大会5日目のベストマッチ、ベレッティーニとの激闘で見せたアルカラスのポテンシャル「僕はトップに近づきつつある」 [オーストラリアン・オープン]

写真は3回戦で激闘を繰り広げたマッテオ・ベレッティーニ(イタリア/右)とカルロス・アルカラス(スペイン)(Getty Images)


 今年最初のグランドスラム大会「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦1月27~30日/ハードコート)の大会5日目は、トップハーフ(ドローの上半分)の男女シングルス3回戦などが行われた。

 この日のベストマッチをひとつ挙げるとすれば、それは恐らく第7シードのマッテオ・ベレッティーニ(イタリア)と第31シードのカルロス・アルカラス(スペイン)の男子シングルス3回戦だろう。

 新勢力の一角ながら既にトップ10として実績を残しているベレッティーニとラファエル・ナダル(スペイン)の後継者と呼ばれる18歳のアルカラスの対決は、2セットダウンから巻き返したアルカラスの奮闘で4時間10分の死闘となった末に6-2 7-6(3) 4-6 2-6 7-6(10-5)でベレッティーニの勝利に終わった。

 そしてそれは単に競った好試合というだけでなく、アルカラスが『ナダルの後継者』と呼ばれる所以を示して見せた試合だったのだ。それが顕著になったのは、最終セット5-6からのアルカラスのサービスゲーム30-30の場面だった。

 アルカラスはそこでサービスのあとにドロップショットを放つ度胸を見せ、追いついたベレッティーニを今度はロブで押し下げた。ベレッティーニの返球が中途半端に宙に浮く中、アルカラスはそれをドライブボレーで叩く道を選択したが、ショットはわずかにラインを割ってベレッティーニが最初のマッチポイントを手にした。

 リスクを犯し過ぎたアルカラスの“若気の至り”と思った人もいたかもしれない。しかしその直ぐあと、アルカラスは未来の王者としての証を見せる。やはり賭けに出たベレッティーニがアルカラスのセカンドサーブを強打してネットにかけて40-40となったあと、アルカラスはミスを恐れて守りに入るような真似はしなかった。彼はフォアハンドを叩き込んで前に出るとバックハンドボレーを決めてベレッティーニに圧力をかけ、続くゲームポイントではライン上を狙う強打を左右に打ち込んで相手にミスを強いた。

 最後のタイブレーク終盤では比較的簡単なミスを犯してまだ発展途上であるところも見せたものの、それでもプレッシャーのかかるポイントで強く出るその度胸は強い印象を残した。

 激闘の末に敗れはしたが、「自分のプレーぶりを誇りに思う」と試合後にアルカラスは語った。

「2セットダウンという窮地に直面したのは、これがキャリアで初めてだった。僕はコートですべてを出し尽くした。それは僕が常にやるべきことなんだ」

 勝利まであと一歩届かなかっただけに、そこにはもちろん痛みもあった。

「敗北によって少し気持ちを損なわれたけど、僕は自分が勇敢に思いきりよく戦い、全力を尽くしたと感じている。僕はいい感覚と未来に役に立つ経験を手にここを去る。でももちろん、敗戦は辛いよ。例え最後にはポジティブな面を見なければならないとしてもね」とアルカラスは痛みと自信が混ざりあう複雑な気持ちを表現した。

「僕はトップに近づきつつある。僕にはそのレベルがあり、いいプレーができているから大きなことを成し遂げるために戦う準備ができていると感じている。今日の僕たちはふたりとも、勝利に値した」

 一方で最後の最後に経験の差を見せてアルカラスと同じくよく戦ったベレッティーニは、「彼は本当に驚くべき選手だ。僕が彼の年齢のときにはATPポイントさえ持っていなかったからね。彼は今日のような試合をすることで、とにかく上達していくのみだ。彼は今日、その潜在能力を皆に示して見せた。僕は今日、勝つことができて幸運だった」と惜しみなく相手を称えた。

 また今回のアルカラスについて皆が話題にしていたことに、彼の肉体的進化がある。1回戦のあとにノースリーブのシャツを着ていることで一層目立った筋肉の発達について尋ねられたアルカラスは、「僕は劇的な、そして非常にいい肉体的変化を遂げた」と話していた。

 今回は現地に帯同していないがここ数年彼と一緒に働いてきたフィジカルトレーナーのアルベルト・リェド氏はスペインの日刊スポーツ新聞『マルカ』の取材に応え、「彼の体格のよさは遺伝的なものでもあるが、80%はトレーニングによって作られたものだ」と説明した。

「そしてメンタル的な成長が試合に反映されている。彼はそのテニスだけでなく、生活のあらゆる面で大きな変貌を遂げた」

 それには綿密な食事の管理も含まれる。リェド氏によれば「釣りに行き、試合前には寿司を食べる」というアルカラスはもともと体脂肪率が非常に低かったが、サプリメントなどで補いながら理想の身体づくりに励んできた。今や「彼は体重75kgだが、約60kgは筋肉だ」とリェド氏は明かした。

 ジムワークだけでなく反応スピードやスタミナ向上のために陸上のトレーニングも取り入れ、筋肉とパワーをつけながらもスピードを失わないよう計算されたメニューでプレシーズンのトレーニングを行った。彼の身体は今、昨年の初頭と比べて目に見えてより筋肉が目立つようになっている。しかしリェド氏は、それはまた彼が成長中の年齢であるためだろうと言い添えた。

「子供が成長するとき、筋肉が発達するだけでなく骨も太くなる。21歳くらいまでこのプロセスは続くだろうね」

 あらゆる意味で急成長中のアルカラスが今季に掲げる目標は、「上達し続けること。トップ15でシーズンを終えること。そしてできればトリノでのATPファイナルズでプレーすること」だという。

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写真◎Getty Images

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