コーチのマリアン・バイダが語る強さの理由「覚醒したDJOKER〜ノバク・ジョコビッチ」
ネットプレーの習得とドロップボレーの禁止
ーージョコビッチは今年、多くの回数、そして上手にボレーをするようになりました。あなたは彼のネットプレーを好ましく思いますか?
「ネットプレーはまだまだ習得途上にあると思う。フロントコートは彼にとっては地雷源のようなものだ。あなたは彼のボレーは上手くなったと思われるかもしれないが、まだ十分ではなく、そこがもっとも改善したいと望んでいるところだ。マイアミのナダルとの決勝では、ノバクはとても自信があり、ほとんどどのボレーも素晴らしかったと思う。
あの試合は最高だったし、何もかもが彼にいいように働いた。だがそのボレーを、もっと彼のゲームのうまくいっていないところで使ってほしいと願っている。そうすればボレーでポイントを簡単に終わらすことができるだろうから。彼のテクニックは素晴らしい。戦術的にもとてもいい。いつネットに出るべきか知っているからね。しかしポジションをもっと改善する必要がある。ファーストボレーをよりネットに近いところでできるよう、最初のステップをもっと速くする必要がある」
昨年末のデビスカップ優勝はジョコビッチに大きな変化をもたらした。バイダもそれを確信している
ーージョコビッチは弱いショットに対してネットダッシュして、それを攻撃するかわりに、ドロップショットに頼ることが多すぎませんか?
「ドロップショットを使わないようには何度も言ってきた。僕はこのショット、ドロップショットが嫌いなんだ。ドロップショットは相手にポイントを終わらせるチャンスを与えることになるので、彼がドロップショットを打つと座席の中で凍りつくほどだ。予測に優れ、脚力のあるフェデラーやナダルに、彼らの大好きなネット際に近づくチャンスをなぜ与えるのだろうか? まあ彼は若く、まだ学びつつあるからね(笑)」
ーー今年のジョコビッチのリターンに関する数字を見ていくと非常に素晴らしく、中でも、リターンゲーム獲得率は42%でツアートップ。この事実についてはどのように説明しますか?
「その数字のことは知らなかった。教えてくれてうれしいよ。彼のリターンは紛れもなく世界最高のリターンのひとつだ。これまでも素晴らしかったが、今年はさらにいい。その十分な深さがファーストサービスでもセカンサービスでも、とても効果的である。そうなると対戦相手は大きなプレッシャーを感じ、どんな種類のサービスを使うのか選ばなくてはならなくなる。ノバクは相手のサービスをよく読むことができ、それがどんな種類のサービスなのか予想することができる。時々、フェデラーはファーストサービスの速度を少しだけ遅くすることがある。なぜなら、サービスをハードに打つと、速く返ってくることになるからね。フェデラーは天才であり、すべての種類のサービスを試しているが、ノバクはすべてをリターンすることができるので、あまり効果を発揮できていないようだ」
ーー専門家の中には、ジョコビッチとダビド・フェレールは現時点で2大リターナーであると言う人がいます。なぜ、ジョコビッチのリターンが技術的に優れているのでしょうか?
「反応が素晴らしいからね。もし時速240㎞(約143マイル)のサービスが飛んできたら、それを打つための時間は2分の1秒もない。彼は技術的に素晴らしいことをしていて、豪速サービスにうまく合わせ、バックスイングを短くしている。そして短い時間に調整して右や左に動く。それはどんなサービスがやってくるのかを読んだり予期したりできるという、彼の能力からくる素晴らしい反応である。あるプレーヤーはそれをすることができるものの、そうなるには6つか7つのエラーが必要である。ところがノバクやフェデラーはたったひとつかふたつのエラーをしたあとにできるようになる。それは生来の才能であるから、学ぶことはできない」
ーーダレン・ケーヒルはアンドレ・アガシやヒューイットをコーチしましたが、彼はふたつのスタッツがジョコビッチの多くを物語っていると見ています。それはセカンドサービスのポイント獲得率と、対戦相手のセカンドサービスでのポイント獲得率です。ジョコビッチはセカンドサービスのポイント獲得率が56%でツアー2位に位置します。そして相手のセカンドサービスをリターンするときは、ポイント獲得率が58%であり、驚くべき数字です。これもツアー2位の記録です。なぜ、彼がこれらふたつの重要なカテゴリーにおいて、それほど成功を収めているのでしょうか、分析していただけますか?
「プロフェッショナルなテニスプレーヤーは、セカンドサービスはファーストサービスよりも重要で、セカンドがよければいいプレーヤーであると常に言う。彼のセカンドサービスは、昨年は別として、常によかったが、現在のセカンドサービスは最高と言ってもいいだろう。ツアーで最速のセカンドサービスのひとつを持っていると考える。彼のスピンもまた素晴らしい。そしてもうひとつのスタッツだが、明らかにセカンドサービスはファーストサービスよりも速度が遅いから、敏捷な彼はうまく反応することができる。彼のリターンの技術はものすごくいいので、他のプレーヤーよりも素早くセカンドサービスを攻撃することができる。スピンサービスがどれほど扱いにくくても、それは彼にとって問題ではないんだ」
ーー今年、彼の戦略で何が昨年と異なりますか?
「デビスカップが彼の自信を押し上げ、それからオーストラリアン・オープンで優勝したことでさらに自信がつき、そのあとアメリカで素晴らしい結果を得た(インディアンウェルズとマイアミで優勝)。今、彼のゲームはとても効果的であり、どのボールにも届くことができ、動きも素晴らしい。だから戦術を変えるとか、対戦相手に適応させなくてはならないという理由がない。彼は彼らの強みも弱点も知っているんだ。ここまで到達するために我々は何年にもわたって多くの練習をしてきた。彼はもはや、ベースラインからのドロップショットをあまり打たないが、それは賢明なことだ。それから、もっと多くネットに出ることができるだろうが、それにはいくらか時間が必要であろう。それは(彼の進歩において)また別の段階にあり、僕にとってとても興味ある仕事になる」
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