10の戦術的ミスとそれを避ける方法_vol.02_トッププレーヤーたちの失敗に学ぶ
トッププレーヤーたちも過去には失敗をおかし、それを乗り越えて成功を収めてきた。彼らの経験に学ばない手はない。3号連続でトッププレーヤーたちのおかした戦術的ミス(全10例)とそれを避ける方法を紹介する。【2015年10月号掲載】
Paul Fein◎インタビュー記事や技術解説記事でおなじみの、テニスを取材して30年以上になるアメリカ在住のジャーナリスト。多くのトップコーチ、プレーヤーを取材し、数々の賞を獲得。執筆作品はAmazon.comやBN.comで何度も1位となっている。テニスをこよなく愛し、コーチとしても上級レベルにある。
写真◎毛受亮介、Getty Imageas イラスト◎サキ大地
戦術的ミス|4|
ロブが〈ワン・ツー・パンチ〉の
最初の一歩であるのを忘れてしまう
ロブの正しい考え方
相手を後方に向かって走らせ、
苦境に立たせられるもの
非常に深いロブを打つたびに、攻撃的な考え方をしよう。
というのも深いロブが、対戦相手のベースラインから90㎝以内に落ちる可能性は大で、相手はパワフルなスマッシュを打つことができないどころか、ロブに届くことさえできないかもしれないのだから。
相手は今、後方に向かって走っており、苦境に置かれている。あなたにしてみれば、それは守備を攻撃に転換できるかもしれないチャンスなのだ。ただし、それは、あなたがそのロブを放った場合にのみ可能となる。
もしも相手の返球が自分にダメージを与えることはないと確信するなら、すぐにネットへダッシュしよう。そして、オーバーヘッドでけりをつけたり、ハイボレーを決めるなどすれば、ポイントを獲得できる可能性は高くなる。守備を攻撃に転じることほど、戦術的に満足のいくことはないのである。
追い風でも向かい風でも
ロブが深く打てるように
練習をすればよい
実際に行うより言うほうが簡単だ!とあなたは思うのかもしれないが、実はそうでもない。最初の鍵は、追い風だろうが向かい風だろうが、ロブを非常に深く打てるように磨きをかければよいのだ(あなたはそのような練習をこれまでも「頻繁にやっている!」と言えるだろうか)。
ロブを相手のバックハンド側に打つと、相手はあまりパワフルでないバックハンドのオーバーヘッドを打つか、あるいはボールをワンバウンドさせる可能性が高くなる。
第二の鍵は、単に状況を予測し、そして認識すること。
第三の鍵は、あなたの身長と足の速さに応じて、ネットから6~8フィート(1.8~2.4m)の理想的な場所に前進することである。
深いロブを
上げたにもかかわらず
攻撃できなかったラルストン
こんなエピソードがある。ふたつの完璧なロブの利用にしくじったことが、クリーブランドでの1964年デビスカップ、チャレンジラウンドの行方を変えたと言っても過言ではない。
ディフェンディング・チャンピオンのアメリカは、オーストラリアに対して2勝1敗とリードし、デニス・ラルストンはフレッド・ストールに対して、第5セットでブレークポイントのチャンスをつかんでいた。優勝まであと一歩と迫っていた。
しかし、続く2ポイントでラルストンは、見事なロブを上げたにもかかわらずネットにつめなかった。彼はその2ポイントを落とし、最終的に5-7 3-6 6-3 11-9 4-6で敗れた。そして結局、オーストラリアは3勝2敗と挽回して、デビスカップを取り戻したのである。
デニス・ラルストンは深いロブを上げてもネットに出なかった
デニス・ラルストン(アメリカ/写真は1969年ウィンブルドンのもの)は、64年のデ杯、対オーストラリア戦で、優勝を目前にした試合で見事なロブを上げたがネットにつめることはなく、そのポイントを落とし、勝利も逃した
あなたも、ある選手たち、プロプレーヤーたちさえが、深いロブをうまく利用できなかった場面を見たことがあるはずだ。彼らがおかした戦術的ミスを、あなたはおかさないようにしてほしい。ロブはボクシングの〈ワン・ツー・パンチ〉(連打)、攻撃の第一歩なのだ。最後にあなたがポイントをつかむための、始まりであるということを忘れないでほしい。
深いロブを上げると、相手は後方に向かって走る。あなたにしてみれば、それは守備を攻撃に転換できるかもしれないチャンスで、ネットにつめるべきだ
深いロブを放ったら攻撃的な考え方をせよ。相手はパワフルなスマッシュを打つことができないどころか、ロブに届くことさえできないのだから。
相手の返球が自分にダメージを与えることはないと確信するなら、すぐにネットへダッシュしよう。
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