松岡修造_サービス講座「僕はこうして“サービス”を武器にした」

EPISODE4 プロ後期

サービスの戦術が重要に

 コーチのアルバロはサービスについて、ちょっとした技術的な修正を言うことはあっても、ほとんど何も言いませんでした。この頃には、膝の故障を含めて、サービスをどうやって使い、どう戦うかが課題でした。

 1995年のウインブルドンでベスト8入りを果たしましたが、前哨戦のオランダでリチャード・クライチェクに対し、マッチポイントを3本持っていて負け、ノッティンガムではマーク・ウッドフォードにマッチポイントを2本持っていて負けていました。あとちょっとのところで勝てませんでしたが、テニスがいいという実感があったんです。特にウッドフォード戦はフルセットタイブレークで、サービスゲームを一度も落としていませんでしたから。

95年ウインブルドン。95、96、97年あたりはもっともサーブ&ボレーをした時期で、戦術的なプレーを追求していた。膝の故障前に比べると、それほど膝は曲げず、上半身のひねり戻しを使うようになり、一方でトスを前に上げてサーブ&ボレーに近い重心移動にし、パワーをつくっていた

サーブ&ボレーでボディを狙う効果を知った

 膝が悪くなってからは、何本もストロークを打つという戦い方ができなくなったこともあり、また、ウインブルドンとその前哨戦の芝のコートでは、やはりサーブ&ボレーが有効でしたから、ネットに出る頻度が高くなっていました。

 ある試合でサーブ&ボレーする際、8割以上のサービスでスピンやスライスを使い、相手のボディ目掛けて打っていくと、相手はリターンで角度をつけられないので、僕の下手なボレーでも十分対応できることがわかりました。

 ボブもアルバロも、「相手のボディを狙ってネットに出ろ」ということはよく言っていたのですが、この頃になってやっと理解できたという感じでした。

サービスの確率を目安にゲーム中も修正した

 サービスを武器にしている人は、サービスが崩れると全体のリズムが崩れてしまうことになるので、早めにリズムが崩れていることに気づいて、修正しないといけません。

 僕は試合後、必ずスコア統計を見ていましたが、勝つための条件(サービスキープの条件)として、ファーストサービスの確率は60%を目安にしていました。ただし、1ゲームに最低2本のサービスポイントがあること、そしてファーストサービスが入ったときのポイント獲得率が70~80%が条件でした。また、セカンドサービスのポイント獲得率は50%を目指していました。

 これは僕の統計で見えてきたことで、このようなデータをもっておくと、試合中にサービスが崩れているかどうか気づくことができますし、修正するきっかけがつくれます。

PROFILE
まつおか・しゅうぞう◎1967年11月6日生まれ。東京都出身。身長188㎝。80年代半ばから90年代まで日本を代表するプレーヤーとして世界を舞台に活躍。95年ウインブルドン・ベスト8、ATPランキング最高位は、日本男子最高の46位。現在は『修造チャレンジ』を軸に、ジュニア育成に情熱を注ぐ一方、普及・強化に寄与。また、スポーツキャスターとしても活躍中(※プロフィールは当時のもの)

※写真◎石橋英生、中嶋常正、BBM

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