「“氷上の牛”になるな」スライディングはフレンチ・オープンでの成功のカギ

 現役時代に世界ランク4位に至ったこともあるジェームズ・ブレイク(アメリカ)は、クレーコートに必要とされるタイプの動きを心地よいと感じたことは一度もなかったと打ち明けた。

 2004年イタリア国際の練習セッションのときにブレイクはボールを追ってスライディングしようとしたが、足が引っ掛かってネットポストの激しくぶつかり、首の骨を損傷してしまった。

「あんなことは、別のサーフェスで起こるとは思えないね」とブレイクは振り返った。

 適切なテクニックに関してブレイクは、「スライディングとリカバリーだ」と説明した。「ボールに向かってスライドして、ショットを打つというのがひとつ。僕にとっては、それから次のショットのために戻っていく“リカバリー”の部分がもっとも難しかった。ラファやノバクを見てみると、彼らはそれをいとも簡単かつ優雅にやってのけている」。

 プイグがクレーコートに移ったときの問題のひとつは、間違ったシューズだった。クレーコート用のシューズを見てみると、土が溜まることを防いで踏ん張りが効き、スムーズにスライドすることができるようにソール全面がヘリンボーン(ニシンの骨を意味するギザギザ模様)のパターンになっている。

 一般的にハードコート用シューズは部分的にしかヘリンボーンを使っておらず、よりクッションが効いている。一方でグラスコート用のシューズは、底全面に滑り止めの丸くて小さい突起物が並んでいる。現在のプロ選手たちは、3種類のシューズすべてをサーフェスに応じて使い分けている。

 あるひとつのサーフェスだけを得意とするスペシャリストの時代は終わったのだ。

「20~30年前には、ある選手がひとつのサーフェスだけでプレーするということもあった。例えばスペインの選手は、決してグラスコートでプレーしなかった」とバルセロナ出身で元トップ10選手のパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)は指摘した。彼はUSオープン準決勝、フレンチ・オープン準々決勝に進出したことがある。

「今でも多分、クレーコートでプレーするのが大嫌いな選手も何人かはいるかもしれない」と彼は昨年のパリで話していた。「でも皆が、そこでどうプレーすべきかは知っていると思うよ…。もしどうするべきかを知らなかったら、言うまでもなく満足な結果を出せないだろうね」。(APライター◎アンドリュー・ダンプ&ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真は昨年のフレンチ・オープンでのラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)

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