世界一を育てたコーチに学ぶ「トニーナダル」(3)トニーがラファに使うトレーニング

❷状況別球出し練習

写真◎小山真司
(1)球出しでしっかり打ち抜く
コーチはサービスライン辺りからカゴボールを使って球出し。選手はベースラインで、①の基本ラリーでやったのと同じく「長く押して振り抜く」ことを意識。ボールがラリーより多少早いテンポで戻るイメージとなるが、それでも狙った場所にしっかり打ち抜いて『長い音』で打てるようにする。球出ししながら一球ずつ声をかけ、悪いところは注意する。
(2)速いスイングで打つ
トニーは、ゆっくりラケットを振ることに慣れると速く振れなくなるという理由から、通常のスイングから速くスイングすることをラファに教えた。これはしっかり打ち抜く基本形を体に叩き込んだあとに、それを速いスイングで行う練習。
速いスイングを行うには、腕や肩などすべてをリラックスさせ、力が抜けた状態から腕をムチのように使って打つ必要がある。速いスイングと力みは相容れないのだ。
球出しはサービスラインとベースラインの中間辺りから、ベースライン近くに落ちる深めのボールで、生徒はボールを速いスイングで深く打つ。練習なのでアウトを恐れずしっかり打ち込むこと。満足いくショットが8本入るまで。
(3)決め球練習
球出しで短めのボールを出し、それをウィナー、あるいはウィナーの一段階前の鋭いショットとして叩く練習。早く準備してボールとの距離感を見定めながら足を動かし、(2)同様腕をフレキシブルな状態にして、後ろから前方に踏み込んで打つ。トニーの掛け声は、「上がれ、入れ、打て」。もし目測を誤り万全の体勢で打てなければ、1本つなぎで厳しいところをつき、コーチは次に決め球を打てるようなボールを出す。

イラスト◎曲山賢治
(4)バリエーション:ロブで敵を後ろに下げ、甘く浮いてきた球を決める練習
コーチは深く球出しをし、選手はそれを相手のバックハンド側へ深いスピン形のロブで返球。コーチは次に、相手が押されて返球が短くなったケースを想定しての、短かめの浮き球を出し、選手はそれを(3)の原則を守りつつ叩いて決める(イラスト参照)。
(5)ポイント制の実戦的練習
トニーは、特に少年時代のラファを教えるとき、 同じ練習を長く続けすぎたり、ドリルばかりだと飽きるので、よくポイント制の練習をやったと明かす。これは、ここまでの(1)〜(4)でやってきたすべての要素を組み込みながらラリーを行い、得点するとポイントを獲得する、5〜10点のポイント制練習だ。
まずひとりのスパーリングパートナーのBは長くて深いロブ系のボールを打ち、練習対象となる選手Aは、(1)〜(4)で行ってきた要素(「長い音」「後ろから前にいくフットワーク」「打つ前には力の抜けた腕と速いスイング」など)に気を配りながら自由に打つ。
よい打点でしっかり踏み込んで打てるよう気をつけつつ、チャンスをつくってそれを決めるようにする。プランを頭に持ち、どこに打つべきかということを自分で考え、判断する。試合のプランを養う練習にもなる。
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