広瀬一郎_書籍『スポーツマンシップを考える』_連載第14回_第3章スポーツマンシップを語る(2) 川淵三郎「スポーツマンシップとGood Loser」

よりよく生きるチャンスを与える

川淵 話は逸れたけど、そういう人間の一番大事な部分というのが、スポーツを通じて、強制される形でなくて自然に覚えられ、培われる。そこにこそスポーツの持つ良さがある。

 残念ながら、日本には地域社会にそういう場がないので、そういう良さを知らない。しかしそれを知った人生のほうが、よっぽど得じゃないか。スポーツを見る楽しみ、やる楽しみ、仲間と一緒に遊ぶ楽しみ。うまい、へたを超えた楽しみ方があり、しかも年代を超えて一緒にフットサルを楽しむとか、縦横の関係、地域社会の中で、そういうコミュニケーションを取れたらどれだけ幸せかわからない。今、コミュニティーの中でコミュニケーションをとるのは大変難しい状況だからね。

 それが地域社会のスポーツクラブならば実現できる。だからこそ、地域にそういうものが必要なんだ。欧米ではどこにでも存在している。そういった環境を日本全国につくつていこうというのが、百年構想。

広瀬 それを見せてあげて、いいと思ったらどんどんやればいいということですよね。強制するものじゃないんですね。

Jリーグが成功するために必要なもの

広瀬 さて、今年「Jリーグ・アカデミー」というものを立ち上げるわけですが、そこでは技術だけでなくて、スポーツマンシップを教えると思います。そういうものをJリーグを拠点として地域の中にどうやって根ざしていくのでしょうか。

川淵 Jリーグが目指すものは、地域社会の中で老若男女、運動能力のあるなしにかかわらず誰でもスポーツを楽しめて、しかも指導者がいるという場所づくり。そのためには財源がいるわけです。その財源を獲得するために、Jリーグが成功し発展していく必要がある。Jリーグが十分な利益をあげれば、そういう場を自力で作れるんじゃないか。確かに政府・地域社会の補助は必要だけど、それが不十分でも自力で何とかやれることから始めようとスタートしたわけです。

 そのJリーグが成功するためには、魅力あるクラブ、選手がいないかぎりはお客さんも入らない、スポンサーもつかない、放映権料も入らない。自活できないと単なるきれいごとになってしまい、百年構想が実現出来ないんです。

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