ベレッティーニがイタリア男子テニスの歴史を刻む「仕事はまだ終わっていない」 [ウインブルドン]

写真はマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)の大会11日目は、男子シングルス準決勝などが行われた。

  センターコートに「Vai!(行け!)」「Forza!(頑張れ!)」という声が飛び交い、第7シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)が母国語の声援を受けながら第14シードのホベルト・フルカチュ(ポーランド)を6-3 6-0 6-7(3) 6-4で倒して45年ぶりにグランドスラム大会で決勝に進出したイタリア人男子プレーヤーとなった。

 22本のエースを決めた強烈なサービスと合計60本のウィナーを産み出したパワフルなフォアハンドを駆使し、11ゲームを連取して大きなリードを奪ったベレッティーニは相手の抵抗にも耐えて勝利を掴んだ。

「言葉が出ない。ただ『ありがとう』と言いたい。何が起きたかを理解するには数時間かかると思う」とベレッティーニはスタジアムを埋め尽くした観客たちに語った。

「自分が素晴らしいプレーをしたことは分かっている。僕は一度もこんなことを夢見たことはなかった。何故なら夢としてさえ、これは大きすぎたからだ」

 大会最終日の決勝で、ベレッティーニは第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。世界ランク1位のジョコビッチは第1セットのワンブレークダウンから挽回し、最終的に第10シードのデニス・シャポバロフ(カナダ)を7-6(3) 7-5 7-5で退けた。

 日曜日にベレッティーニはロンドンで、イタリアにとってかなり凄いものとなりそうな『スポーツの夕べ』を生み出すことになる。彼が午後にウインブルドン決勝をプレーしたあと、ウェンブリー・スタジアムで行われるサッカーのUEFA欧州選手権(EURO)決勝でイタリア代表がイングランド代表と対決するのだ。

「テニスに関して言えば、今日は人生で最高の日だった。日曜日はさらにいい日になるよう願っているよ」と2019年USオープンでこれ以前に唯一経験したグランドスラム大会準決勝に敗れていた25歳のベレッティーニはコメントした。

 金曜日の試合は、早い段階でフルカチュに不利な展開となった。フルカチュはこれまで一度もグランドスラム大会で3回戦を超えたことがなかったが、第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)やウインブルドンを8度制した第6シードのロジャー・フェデラー(スイス)らを破って勝ち上がっていた。

 第2セットを6-0で取ってセットカウント2-0とリードしたベレッティーニは母親と今大会ベスト8だったガールフレンドのアイラ・トムヤノビッチ(オーストラリア)が観客席から見守る中、第3セットで4度に渡って勝利まであと2ポイントと迫った。5-4から2本凌がれたあと6-5でも2度あったが、いずれもフルカチュがサービスゲームをキープした。そして困難を切り抜けたフルカチュは勝負をタイブレークに持ち込むと、最終的にそのセットを奪取した。

「僕は自分があのセットを取るに値したと感じていた。結果的に落としたが、僕は『大した問題じゃない。僕はより強い選手だったのだから』と自分に言い聞かせたんだ。最終的には報われたよ」とベレッティーニは振り返った。

 その時点ではフルカチュが少し体勢を立て直していたが、ベレッティーニは第4セットの出だしでブレークに成功してすぐに正しい軌道に戻った。フルカチュは3-5からのマッチポイントを凌いだが、ベレッティーニと彼のサポーターは2度目のチャンスがくるまで5分しか待つ必要がなかった。ベレッティーニはそれをきっちり決め、今度こそ勝利を確定させた。

「マッテオは素晴らしい試合をプレーをした。基本的に、僕にはあまりチャンスがなかった。恐らく“ゼロ”だったよ」とフルカチュは脱帽した。

 ベレッティーニが日曜日に自身初のグランドスラム大会決勝に臨むのに対してジョコビッチは30回目であり、当然ながらジョコビッチが有利と見なされてはいる。しかし先月のクイーンズクラブの大会で優勝して今大会を迎えたベレッティーニは、グラスコートでマッチ11連勝中と好調を維持している。

 クイーンズクラブの大会でのベレッティーニは、同大会に初出場でタイトルを獲得した1985年のボリス・ベッカー(ドイツ)以来の選手となった。ベッカーはその同じ年、続けてウインブルドンも制している。

「言うまでもなく、仕事はまだ終わっていない。ここまで至った今、僕はトロフィーが欲しいんだ」と25歳のベレッティーニは決勝を見据えた。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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