水曜日の逆転劇で最初のカギとなったのは、24本のラリーの末にセレナがダブルスアレーからフォアハンドのクロスショットを放ち、全力でそれを追ったピロンコバのファアハンドがネットにかかった瞬間だった。セレナはこの大事なポイントを取ったことにより、第2セットで5-3とリードするブレークに成功したのである。

　夫のアレクシス・オハニアンがスタンドの最前列から叫ぶ中、セレナは左手の拳を突き上げた。ピロンコバは膝に手を当て、悔しさをにじませながら笑みを浮かべた。

　もうひとつのカギとなる瞬間は、4度のデュースにもつれた最終セット第1ゲームで右利きのセレナが左手で打ったサービスリターンから始まったラリーにあった。さらに15本の打ち合いが続き、最後はセレナがフォアハンドのパッシングショットを放ってピロンコバがボレーをネットにかけた。

「あれは激しい攻防だったわ」とセレナは振り返った。「私はただ、できる限りのことをしようとしていただけよ。右手で打とうが左手で打とうが関係ないわ」。

　ピロンコバはコートに仰向けに倒れ、胸を上下させて呼吸を整えた。多くの汗をコート上に残したので、ボールパーソンはタオルでそれを拭きとらなければならなかった。

　そのポイントを取ったことでセレナは3本目のブレークポイントを掴み、続いてピロンコバのフォアハンドがアウトとなって1-0とリードを奪ったのである。

USオープン2020｜トーナメント表

「彼女は間違いなく、彼女が実際そうであるようにチャンピオンらしくプレーしたわ」とピロンコバは脱帽した。

　それからセレナはリードを広げ、試合が進むにつれてショットはより正確にターゲットを射抜くようになっていった。彼女の武器であるサービスは、特に素晴らしかった。

　それとは対照的に、ピロンコバは試合序盤では優位に立っていた長いラリーで問題を抱えるようになり始めていた。前半の彼女は10本以上続いたラリーで優勢だったが、最後はセレナのほうが制するようになっていた。ピロンコバは何度かドロップショットでセレナを前におびき出し、それから完璧な弧を描いたロブででポイントを取ったりした。

「私はすべてをトライした」とピロンコバは話した。

　しかし第1セットではアンフォーストエラーがわずか5本しかなかったピロンコバが続く2セットで21本のミスを犯し、反対にセレナは第1セットで11本だった凡ミスを続く2セットでは13本に留めた。

「間違くなく、第1セットでは私が試合をコントロールしていたわ。私はあらゆる種類のショットを打ち、すべてが私にいいほうに進んでいた」とピロンコバは自己分析した。「でも当然ながら、それは永遠に続かないだろうと予想してもいたわ」。

　木曜日に行われる準決勝で、第3シードのセレナは元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ（ベラルーシ）と対戦する。アザレンカは水曜日のナイトセッションで第16シードのエリース・メルテンス（ベルギー）を6-1 6-0で圧倒し、2年連続準優勝に終わった2013年以来のUSオープン準決勝に戻ってきた。

　2012年と13年の全米決勝を含め、セレナはアザレンカとの対戦成績で18勝4敗とリードしている。ちなみにセレナが最後に24本と1試合で20本以上のサービスエースを決めたのは、2012年ウインブルドンでのアザレンカ戦だった。

　もうひとつの女子準決勝では、2018年チャンピオンで第4シードの大坂なおみ（日清食品）と第28シードのジェニファー・ブレイディ（アメリカ）が顔を合わせる。（APライター◎ハワード・フェンドリック／構成◎テニスマガジン）

※写真はセレナ・ウイリアムズ（アメリカ）
NEW YORK, NEW YORK - SEPTEMBER 09: Serena Williams of the United States reacts to breaking Tsvetana Pironkova of Bulgaria in the second set during her Women's Singles quarterfinal match against on Day Ten of the 2020 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 9, 2020 in the Queens borough of New York City. (Photo by Al Bello/Getty Images)