ロラン・ギャロスで女子のグランドスラム初優勝者がこれほど多い理由とは?

写真はフレンチ・オープン女子シングルス表彰式でのバーボラ・クレイチコバ(チェコ)(Getty Images)


 今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月30日~6月13日/クレーコート)は全日程が終了し、シングルスはノバク・ジョコビッチ(セルビア)とバーボラ・クレイチコバ(チェコ)の優勝で幕を閉じた。

 それは2016年、決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を倒したガルビネ・ムグルッサ(スペイン)から始まった。

 エレナ・オスタペンコ(ラトビア)の勝利は2017年に起き、その翌年にはオスタペンコが優勝した決勝で破った相手であるシモナ・ハレプ(ルーマニア)が悲願を達成する。次はアシュリー・バーティ(オーストラリア)の番で、2020年にはイガ・シフィオンテク(ポーランド)が彗星のように現れて女王の座に就いた。

 そして今年、クレイチコバがそこに加わった。土曜日の決勝で25歳のクレイチコバが勝ち、ロラン・ギャロスの女子シングルスで6年連続グランドスラム初優勝者が誕生したのだ。

「何故それが起きるか? 何故これほど多くのプレーヤーがここで初のグランドスラム大会チャンピオンになるか? 分からない」とクレイチコバは女子シングルス決勝で第31シードのアナスタシア・パブリウチェンコワ(ロシア)を6-1 2-6 6-4で倒したあとにコメントした。

「でも私は、自分がそのうちのひとりになることができてうれしいわ」

 さらに彼女は日曜日にカテリーナ・シニアコバ(チェコ)と組んで第2シードだった女子ダブルスの決勝で第14シードのベサニー・マテック サンズ(アメリカ)/シフィオンテクを6-4 6-2で下し、同大会で2000年のメアリー・ピアス(フランス)以来となる単複2冠を達成した。

 フレンチ・オープン女子シングルスでの出来事と、他のグランドスラム大会においてここ6年でどれだけ初優勝者が出たかを比べてみよう。USオープンが4人、オーストラリアン・オープンは3人、6月28日に今年の大会が開幕するウインブルドンではゼロとなっている。

 クレイチコバが関わっている最近の傾向はもうひとつある。1968年から始まったオープン化以降の時代で、2016年まではノーシードの女子選手がフレンチ・オープンのシングルスに優勝したことはなかったのである。しかしながら2017年以来、過去5年の優勝者のうち3人がノーシードだった。オスタペンコは優勝した際に47位に過ぎず、シフィオンテクが54位でクレイチコバは33位だった。

 何故か? もっともらしい説明はいくつかある。例えば新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのために大会の間が8ヵ月しかないなど、ここ2年は誰にとっても状況がやや通常とは違ったものになっていたなどもそのひとつだ。それはまた、クレイチコバをはじめ準々決勝にした8人のうち6人がそれまで一度もグランドスラム大会でベスト8進出していなかったことを説明する助けになるかもしれない。オープン化以降の時代でそのようなことが起きたのは初めてであり、準決勝に進出した選手4人全員がその舞台を未経験だったのは2度目のことだった。

「これはクレイジーでランダムなフレンチ・オープンだったわね」と1970年代から80年代にかけて四大大会で獲得した18タイトルのうちの7つをロラン・ギャロスで勝ち獲ったレジェンドのクリス・エバート(アメリカ)は電話インタビューで語った。

 現在レッドクレーでは、現役時代のエバートや男子のラファエル・ナダル(スペイン)のような支配的な選手は存在しない。それ以上に現在の女子テニス界には、全盛期のセレナのようなすべてのサーフェスに強いスーパースターはいないのだ。

 しかし主な理由は、もしかするとレッドクレー自体なのかもしれない。それは選手と選手の差をより均等にし、より速いサーフェスで非常によく機能するパワーの効果を弱める傾向がある。

「クレーコートでは、グラスコートやハードコートでのように力で圧倒されることはないわ。だから安定性や守備的テニス、ボールに追いつく能力などを擁する別のスタイルが有効になるの。選手たちはボールに対して準備するための時間、しっかりとターゲットを狙ったりボールに追いかけたりラリーを続けるための時間をより多く持つことができるからよ」とエバートは説明した。

「セレナはここ15~20年、クレーコートでも相手をパワーで打ち負かすことのできる唯一のプレーヤーだった。全盛期の彼女は守備的にも攻撃的にも秀でていたから、素晴らしいクレーコートプレーヤーだったわ」

 だからこそエバートはテニスがウインブルドンに移行する中、タイトルを獲る可能性がある選手の数はより限定されるだろうと予想している。

 セレナやムグルッサ、2度の優勝歴を持つペトラ・クビトバ(チェコ)のような過去のチャンピオンたちがそこのコートの滑らかさを有効に活用できるかもしれない。

「グラスコートではサーブ力が大きなプラスとなるけど、反対にクレーコートではサービスのパワーはやや弱まってしまうわ。バーボラはサーブ力でフレンチ・オープンに勝った訳じゃないでしょう? でも他の選手はそのサーブ力でウインブルドンに勝つこともできるのよ」とエバートは話した。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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