シュテフィ・グラフ「孤高の女王」
97年以降は膝に抱えた故障で出場できない期間が増え、また、彼女が調子を落としている間にマルチナ・ヒンギスやビーナス・ウイリアムズなどの若手が台頭。リンゼイ・ダベンポートやジェニファー・カプリアティの成長などもあって、以前のようには勝てなくなっていったが、99年のフレンチ・オープンではヒンギスの優勝を阻み、最後の一華を咲かせた。
グラフの代名詞はフォアハンドだとよく言われる。実際、ヨーロッパで彼女に捧げられた異名は「フォアハンドの貴婦人」というものだった。しかし、これは「ネットより低く飛ぶ」とさえ言われたバックハンドのスライスの切れの凄まじさとセットで本来は語られるべきもので、さらに言えば、陸上の中距離選手としても成功したと言われる彼女の身体能力が実現したものでもあった。
「重くて持ち上げられない」と対戦相手たちを苦しめたバックハンドのスライスで相手の返球を浮かせ、その俊敏な脚力でフォアに回り込んで正確無比の一撃をライン際に叩き込む。誰もがグラフのこのパターンをわかっていながら、彼女が脚に故障を抱え、スピードが落ちてくるまでは、ほとんどの選手が対抗できなかった。
バックハンドは片手打ち。低く滑るスライスは大きな武器だった
グラフの後にも多くのチャンピオンや、ナンバーワンの選手たちが生まれたが、「女王」の称号に相応しい選手は、セレナも含めてまだ出てきていないように思われる。グラフは強烈な強さと、女性的なエレガントさの両方を併せ持っていたスーパースターだった。
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