佐藤雅弘_動き出しを最大化する基礎トレ_“準備”で時間的な余裕をつくる

今回は、私が考える“球際の強さ=準備による時間的余裕の確保”に則した基礎的トレーニングを紹介します。この練習はテニスだけでなく、あらゆる運動動作に応用でき、ケガ予防にもつながります/佐藤雅弘「動き出しを最大化する基礎トレ」【テニスマガジン2018年10月号掲載記事】

厳しい状況の中で打ち返す、
“球際の強さ”はそれだけか?

“球際の強さ”と聞いて思い浮かぶイメージは、両サイドに振り回され、厳しい状況の中でスーパーショットを打つ。その印象を持つ人が多いかと思います。しかし、私が思う“球際の強さ”はそれだけではありません。

 選手たちはポイント獲得率を上げるため、動作の正確性やショットの精度を常に求めます。できるだけ厳しい状況を迎えるのは避け、時間的な余裕を確保しながらプレーをし続けます。

 この強さを得るにはどうすべきか。ボールを打つときに時間的な余裕を生み出す最初の動き出し=スタートを速くすることが肝心です。

 速く動き出すことにより、しっかりとしたボディバランスの状態で適したポジショニングが可能となり、時間の確保ができ、ショットの選択肢が増します。

 ジュニアや愛好家のプレーを見ると、多くの選手がボールに合わせて動いています。しかし、本当はサッと動き出し、そこからボールに合わせてポジショニングを微調整していくことが必要だと考えます。サッと動き出すには“準備”が必要となります。

 よい準備によってスタートが速く切れ、打球後はすぐさま身体をリセットし、次のショットに対しての準備を行う――テニスはこの繰り返しなのです。 

 ジュニアからシニアまで誰でも取り組めるので、日頃から継続して行うようにしてください。毎日行うことでその日の調子もチェックでき、感覚的にフィードバックできるようになります。

準備の基礎トレ①
タップ

テニスマガジン2018年10月号|準備の基礎トレ①タップ

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動き出す際の“推進力”が生まれる

 レディポジションから最大出力で動き出すポイントのひとつとして「タップ」があります。両足で音を立てて地面を踏むこの動作は、足裏の全体で踏み込むことが大切となります。大きく上方向にジャンプするのではなく、肩幅より少し広めにスタンスをとり、両足の膝の力を抜くイメージで「バン!」と音を立てるように力強く踏み込んでください。この踏み込みが次の動き出しへの推進力となります。

準備の基礎トレ②
タップ(足を左右に出す)

テニスマガジン2018年10月号|準備の基礎トレ②タップ(足を左右に出す)

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一歩目の速さを鍛える

 次に右方向へと足を一歩出し、そこから再びもとのスタンスに戻すタップを行います。踏み出した足をもとのスタンスに戻す際は、基礎トレ①と同様に足裏全体で「バン!」と地面を踏み込むように行ってください。左右の方向に同じ動作ができるかチェックし、出し方にばらつきがあるときは、足がうまく出せない方向を調整して出せるようにしてください。そうすることで、レディポジションから動き出す方向への推進力となります。

準備の基礎トレ③
タップ(コンビネーション)

テニスマガジン2018年10月号|準備の基礎トレ③タップ(コンビネーション)

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反応能力も同時に高める

 準備の動作と反応能力を同時に見極める方法として、ふたり一組で行う応用練習があります。例えば、「1」という指示が出たときは「右→戻す→左→戻す→タップ」。「2」のサインは逆で「左→戻す→右→戻す→タップ」となります。このトレーニングは力強く踏み込むのはもちろん、リズミカルに行うのが大切です。踏み込む際は「バンッ!」と大きい音を出しますが、頭の中では「トン、トン、トン、トン、パッ」のように、テンポも意識して行ってください。

 この練習は応用が利くものです。指示の種類としては「聴覚」から反応を見るもの、「視覚」から反応を見るもの、それらを「ミックス」したものと3種類があります。日頃から行うことで、反応能力をより高いレベルまでもっていくことができます。

応用編
タップ応用+ミックス(視覚と聴覚)

テニスマガジン2018年10月号|準備の基礎トレ③タップ応用①②③

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声で「1」「2」のサインを出し、その指示にしたがって右足から出すか、左足から出すかを判断。耳から脳、そこから動作に移すまでの反応を鍛える。指で「1」「2」のサインを出し、その指示にしたがって右足から足を出すか、左足から出すかを判断。目から脳、そこから動作に移すまでの反応を鍛える。声と指による指示の反応がスムーズにできるようになったら、次は両方を組み合わせた指示でトレーニングを行うと、さらに難易度は上がる

準備の基礎トレ4 アレーラン

準備の基礎トレ④
アレーラン

一歩目の推進力とバランス感覚を鍛える

 テニスコートのアレーを使い、左右の切り返し動作を鍛えるトレーニングです。まず片足の状態でスクワットの動作ができるかをチェックします。この体勢が正しく行えないと、いい効果を得ることはできません。つま先と膝の方向を正面に向け、姿勢をまっすぐに保つようにしてください。

 バランスをとる際は、足裏でしっかりと体重を支えるように意識し、しっかりと静止した状態から逆方向のラインに飛びます。その際に、上方向にジャンプするのではなく、横に移動するようにして意識してください。ジャンプした後は逆足で着地(ここでも足裏で「バンッ」と音を出すように力強く着地する)し、再び片足の状態で静止してバランスをとりましょう。

 この動作を正確にできることで、コート上で効率よく動くための体の身のこなし、バランス感覚、瞬発力、推進力といった機能を鍛えます。

準備の基礎トレ⑤
アレーラン(キックバック)

切り返しの効果にGOOD!

 キックバックは、通常のアレーランと同じように片足のスクワットから横のラインにジャンプし(①)、着地したらすぐさま元のラインに戻るようにします(②)。写真のように横のラインにジャンプしたとき、そして戻るときも「バンッ! バンッ!」とテンポよく跳ぶようにしてください。

 アレーランと同様にライン上でやる意図としては、つま先と膝の方向を一定にすることで、プレー中のスタンスを安定させる意味があります。

佐藤雅弘|プロフィール

さとう・まさひろ◎JAMプランニング代表。JAMコンディショニング・ディレクターであり、日本オリンピック委員会強化スタッフ、修造チャレンジ・コンディショニング部門責任者。たちかわJTAコンディショニングアドバイザー、ミズノアドバイザリースタッフ、シダックスカルチャーワークスのアドバイザーも務める。プロ(奈良くるみ、土居美咲、波形純理、内山靖崇、守屋宏紀など)をはじめ、高校、大学、ジュニア選手のコンディショニング・トレーニング指導を手掛ける。傷害予防と身体強化を理念とした『Improve SK メソッド』を実施

※デモンストレーション◎馬場大和(JAMプランニング)
※写真◎井出秀人
※取材協力◎立川ルーデンステニスクラブ

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