パット・キャッシュのサービスレッスン「肘の曲げ過ぎ問題について」



Topic3|肘の角度

ボディが動きを先導して 「腕が振られる」ときの 肘の適切な角度は「90度」

Q 昨年あなたは「私は若い選手たちに、肘を曲げるとか、ラケットで背中を掻くとか、肘を上に向けるとか、そういうことを教えたりはしない。ラケットで頭を叩くというのか? ピート・サンプラスやリチャード・クライチェクのサービスは完璧で、80〜90度の肘の曲げ具合を身につけている」と言っていました。(※フェデラーは最近はやや肘が曲がり過ぎているとも指摘していました) ほとんどの若い選手が完璧な肘の曲げでキャリアを始めていないように感じますが、それを正しく教えるための最良の方法は何でしょうか?  

A 実はそれに答えるのはとても難しいんだ。生徒たちは当然のことながら自分の肘を見ることはできないから、ここでコーチが必要になってくる。そのコーチたちが間違ったことを教えていたら話にならないが……。

オーストラリアでは多くの選手たちが、まずは前方に出てくる体のフィーリングをつかむことができるようにする、という目的で、彼らにクリケットでやるようなボーリングを大いにやらせているんだよ。その後、適切な90度の角度を身につけさせるには、コーチの助けが必要となる。

ひとつある問題として、トスが高すぎると肘を過度に曲げるための(多くの)時間をもってしまうということだ。ご存知のように、初心者はトスと腕の正しいタイミングをつかむこと(ボールコンタクト)に問題を抱えがちで、同時に彼らはそれをうまくやろうとしてトスを高く上げる傾向がある。しかし、そこで逆の方法を行うんだ。ボールが空中にある時間を縮めた方が、肘を過度に曲げる時間をなくすことができ、しかもボールコンタクトはうまくいくはずなんだ。つまり、練習しながらトスを徐々に低くしていくといいよ。

「トスを高く上げ過ぎると、 時間があまるので肘を曲げ過ぎてしまうから、 トスをだんだん低くするとよいだろう」


Q ほとんどの選手は肘を曲げ過ぎていますか? それとも曲げなさ過ぎですか? 

A ほとんどの選手は曲げ過ぎだと思う。しかし、中には逆の選手もいるよ。

昨年サンプラスに「どうやって完璧な肘の曲げを身につけたのか?」と聞いたら、彼は「子供のときは、ほとんど肘を曲げられなかったよ。肘を曲げずに振るようなサービスを打っていた」と言っていた。「その点を直すように努力しなければならず、コーチとともに今のポジションにもっていくように矯正の練習をしたんだ」と答えていた。


↑サンプラスの体重移動のタイミングと腰の回転は絶妙。肘の角度も90度を維持し、完璧だ

私はそれが信じられなくて、「まさか! 冗談で言ってるんじゃないだろうな」と返すと、彼は「本当だよ。当時はサービスを入れることができなかったし、全然パワーがなかったんだ」と言った。驚いたよ。

サンプラスはかつてクリケットの投球のようなスイングをしていたそうなんだ。だから90度の肘の角度は、相当練習を積んで矯正しなければならなかったという。この点はやはりコーチの指導が重要になるね。






↑体重移動のタイミングと腰の回転が絶妙なサンプラス。肘の角度を見れば90度を維持しており、その後、ボディが先導して回転すると、両肩が上下で入れ替わり、腕があとから振られてくる

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