ペン・シューアイを巡る中国でのWTA大会開催停止は2022年以降も続く可能性あり

写真は2019年チャイナ・オープンでのペン・シューアイ(中国)(Getty Images)


 女子テニス協会(WTA)は中国の元政府高官から性的暴力を受けたと告発したペン・シューアイ(中国)の安全に関する懸念を理由に中国でのWTA大会の開催を停止するという決断を下したが、2022年以降も続く可能性があるとWTAの会長兼CEO(最高責任者)であるスティーブ・サイモン氏が水曜日にAP通信に語った。

「我々は正しい場所にたどり着くことを願っていますが、もし現在の状態が続くようであればあの地域で大会を行わないつもりです」とサイモン氏はアメリカ・カリフォルニア州からのビデオ電話を通して話した。

「これは何が正しくて何が間違っているかに関わる問題に本気で取り組むための組織的な努力なのです」

 香港を含む中国での大会開催を一時停止するという動きは、WTA理事会と選手および大会やスポンサーなどの全面的な支援を得ているとサイモン氏は明かした。これはあるスポーツ団体が中国に対して取った中でもっとも強い反対の姿勢であり、WTAに何百万ドルもの収益減の打撃を与える可能性もある。

 元ダブルス世界ランク1位で35歳のペンは11月2日にSNSを更新して元副首相のジャン・ガオリー(張高麗)氏を性的暴行で告発したが、そのあと公の場から姿を消していた。

 それから1ヵ月ほど経過したが、サイモン氏はウインブルドンとフレンチ・オープンの元女子ダブルス優勝者であるペンの告発について透明な調査を行うこととWTAがペンと直接連絡を取ることができるよう繰り返し呼びかけてきた。

「この一件に関する我々のアプローチと中国当局へのリクエストは一貫しており、それは今後も変わりません。我々はペンと直接話し合いたいと望んでいます。そして彼女が本当に安全で自由であり、検閲や監視および脅迫のようなことをされていないかを確かめて安心したいのです。これまでのところ、我々が見ているものが政府によって画策されたものではないという安心を得るための会話をすることができていません。第2の要素は、彼女の告発に対してどのような検閲もない正しい調査がなされるのを目にすることです」

 通常であれば中国では年間女子ツアー10大会を開催しており、その中には2019年から10年間に渡って行われる予定だった権威あるシーズン末のエリート大会「WTAファイナルズ」も含まれている。中国はWTAだけでなく、NBA(男子プロバスケットボールリーグ)やIOC(国際オリンピック委員会)を含む様々な国際的スポーツ団体にとって数十億ドル規模の収入源となっている。

 中国での大会開催停止の発表はツアーが出した声明文を通して行われたが、中国政府がリクエストに応えれば変更もあり得るとサイモン氏は言い添えた。もし要請を無視され続けた場合は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによりアジア地域でキャンセルされた今季と同じように大会を別の地域に移して行うことになる。例えば今年のWTAファイナルズは、メキシコ・グアダラハラに開催地を変更して先月に行われた。

「我々は現時点ではまだ公式にキャンセルしていませんが、そうするための準備はしています。それはある時点で議題となるでしょう。いつキャンセルが決まるか? 2022年だけなのか? 将来的にもそうなのか? これらはすべて、今後の課題となるものです」

 北京は2022年2月4日から始まる北京冬季オリンピックの開催地となる予定で、IOCのトーマス・バッハ会長は11月21日にペンとビデオ電話で30日間話して彼女は「元気そうだった」と伝えていた。

 水曜日にふたたびペンとビデオ電話で話したことを明かしたIOCは彼女の安全が再確認されたとアピールし、「我々は人権保護と人を中心としたアプローチを通し、彼女の個人的状況を考えて彼女をサポートし続けます」と説明した。

 しかしIOCは今回もやり取りのビデオや会話の内容を詳細に記録したものを公表せず、ビデオ電話がどのように手配されたかについても明らかにしなかった。

 IOCは木曜日も「状況を考慮して政府や他の組織の経験に基づけば、このような人道問題を効果的に進めるためにはもっとも有効な方法」と主張し、「静かな外交」の方針を繰り返した。

 欧州連合は火曜日、ペンが安全であるという「検証可能な証拠」を中国が提供することを望んでいると述べた。近年では与党の人物を批判したあと、または汚職や民主主義と労働の権利キャンペーン取り締まりの一環で消息を絶つ中国人(ビジネスマン、活動家、一般人たち)が増えている。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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