ステファン・エドバーグ「北欧の貴公子」
フレンチ・オープンでこそ1989年にマイケル・チャンに敗れた準優勝が最高だが、オーストラリアン・オープン、ウインブルドン、そしてUSオープンとそれぞれ2度、計6度優勝し、ダブルスでもオーストラリアとUSで優勝するなど、単複で世界ナンバーワンになった数少ない選手のひとりでもある。
また、1992年USオープンの決勝の相手は、後にグランドスラムで14度の優勝を果たすピート・サンプラスだったのだが、グランドスラムの決勝で彼を破る選手は2000年のマラト・サフィンまで8年間も現れなかった。
そんなエドバーグに憧れていたという少年時代を過ごしたのがロジャー・フェデラーだ。彼は自分のバックハンドが片手打ちになったのは、エドバーグの影響だと話したこともある。
エドバーグがフェデラーのコーチに就任したというニュースは、ちょっとした驚きをもって世界に伝えられた。1996年のシーズンを最後に引退したあとのエドバーグは、地元のスウェーデンでジュニアを指導したり、時折チャリティのエキシビション・マッチに出場することはあったものの、基本的にはテニス界から離れて静かな暮らしを送っていたからだ。
だが、2013年には一時7位まで落とし、失意のシーズンを送ったフェデラーが、少年時代のアイドルだったというエドバーグを陣営にという要望に彼は応え、そして、その復調のキッカケが彼の存在だったのは間違いない。「彼と過ごす時間がすでに特別なんだ」とフェデラーはメンタルの新鮮さをふたたび取り戻し、その強さを甦らせた。
エドバーグは「特別なことは何もしていない」と言いながら、「僕は彼の小さな部分の狂いを元に戻すことで、彼が本来の姿を取り戻す手伝いをしているんだ」と話しているが、近年のフェデラーのネットプレーの切れ味に、エドバーグの面影を重ねるファンも少なくはないだろう。
「バックハンドなら、僕はまだロジャーより上だよ」とエドバーグは笑顔で話している。
昔も今も、テニス選手の格好良さをそのまま形にしたような存在。それがエドバーグという選手の魅力だった。
スウェーデン代表としてデ杯でも活躍。1984、85、87年の優勝に貢献(右から2人目)
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