムに出ていくとき、そこには“轟音”がある」とレジェンドのクリス・エバート(アメリカ)は表現した。彼女はグランドスラムで通算18勝を挙げたが、そのうちの6つをニューヨークで獲得した。
「プレーヤーにとって、メンタル的に能力が試されることになるでしょうね。集中できる者や割り切って考えられる者は――自分たちがグランドスラム大会をプレーしているのだということと、その重要性を思い出せる者という意味だけど――、あまり自制心を抑えられないタイプよりも少しばかり容易に対処できるかもしれないと思うわ」とエバートは分析した。
「いずれにせよ、一生に一度の経験であって欲しいわね」(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
※写真は無観客で行われたウエスタン&サザン・オープンのグランドスタンドコートの様子(Getty Images)
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