ナブラチロワが『Where is Peng Shuai?』Tシャツ禁止についてオーストラリアン・オープンを糾弾
オーストラリアン・オープン主催者が『Where is Peng Shuai?(ペン・シューアイはどこに?)』と書かれたTシャツを着ることを観客に禁じた事実について、グランドスラム大会で18度優勝したテニス界のレジェンドであるマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)が「救いようがない」と声を大にして非難した。
先週末にこのTシャツを身に着けて横断幕を手にした観客が大会の警備員にTシャツを脱ぐよう命じられ、横断幕を没収されるという一件が起きていた。
ペン・シューアイ(中国)は中国の元政府高官に性的関係を強いられたとSNSを通して告白したあと、事実上公の場から姿を隠していた。
大会主催者であるテニス・オーストラリア(豪州テニス協会)はTシャツの着用を禁じた理由について「商業的、あるいは政治的なメッセージの書かれた服、横断幕、看板などを禁じる」という大会の規則のためであると説明した上で、「ペンの安全は我々が気にかけている最たることであり、ペンの安全に関してより明瞭な情報を求めるためにWTA(女子テニス協会)と協力し続ける」と述べた。
しかしナブラチロワは「悲壮(な言い訳)だわ。この問題に関してWTAはほぼ単独で戦っているじゃない」と怒りを隠さず、「スポーツは社会問題に対して問題を大いに提起して常に最前線を進んでいたのに、いま私たちは後退しようとしているように感じる。本当に意気地のないことだわ」と意見した。
シーズン最初のグランドスラム大会のメインスポンサーのひとつに『國窖1573』という中国の高級白酒ブランドがあるため、中国政府によるペンの扱いに抗議する活動を抑制しようとする動きはスポンサーに気を使ってのことだろうというのが多くの人々が推測している。
「これ(ペンに関わること)は政治的声明ではなく、人権問題に関わることよ。彼女はここでプレーできていたかもしれないのに、国外に出ることができないというの? 彼らはこの件に関して間違っていると私は思う」とナブラチロワはSNSに投稿した。
「WTAはこの問題に対し、強い立場を取り続けてきた。ATP(男子プロテニス協会)の姿勢は薄弱だわ。IOC(国際オリンピック委員会)に関しては、私たち皆が知る通りよ。そして自分たちのグランドスラム大会で中国に指示することを許すとは、この問題に関するオーストラリア人の降伏を意味するわ」
前述した中国の元政府高官に対するペンの告発がSNSから削除され、彼女に連絡がつかなくなったのは昨年11月のことだった。ペンの安否が懸念されていた最中に彼女はIOC会長とビデオ通話をして無事であることをアピールしたが、これは騒ぎを鎮める目的で政府によって仕組まれた『やらせ』であると見る向きも多かった。
そのあとにペンは中国国内でシンガポールのメディアに対して別のインタビューを受け、その中で「私は誰かが私に性的暴行を振るったなどとは書いていない」と強調した。プライベートなことなのでSNSへの最初の投稿は自分で削除したと彼女は説明が、これも国の監視下のインタビューで「言わされている」という印象を否めなかった。
元世界ランク1位のリンゼイ・ダベンポート(アメリカ)はこの件について、「WTAはこの問題が最初に持ち上がったときに非常に強い言葉を使っていたけど、今は残念ながらこのストーリーは少し鎮火して後ろに押しやられてしまっている。テニス界の人々は彼女に会いたがっている」と話した。
今回の『ペン・シューアイはどこに?』Tシャツの着用が禁止されたことを知ったとき、オーストラリアン・オープンに来ていた選手たちの何人かも意見を述べている。
ニコラ・マウ(フランス)はツイッターを通し、「何が起きている? 勇気の欠如だ。もし中国のスポンサーがいなかったら、どうしていたのか?」とコメントした。
女子決勝の際に身に着けるペンTシャツをプリントするための資金を募るページを通し、すでに1万2000ドルが集まっていたという。
しかしナブラチロワの見解とは裏腹に、オーストラリアン・オープン主催者は「ペン・シューアイはどこに?」のメッセージを政治的なものと見なしている。
豪州テニス協会は「オーストラリアン・オープンがすべての人々を歓迎する安全な大会であり続けるようにするため、商業的或いはは政治的なメッセージを載せた衣服や横断幕を禁じています」と説明して再検討の可能性をほのめかしながらも、「このポリシーは大会に来るファンの安全と快適さを損ないかねないアイテムに今後も適用され続けます」と述べた。
写真◎Getty Images
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