コロナ危機で職がない下位選手たちの窮状、キャリア断念を促す可能性も

 しかし、それだけでは足りないかもしれない。

 世界ランク125位の女子選手であるカタジーナ・カバ(ポーランド)は、2020年に2万2944ドルの賞金を稼いだ。175位の男子選手であるカルロス・タベルネル(スペイン)の獲得賞金は、3万4114ドルだった。

 ATPツアーのツイッターアカウントが“テニスに関して気に入っていることは何か”について回答を求めると、ある選手――ダブルス41位、シングルス247位で24歳のエレン・ペレス(オーストラリア)――は、「お金(賞金)を支払ってもらう瞬間」と答えていた。

 彼女が今年稼いだ賞金は4万2210ドルで、それが今後変わるかは誰にも分からない。

「テニスはとても世界的なスポーツで、選手は世界中のあちこちを旅して回る。だから、ツアーを簡単に再開できるとは思えない」と111位のデニス・クドラ(アメリカ)は不安を口にした。アメリカのバージニア州アーリントンを拠点とする27歳のクドラは、2020年に約4万5000ドルを稼いでいる。「僕は間違っているかもしれない。間違っているよう祈るよ」。

昨年のUSオープンでのデニス・クドラ(アメリカ)(Getty Images)

 大抵のコーチたちはツアーで旅しながら週ごとに日当分が支払われ、プレーヤーの成功をベースにボーナスを受ける形をとっている。

「トリクルダウン理論(“富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる” とする経済理論)がありますよね。代理人たちはそれを感じている。コーチたちも、それを感じていますよ」とトップノッチ・マネージメント社のサム・デュバル氏は語った。同社はクドラのほか、2018年ウインブルドン4強のジョン・イズナー(アメリカ)や元トップ10選手のカロリーヌ・ガルシア(フランス)など多くの選手をサポートしている。

「最大の難関は、これから何が起こるのか分からないということですよ」とデュバル氏は指摘した。「もし『ああ、9月1日には状況はよくなるんだ』と分かっていれば、プランを立てて必要な努力し、必要な援助を受けることもできる訳ですから」。

 他のプロ選手たちとクドラが話している内容は、危機感を膨らませるものだった。

「皆パニックに陥っている」とクドラは窮状を訴えた。「彼らはすでに、来月の家賃をどうやって払おうか心配しているんだ」。

 しかしこの逆境の中にも、ちょっとした光はある。プレーヤーたちが、いつものようにクレジットカード使用料金を蓄積させていないことだ。

「必要なスタッフをフルに揃えて旅していたら、すぐに1万ドルや2万ドルはかかってしまう。自分のためのみならず、コーチやフィジオなど他の重要なスタッフのためにも払っている訳だからね。ホテルでの別室、飛行機代もある」とクドラは説明した。「請求書はかなりの高額になるよ」。

 クドラのコーチで183位のタイソン・クイアトコウスキー(アメリカ)も指導しているカルロス・ベナツキー氏は、プライベートレッスンを受け付けて失った収入の代わりにしたいと考えていた。

 しかし一般のテニスコートもロックダウンの間は閉鎖されているので、それもかなわない。

「コーチの大部分は苦労していますよ。仕事に行くことができず、報酬を削減されたり、ときにはまったく収入を得られなかったりしている他の職業の他の人々同様にね」とベナツキー氏は嘆いた。「我々は皆、これまでにない先行き不透明な状況に直面しているんです」。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※トップ写真はニューポートビーチの大会でのミッチェル・クルーガー(アメリカ)
NEWPORT BEACH, CA - JANUARY 30: ATP tennis player Mitchell Krueger (USA) heads for the net and the ball during a match at the Oracle Challenger Series tennis tournament played on January 30, 2020 at the Newport Beach Tennis Club in Newport Beach, CA. (Photo by John Cordes/Icon Sportswire via Getty Images)

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