ペン・シューアイがフランス紙のインタビューで「私は消息不明になどなっていない」と主張

写真は北京冬季オリンピックのスキー競技を会場で観戦するペン・シューアイ(中国)(Getty Images)


 冬季オリンピックが開催されている北京で、フランスの日刊スポーツ新聞『レキップ』がペン・シューアイ(中国)とインタビューを行った。ペンはSNSを通して元中国政府高官のジャン・ガオリー(張高麗)氏に性的関係を強いられたと告発して以来、その安否が懸念されていた。

 インタビューの中でレキップの記者に「世界中があなたの安否を懸念していた」と示唆されたペンはまず「あまり外国のメディアを見ないから、気付いていませんでした。英語を読めないから」とやや矛盾を感じさせる返答をし、「心配してくれた人々にお礼を言いたいですが、そんなに心配されるとは思いませんでした。何故そんなことになったのか知りたいくらいです」と続けた。

 彼女はさらに11月2日に出した告発の投稿について「WTA(女子テニス協会)への電子メールや上海でのインタビューでも説明しましたが、あの投稿のあとに世間では大きな誤解と曲解がありました」とし、「私は一度も性的暴行を受けたなどと言っていません」と繰り返した。

 またレキップの記者が「投稿は30分後に削除され、そのあとあなたは消息不明になった」と指摘すると、ペンは「私は消息不明になどなっていません」と反論し、記者が「友人はあなたと連絡がつかないので、逮捕されたかと思って心配していた」とさらに突っ込むと、少し考えてから「私は姿を消してなどいなません。ただIOC(国際オリンピック委員会)やあまりに多くの人々がメッセージを送ってきたので、すべてに返事ができなかっただけです」と弁明した。

 さらにペンはウェイボー(中国版ツイッター)への問題の投稿は自分で削除したのだと主張し、理由を聞かれると「削除したかったからです」と答えた。

 記者が中国政府と問題を抱えることになったかと聞くと、ペンは「第一に、私の恋愛問題やプライベートライフは政治やスポーツと混ぜられるべきではありません」と話し、直接的な解答を回避した。彼女はまた11月2日以降の生活はごく普通のものだったと説明し、では自由に中国の外に旅することができるのかと聞かれると「第一に、人々に私がどんな人間なのか理解して欲しいです。私はごく普通の女性でごく普通のテニス選手であり、ときに幸せでときに悲しくときにプレッシャー下でストレスを感じることもあります…。誰も感じるようなことを感じているのです。旅できるか? 以前にも私が外国に行くのは、大会に出場するためか膝の治療を受けるためでした」とやや話を逸らすような受け答えをした。

 ここ最近はトレーニングを行っていないと明かしたペンは、事実上すでに引退したと匂わせさえした。大会に出るなら「恐らくシニアのチームで」と答えた彼女はもうWTAツアーに戻らないのかと聞かれると、「テニスは私の人生を変えました。それは喜びや挑戦など、多くのものをもたらしてくれました。ときにさよならを言い、引退するのは難しいものです。もはやプロの大会に参加していなくても、私はずっとテニスプレーヤーでい続けます。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが私たちのプロジェクトを台無しにしてしまい、私たちは苦しめられています。多くの大会がキャンセルされました」とはぐらかして明言を避けた。

 何故プレーを止めるのかと突っ込まれ、ペンは「私の年齢(36歳)で何度も手術を受け、パンデミックにこれほど長くプレーの中断を強いられたなら、肉体的に元のレベルに戻るのは難しいです。私はもう10年も膝に注射を必要とし、7年前に2度手術をしました。パンデミック前には膝に注射を打つために2~3か月ごとにミュンヘンに飛んでいましたが、パンデミックの今はもはやプランを立てられません。トレーニングのルーティンに戻って回復し、ふたたび大会でプレーするのは実質的に不可能です」と答えた。

 ケガの治療のためにまたミュンヘンに飛ぶかと聞かれたペンは、「膝は日常生活には支障をきたしていません。テニスをプレーすることにおいて問題なのですが、注射をしてもプレーできると保証される訳ではありません。裂傷は深刻で強い痛みがあり、すべての医師が手術を勧めました」と言葉を濁し、あたかも国外に出る必要はないかのような言い方を選んだ。

 どうしてWTAではなくIOCと話すことを選んだのかという質問には「別に選んではいません」とし、「WTAのウェブで、声明を見ました。その前にはWTAの心理学者からメール1本もらっただけでしたが、声明を見たあとに同じ心理学サポートチームから2度目のテキストを受け取りました。どう対処していいかわかりませんでした。それで私が消えたというのは、やや過剰ではないかしら。WTAの声明を見たあと、自分でWTA会長のスティーブ・サイモン氏にメールを書いて送りました。それからIOC会長がビデオでの会話を望んでいると聞いたので受けたのです」と説明した。

 WTAはインタビューに答えるペンを目にできたのは喜ばしいとしながらも、インタビューを読んだあとも変わらず「彼女が抑圧を受けることなく真実を語っているのか懸念している」とコメントした。信頼できる人物によるペンの告発に関する正式な調査を要請しているWTAはまた、「WTAはペンと(誰の介入もなく)プライベートで会って、彼女の状況について話し合う機会を要請しました。私たちは自分たちの立場を堅持し、ペンのことを考えています」と声明の中で述べている。

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写真◎Getty Images

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