セレナは6ヵ月の休止のあと、プレーの準備万端 [トップシード・オープン]

腕を曲げて強靭な上腕二頭筋にキスをしたセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、ベンチプレスなどしなくてもトレーニングにしっかり費やした時間を示して見せた。

「これは天性のものなのよ。どうもありがとう」と23度グランドスラム大会を制したチャンピオンは母のオラセーン・プライスに感謝した。

 セレナは今、約半年ぶりにテニスコートでこの筋肉を躍動させることを楽しみにしている。彼女は月曜日にレキシントンでスタートするトップシード・オープン(WTAインターナショナル/ハードコート)の第1回大会のため、準備を進めている。これはごく最近ツアーに加えられた、今月のUSオープンのための調整に役立つ大会だ。

 3月以来となるアメリカ大陸でのWTAツアー大会は無観客で行われる予定で、彼女の姉でグランドスラム大会優勝歴7回のビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)、元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、2017年USオープン優勝者のスローン・スティーブンス(アメリカ)、新進気鋭のコリ・ガウフ(アメリカ)らも出場する。

 世界9位のセレナは、2月のフェドカップでアメリカ代表としてプレーしたとき以来となる大会に臨む。その翌月には新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックであっという間にすべてが閉鎖され、選手たち全員が長い休止を強いられることになった。

 長いキャリアの中でセレナは、血栓や肺活量に影響を与える肺塞栓症に苦しんだことがある。そのこともあり、彼女はCOVID-19に感染しないよう細心の注意を払ってきた。土曜日のビデオ会見の際に、38歳のセレナはマスクを50枚も所持してソーシャルディスタンスを極端にすることに加え、やや世捨て人のような生活を送っていたのだと明かした。

「そして『セレナのバブル(=安全地帯)』の中にいる皆が、すごく保護してくれていた。だってテニスをプレーすることは素敵だけど、結局のところこれは私の人生であり、私の健康なのだから」とセレナは語った。「私は少し神経質になっていたけど、今はそんなふうでなければいけないわ」。

 今大会に臨むセレナとアザレンカは、オープンな気持ちで競技を再開したいというハングリー精神を持っている。

「どこかで始めたいと思うものよ」とオーストラリアン・オープンを2度制した実績を持つ現在58位のアザレンカはコメントした。「長々と練習していることもできるけど、本当の試合でのプレーに匹敵するものは何もないわ。チャールストンで無観客の非公式大会をプレーしたことがあるだけだから、何を期待すべきなのかよくは分からないわ。調整の機会となるでしょうね」。

 道は間違いなく、セレナに通じているだろう。彼女は大会唯一のトップ10プレーヤーで、状況が何であれ優勝候補とみなされる存在だ。セレナがこれ以前の長い休止からカムバックしたときの結果が何かを示しているとすれば、彼女には楽しみにすべきものがあるはずだ。

 2017年9月に娘オリンピアを出産したあとツアーに復帰したセレナは、ほぼいきなりウインブルドンとUSオープンで決勝に進出した。彼女は今年をニュージーランドでのASBクラシック優勝でスタートしたあとオーストラリアン・オープンは3回戦敗退に終わり、フェドカップでは2試合をプレーして1勝1敗だった。

 彼女はまた、ロックダウンの間も忙しくしていた。セレナはフロリダ州パームビーチガーデンズにある自宅にジムを建設中だ。またレディット創設者のひとりである夫のアレクシス・オハニアンは、彼女ためにテニスコートを建設した。ふたりはまた、ケンタッキー州ルイビルで起きた警官によるブリオナ・テイラーさん射殺事件が抗議運動を引き起こした喧騒の夏の間、社会的正義のため声を大にしていた。

 マーガレット・コート(オーストラリア)が持つグランドスラム優勝回数「24」の最多記録に追いつくことを目指しているセレナの挑戦は、8月31日に開幕するUSオープンで再開する。今のところ彼女は他の皆と同じように、長い休止期間で付いた錆を振り払おうとしているように見える。

「誰もが休憩しなければならないものよ。そして私たちがどんなふうにプレーするか見るのは面白いし、本当に興味深いものになるはずよ」とセレナは競技復帰の場となる大会を見据えた。(APライター◎ゲイリーB・グレイブス/構成◎テニスマガジン)

※写真はオーストラリアン・オープンでのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)(Getty Images)

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