フェレロが教え子の未来について騒ぐ世間に「彼をそっとしておいてやってくれ」と懇願

写真はマイアミ・オープン男子シングルス決勝をスタンドで見守るコーチのフアン カルロス・フェレロ(スペイン)(Getty Images)


 ATPツアー公式戦の「マイアミ・オープン」(ATP1000/アメリカ・フロリダ州マイアミ/3月23日~4月3日/賞金総額955万4920ドル/ハードコート)の男子シングルスで大会史上最年少のチャンピオンになったカルロス・アルカラス(スペイン)がトップ10入りするのはもはや時間の問題であるように思われる。

 マイアミでも世界ランク5位のステファノス・チチパス(ギリシャ)を倒し、インディアンウェルズではラファエル・ナダル(スペイン)をぎりぎりまで追い詰めたように、テニスだけでなくメンタル的な王者の資質を見せたアルカラスが次代の世界ナンバーワンになり得るかという議論まで巻き起こり始めている。

 しかし彼のコーチで元世界1位のフアン カルロス・フェレロ(スペイン)は、こういった騒ぎから教え子を守ることを望んでいる。

「彼を自由に、流れのままに歩ませてやろうじゃないか。将来どうなるか、どこまで至れるかについての考えや目標を今の時点で言うことは難しい。彼をのびのびとプレーさせてやろうよ」とフェレロは理解を求めた。

「彼は素晴らしい年を送れると思う。グランドスラム大会が次のステップかもしれないね。彼が2週目まで勝ち残れるよう祈ろうじゃないか」

 今こそ気を引き締めてテニスに集中すべき時期だと信じているフェレロは、「でももちろん彼は練習しなければならず、集中し続けなければならない。何故なら今の彼にとって、気を散らすのは非常に容易なことだ。彼の周囲の人々が大いに声をかけてくるだろうからね」と釘を刺した。

「だからチームはバリアを作り、彼がしばらく家で落ち着いて過ごせるようにしてやる。それから彼はトレーニングに戻って通常通り練習し、モンテカルロ・マスターズに行っていつも通りベストを尽くす。それ以外の道はない」

 フェレロはまた、父が他界したためマイアミでアルカラスに付添えなかったことを振り返り、「これが起きたあと、私にとって辛いことだったし、彼にとっても厳しかったんじゃないかと思う。そしてそんな状況であっても彼は同じレベルを保ち、より一層集中し続けるようにしていたんだ」と話した。

 2018年にアルカラスを指導し始めたフェレロが、彼の特別な才能に気付くにはそう長い時間は必要ではなかった。

「私は彼が自分よりも高いランキングのプレーヤーたちと練習していたときのことをよく覚えているよ。彼は16歳か17歳だったけど、他のプレーヤーのレベルに自分のテニスを適応させることができていたんだ。つまりそれは、彼が何かを持っているということだ。彼はその能力に磨きをかけ、毎日努力を積み続けている。という訳で、彼の潜在能力はそこにあり、あとはそれを湧き出るままにさせ、プレーさせ、物事を正しい軌道の上に置き続けるだけだった」とフェレロはATP(男子プロテニス協会)に語った。

「だから私にとってはまったく驚きでない。でももちろん、非常に迅速に実現した。簡単なことではないよ」

 クレーコートシーズンに向けてアルカラスへの注目が高まる中、フェレロは彼がこれらの大騒ぎに影響されることを防ぐためのカギは“そういったことをまったく考えないようにすることだ”と言った。

「普通の生活を送ることが大事だ。まずは家に戻り、1~2日はゴルフでもプレーしてリラックスする。そしてそれから仕事に戻っていく。それがあるべき形だよ。もちろん彼はATPマスターズ1000の大会で優勝した訳だから、とても重要なことだ」

「それは、彼が本当に速いスピードで成長しているということだ。我々は過去数ヵ月にやってきたこととは違うこと、奇妙なことは何もやるつもりはない。我々はどのようにコートに出ていくか、どのように練習するか、いくつかの状況においてどのように振る舞うべきかなどについて話す。どのようにして自分の力を信じるか、勝ったとき、或いは敗れたときに、どのように物事が進むかを理解し、敗れたときにも大騒ぎせず、可能な限り幸福でいられるようにする。つまり、普通通りにするということだ」とフェレロは通常通り歩み続けることの重要性を強調した。

「もちろん、(いい成績をおさめるための)レベルはある。今後も(こういった成功が)何度も起きるだろう。起こるであろう周囲の大騒ぎに対応するため、少しばかり彼に心の準備をさせるだけだよ」

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写真◎Getty Images

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