古今東西テニス史探訪(11)「硬式」と「軟式」、ふたすじの道
硬軟二重構造で表裏一体の歩み
日本庭球協会の機関誌的役割も担っていた《ローンテニス》は、主幹・針重敬喜の幅広いネットワークによって自由に編集・経営・発行されていました。1927(昭和2)年1月号では「各方面から見たるテニスの進路と改善す可き事」という特集(アンケートに対する回答)を組んでいます。
質問は「一、硬球、準硬球、軟式庭球は今後何う云ふ風に進み行く可きものでせうか」と「二、テニス界に於て御遺憾と感ぜられた事、並に改良せねばならぬ事」で、回答は発行期限前に到着した58名分を掲載しています。
どの意見も当時のテニス界を反映していて興味深いのですが、代表的な意見として広瀬謙三(時事新報記者)の回答を引用します。
〔一〕硬球は益々世界的に彼の長を採り、我が技術と精神の長所を加へて世界的の舞台に雄飛すべく、準硬球は最う一段全国的に中学校に普及して組織ある全国的大会に迄進みたいと思ひます、軟式庭球は準硬球と同様組織ある全国的大会を而して之は一層一般的に普及させること。
〔二〕現在軟式庭球界が改良と保守の両派あって過度時代の紛糾を重ねて居ること、之は新規則に統一して御殿女中式の紛糾を一掃したいと思ひます、勿論之も人心の傾向の止を得ないところで時日を假せば落付く處に落付くと思ひます。フエヤープレーの精神を一層向上させること。
その他の回答のなかには、国産ボールの製造・普及や、全国大会を開催できる観客席付テニス場の設置、ジュニアや女子のテニス育成などの要望も多くありました。
多くの回答者が心配している軟球界の二分についてはさらに紆余曲折が続き、1928(昭和3)年に神宮ルールを公認とする日本軟球連盟が創立されます。そして5年後、1933(昭和8)年4月2日に旧ルールと神宮ルールの折衷ルールを公認とする日本軟式庭球連盟に統一されました。
さらに1935(昭和10)年から1942(昭和17)年頃のルールでは「第二十三条 サーヴィスはその組の何れがなすも随意なれども、一ゲーム中に於て交代することを得ず」ということで、事実上は交互サービスも、シングルスも消えていくことになります。軟球という軽いゴムボールでのゲーム展開では前衛後衛陣が主流になるため、当時としてはやむをえない選択でした。
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