「まだ見ぬ17歳の地図」錦織圭インタビュー2006年末
日本テニスをよく知るファンなら、その名前を知っているかもしれない。錦織圭。日本男子テニスの“秘密兵器”とも評される逸材だ。現在フロリダに拠点を置く彼のプレーを、日本で見る機会は残念ながら少ない。しかし、数年後——必ずや皆さんの目に留まる舞台で活躍しているだろう。【テニスマガジン2007年3月号掲載】
インタビュー・構成◎田辺由紀子 写真◎毛受亮介、菅原 淳
今から5年前。2001年の7月、全国小学生大会で圧倒的な勝ち方で優勝した小さな少年がいた。翌月も少年は全日本ジュニア12歳以下で優勝。そのプレーぶりは、ほかの同年代の選手をまったく寄せ付けず、決勝でさえ、コートへと駆けつけるのが遅くなれば、試合を見逃してしまうほどの差を見せつけていた。
その少年の名前は錦織圭。1989年生まれの17歳、今や日本の男子テニスを変えるのではないかと期待を寄せられる存在に成長した。
生まれた島根県の松江市は山陰の城下町として知られるが、テニスという競技を考えれば、その才能を伸ばすための特別な背景は存在しなかった。テニスとの接点といえば、父親の清志さんが東京の大学でテニスをしていたこともあり、地元に帰ってからもテニスを続けていたということだったろう。
5歳のとき、父親がラケットを買ってきたことをきっかけに、テニスを始めた。今でも日本で大会に出場するときの所属先となっている松江のグリーンテニススクールの柏井コーチの指導も、彼の長所をのびのびと伸ばすことにつながった。
小学生とは思えない、重く強力なフォアハンド。全国大会で彼のプレーを見た松岡修造氏も、その才能を即座に見抜いていた。それは腕力などで打つものではなく、天賦の才としか言いようのないもの。
松岡氏は、自身が主宰する『修造チャレンジ・トップジュニアキャンプ』に彼を参加選手のひとりとして選んだ。『修造チャレンジ〜』は松岡氏が日本男子の育成を目指し、自身が中心となって選手を指導。錦織が参加する前年、2000年からは松岡氏の師であり、世界的な名コーチのボブ・ブレットが招聘されている。年上の選手たちに混じっても、体の小さな彼のテニスセンス、勝負師としての存在感は光っていた。
2003年には日本テニス協会会長である盛田正明氏が私財を投じる『MMTF(盛田正明テニスファンド)』により、アメリカのIMG/ボロテリー・テニス・アカデミーに留学。まだ中学2年生、13歳のことだ。日本から彼と同時に、また彼の前にも後にもジュニアたちが同地へ留学を果たし、そして帰国。そんな中で、錦織は3年以上もの間、アメリカでテニス漬けの日々を送っている。
その間にも、14歳以下の国別対抗戦で日本のナンバーワンとしてチームを準優勝に導き、2005年には16歳以下の国別対抗戦ジュニア・デ杯で世界5位となるなど、常に代表戦にはなくてはならない存在として活躍してきた。もちろん個人戦でも、2003年の『ジュニア・オレンジボウル(14歳以下)』準優勝など、ときどきアメリカから流れてくるニュースでその活躍を知らせてくれていた。
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