ジョコビッチを育て上げた名コーチ、エレナ・ゲンチッチのテニスレッスン「テニスは『足』と『頭』で戦うスポーツ」

しっかりと走り、頭を使って考える。
基本、戦術、パワーを身につける。

Drill4|例④…リアクションプレー

内容 AとBはシングルスのサイドラインに立つ。ゲンチッチはオープンコートへ深く球出し(①)。Aはそれを追い、ストレートへ強打(②)。BはAと同時に走り出すのではなく、Aがテークバックをした瞬間にスタートを切り、Aが強打してきたボールをオープンコートのクロスへ返球する。

ポイント ボールを見て動く練習であり、判断力を養うドリル。走りながらもバランスを保ち、しっかりと強打するように。狙った方向に肩をしっかり入れて打つように。

コーチが変化をつけること

「グループ練習をしていると、その中でレベル差があることも少なくありません。そのときはコーチが球出しのペース、タイミングに変化をつけましょう。一番レベルの高いジュニアと、一番低いジュニアに同じ球出しでは失格です。できないジュニアに『がんばれ、がんばれ』と声を掛けても、できないものはできないのです。強いボール、緩いボール、ペースの変化を使い、グループのみんなをうまくさせるのが、テニスコーチの仕事です」

取材メモ「球出しに妥協なし」

 練習ドリルを見ていて気づいたことがある。ゲンチッチの球出しが容赦ない。特に、1球目の球出しが非常に厳しいところに飛んでいくのだ。最初はなかなかボールに触れられない参加者も多かった。しかし、やがてその事実に気づき始めると、集中力を高め、素早い動き出しで間に合うようになっていった。ゲンチッチは「我が意を得たり」とばかりに満足そうだった。

Drill5|例⑤…回り込みフォアハンド

内容 ゲンチッチはAのフォアに球出しをしたあと(①)、2球目をAのバックに出す(②)。Aはそれをバックで打つのではなく、しっかりと回り込んでフォアハンドで強打。コースは自由(③は逆クロス)。

ポイント 回り込んでのフォアハンドはエースを奪うくらいのボールで勝負。そうでなければ、回り込んだ意味がない。1球目のフォアへの球出しが遠いほど、2球目の距離が長くなる。早く、深く、強く打つことを意識する。

Drill6|例⑥…ハードヒット

内容 非常にシンプルな練習。ゲンチッチがドリル⑤のように、フォア、バック交互に出したボールをとにかくハードヒット。1球目はフォアで、2球目はバックで叩く。叩き込むコースは自由。

ポイント ポイントを決めるフィニッシュの練習。どれだけリラックスしてラケットスピードを上げることができるか。腕、上半身の力に頼らず、体全体を使って打つ。

体重移動ができているか?

「アウトする人が多いですね。もう少しスピンをかけましょう。ボールが低いときには、もっと膝を曲げて打つべき。後ろから前への体重移動を感じてください。体重が後ろに残ったまま、あるいは外へ逃げてしまう方が非常に多いです」

テニスコーチの役割「今回、皆さんにご紹介したのは、私の持つドリルの一部です。もちろんジョコビッチも、そしてセレスやイバニセビッチらも、こうしたドリルを続けて上達していきました。しかし大切なのは、このドリルを行なうことではありません。ジュニア=選手たちが集中力、高い意識を持って取り組んでこそ意味があります。そして、それをサポートするのが、テニスコーチの仕事ということを忘れないでください」

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