夏のテニスは「熱中症」と「紫外線」に要注意!

梅雨が明けたら夏だ! テニスをバリバリやるぞ!と気合が入っている方は多いのではないだろうか? 炎天下に駆け出す前に、真夏にテニスをするときの注意すべき、熱中症と紫外線への対策について知っておこう。解説は日本テニス協会強化本部テクニカルサポート、JOC強化スタッフの三谷玄弥ドクター(原文まま、以下同)。【2017年8月号掲載】

写真◎Getty Images、BBM

三谷玄弥

PROFILE
みたに・げんや◎1968年5月29日生まれ。神奈川県鎌倉市出身。東海大学大磯病院、ESSMS東湘医院にてスポーツ整形外科医として勤務。2007年からフェドカップのチームドクターとして活動。日本テニス協会強化本部テクニカルサポート、JOC強化スタッフ

体温、体重、脈拍、尿の色…

まずは「自分を知る」ことから始めよう!

油断大敵の熱中症、暑さに体を慣らそう

 発汗、脱水による体温上昇や体内の塩分(=電解質)不足が引き起こす体調の変化で、めまい、顔のほてり、身体のだるさ、筋肉のケイレンなどの症状を起こします。声をかけたときの反応がおかしい、まっすぐ歩けないなどの重症例では、生命に関わる危険もあるので要注意です。

〈熱中症はいつ起きる?〉

 真夏の高温多湿な炎天下はもちろんのこと、気候が涼しい状態から急に気温が高くなったとき(実際は真夏より、それほど暑くなくても)、身体が暑さに馴れていないときにも起きやすいのです。人間のかく汗の量、濃度はそれぞれ違いますが、身体のコンディションによっても大きく変わります。暑さに慣れてない中でかく汗の塩分濃度は血中の濃度に近いくらい高くなることもあり、そんな状態で多量の発汗をすると身体から水分だけではなく多量の塩分が喪失し、熱中症を発症してしまうのです。

身体の異常を感じたら休息を。無理してプレーするのは危険

〈熱中症の予防方法〉

 水分、塩分の摂取です。水分補給は今や常識ですが、前述のごとく汗で排出されるのは水分だけではありません。汗をなめてもらえばわかりますが、塩分も排出されています。ですから水分とともに塩分も補給する必要があります。スポーツドリンクにも塩分が含まれていますが、真夏に多量の汗をかいた場合、それだけでは足りない場合も少なくありません。昔の選手は岩塩をなめていたと聞いたことがありますが、最近は塩分を補充するタブレットや飴が市販されているのでうまく活用しましょう。 

 水分はのどが渇く前から、こまめにとることが大事。プレー中の目安としては1時間で500mlのペットボトル×2、3本程度と憶えておいてください。あまり汗をかいていないと思っていても「不感蒸泄」といって、自分では気づかないうちに身体から水分と塩分が喪失しているということも知っておきましょう。

 また、当たり前のことですが、水分や塩分は食事からの摂取も大事です。特に試合や練習の日の朝食はしっかりとバランスよく摂るようにしましょう。

 摂取する水分量が足りているかを知るためには、練習の前後で体重を計るとよいでしょう。500g以上落ちていたら要注意!試合や練習前後で同じ体重をキープすることが理想です。練習後に体重が落ち、痩せてうれしいと喜んでいる方がいますが、それは水分が抜けただけで身体の脂質は抜けていません。

 もうひとつ、自分の尿の色を観察してみましょう。脱水傾向になると尿の色は濃くなります。尿の色がいつもより濃ければ摂取する水分量が足りていないということです。一定以上の尿の色の薄さを保てるようにしましょう。ナショナルチームでも選手の体調管理の一環でこれらを行っています。

水分はこまめに補給。のどが渇く前に飲んでおこう

〈コートでの服装とアイシング〉

 白や明るい色で通気性の良いウェアと帽子を着用し、こまめに着替えることも心がけましょう。着替えるときはタオルで汗を拭きとることも大事です。エンドチェンジや休憩のとき、頸部や腋下を直接氷入りビニール袋やアイスパックで冷やすのも効果的です。

〈暑熱への馴化〉

 梅雨が終わり、夏がやって来るこの時期に熱中症対策で大切なのは、まずその暑さに身体を慣らすこと。短時間、強度の低い運動から始めて、身体に暑さを覚えさせることによって、適正な量と濃度の汗をかくことができるようになります。

 ナショナルチームが酷暑の国で戦うとき、少し早めに現地に入るのは時差ボケの調整もありますが、一番の目的は身体をその国の暑さに慣れさせること。そこで数日間かけて暑熱に馴化させ、身体に覚え込ませて試合に挑むのです。それと同じ感覚です。

〈体調管理〉

 普段から体調管理をしておくことも大事です。夏風邪や下痢、睡眠不足、二日酔いなど体調が悪いときは血管の中がすでに脱水状態になっているかもしれません。

 そんな状態での暑熱下でのプレーは危険です。試合などで無理をしなければならない場面もあるとは思いますが、体調の悪いときは無理にプレーをしないという判断も大事。自分が元気なときの体温、脈拍、体重、尿の色などを把握しておくことも重要です。いつもより熱や脈拍が高いときは、自分では気づいていない疲れや体調不良があるのかもしれません。

〈熱中症になってしまったら〉

 風通しのよい日陰に移って横になり、頚部、脇の下、鼠径部などを氷の入ったビニール袋などを用いて、冷やすとよいでしょう。そして水分、塩分を補給することも大事です。

 コート上でふらふらになって戦っている選手を見かけることがありますが、意識障害がある場合は重症です。声を掛け、反応が鈍いようなら、すぐにプレーを中断させ、医療機関を受診させるべきでしょう。

〈筋ケイレンを起こした際の対処法〉

 ケイレンしている筋肉をゆっくりストレッチやマッサージすることで血行を促進させ、異常な筋の収縮を抑えながら、水分、塩分をしっかり補給することが大事です。芍薬甘草湯という漢方薬が予防も含め一定の効果がありますが、漢方薬はドーピングに抵触する可能性があるため、選手には使用していません。

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