ボブ・ブレットのコーチングブック(1)コーチングの骨組み「Keep it simple」
「どんなに頭の中のアイディアがよくても、やってみなければわからないことはたくさんある。頭の中で細部まで考えていたとしても、書き出してみて初めて足りないものが見つかる。そうして追求していくとおもしろいことが浮かんでくるものだ」
課題2 ビッグ・サーブを打つ
次にビッグ・サーブを打つにはどうすればいいか。必要なディテールを挙げてほしい。
コーチ「トス」「タメ(パワーポジション/powerposition)」「リラックス」「ジャンプ」「プロネーション(pronation/腕の回内)」「インパクト」「フォロースルー」
テニスのサービスは野球のピッチャーの動作ととてもよく似ている。では、ピッチャーが速いボールを投げるためには何が一番大切か。
コーチ「肩の強さ」「フォーカス。どこへ投げるか」「メンタル」「ボールをしっかり握る」「回転」「バランス」「腕の振り抜き」「肘を上げる」「スナップを利かす」「リリースポイント」
こうやって考えていくとサービスとよく似ていることがわかる。問題が難しくなったときは、こうしてほかのすぐれたものから知識を得ることも必要である。挙がった項目をシンプルにまとめてみる。
・preparation(準備)
・use of body weight(全身を使う)
・transfer(体重移動)
・arm swing(腕の振り)
・acceleration(加速)
・follow through(フォロースルー)
以上の6項目にディテールは集約されるだろう。
私はものごとをシンプルに考えるため、下半身を止めてショットを打つことで、焦点を絞るようにしている(松岡が下半身を止めてデモンストレーション)。
ここでまた考えてみる。サ—ビスをときもっとも大切なことは何だと思うか? 何から導入すればいいだろうか?
コーチ「腕の振り」
その通り。『arm swing/rotation(through the ball)』。
もしも、ものごとが難しくなったら「Keep it simple」。単純な形にして考えると一番大切なものは見えてくる。このことをおわかりいただきたい。
インフォメーションが多いのはいいことだ。ただし選手にそれを与えすぎてしまうと、わからなくなるのは選手だけではない。コーチ自身もわからなくなってしまう危険がある。
フォアでもサービスでもボレーでも、大事なのはヒッティング・ポイント=インパクト。これをまずしっかり押さえることだ。それからさまざまなディテールに手をつける。これは決して〈テークバックから始まる考え方〉ではない。インパクトは絶対にぼかしてはならない。
最後にポイントを整理する。
ポイント1
arm movement(腕の振り)
acceleration(加速)
hitting point(インパクト)
ポイント2
with legs(下半身)
ポイント3
balance(バランス)
「インパクト」を押さえた上で、「加速」「腕の振り」を考える。そして「下半身」や「バランス」を見ていくのである。(補足/大木をイメージする。幹=「インパクト」、枝=「腕の振り」「下半身」「バランス」、葉=そのほかの「デイテール」と考えよう)。
野球のピッチャーはボールを遠くへ投げるフォームから学べることは多いとボブ。
この写真はボブが腕の振り方を教えているもの。体感させると選手が理解しやすいことが、こうして教わったあとの結果によく出ていた。またボブの右手に注目してほしい(中央の2枚)。選手のラケットを押さえ、ラケットを振り出すタイミングを計っている。「インパクトまでの時間をクリエイトしてラケットを加速する」のだ。
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