パット・キャッシュのサービスレッスン「肘の曲げ過ぎ問題について」



Topic2|両肩の傾き

サービスの 「体の傾き」「肘の角度」は 野球やアメ フトのそれと同じである

Q 「体の傾き」や「肘の角度」について、あなたの考えを教えていただけませんか。

A 女子選手たちは腕をかなり高く上げる傾向があるね。なぜそれをやる必要があるのだろうか? 私は女子選手たちが、正しいボールの投げ方をきちんと学んだことがないから起きるのだと思う。彼女たちは野球やアメフトをやったりしないから、男子選手に比べてボールを投げる機会が少なく、そういう動作を知らないためにサービスをシンプルに学べないのだと思う。

もっとも課題に見えるのは、前方への体重移動が先行し、腕やラケットが最後に出てくるということだ。野球選手やアメフト選手を見ればわかるが、彼らの肩は地面に対して傾いており、誰も地面と水平に肩が置かれてはいない。もしも両肩が地面と平行であるならば、片方の肩をもう片方の肩の上に持ってくる(肩を入れ替える)動きを行うことはできないだろう。 マルチナ・ヒンギスのサービスは、ウォズニアッキほど課題がある(前号で指摘)とは言わないが、課題があることは間違いない。彼女の最大の問題は肘を曲げ過ぎていることにある。だから彼女は全身を伝わる十分なパワーを生み出すことができないんだ。

女子選手の75%は、2つの基本的問題を抱えていると思う。ひとつは、彼女たちが体重を前方に移動しながら腰を回転していないということ。もうひとつは、腕・肘を正しい角度に置くことができていないということだ。

「バック・スクラッチング(背中をかく)動作を 教えてはいけない! 肘が極端に曲がり、 両肩が地面と水平になってしまう」


↑マルチナ・ヒンギスは ラケットを肩に担ぎ、 肘を曲げ過ぎている

ヒンギスに見る「肘を畳んで背中を掻くような動作」を指導することは大きな間違いだが、今なお行われていると考えられる。この動作は腰の回転をじゃまし、両肩が地面と水平になるため、肩を上下に入れ替えられなくしてしまう。



↑エレナ・ヤンコビッチ



↑スローン・スティーブンス



↑キルステン・フリプケンスは ラケットを 肩に担いでいない

体重移動のタイミングと腰の回転が絶妙なフリプケンス。その際、ラケットを肩に担いでおらず、両肩は自然に傾いて、体のひねりを戻す際に上下に肩を入れ替えている。その際、前方への体重移動が先行し、腕やラケットが最後に出てきているのがわかる。


Q 女子選手が「肘を曲げ過ぎる」傾向があるのはなぜだと思いますか?

A テニス界で男女のジュニア双方に教えられてきた最悪のことは―それは今日も教え続けられていることでもあるが―バックスイングの終わりのバック・スクラッチングのポジションだ。ラケットを肩に担ぐ動作、肘を畳んで背中を掻くような動作、背中を触るような動作といった表現をするあれだよ。私はそれがいかに間違っているかを強調したい。

バック・スクラッチング(背中を掻くような)ポジションをとると、肘が極端に曲がり(畳まれ)、肘が下を指すことになる。その結果、両肩を結ぶ線が傾いていないという状態(写真ヒンギス)になってしまうんだ。

これは、直すのが非常に難しい習慣だ。私もかつてその習慣をもっていて、後にそれを変えたのだが、変えたおかげでサービスの確率が劇的に向上したよ。ウインブルドンで優勝したときでさえ、私はまだちょっぴりその“背中を掻くような”バックスイングをしていたんだ。それは、子供のときにそう教えられていたからそうなったんだよ。はっきりいってそれは必要ないね。


↑イチロー選手の投球フォーム(写真◎Getty Images)

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