「パートタイムプレーヤー」キリオスがウインブルドンにド派手な帰還

写真はニック・キリオス(オーストラリア)(Getty Images)


 2年ぶりの開催となる今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月28日~7月11日/グラスコート)のシーンに、ニック・キリオス(オーストラリア)が戻ってきた。彼はときに楽しく、ときに人を苛立たせるテニスを引っ提げ、彼の専売特許であるショーマンシップと奇抜なショットメイキングの能力を披露した。

 2月からツアーでプレーしていなかったにもかかわらず、ここ18ヵ月で15試合しかこなしていなかったにもかかわらず、キリオスはやる気を出したときには変わらず素晴らしいテニスを提供できるところを示して見せた。

 早めに現地入りして入念な準備を行うことは他の選手たちに任せ、ほんの数日前にオーストラリア・キャンベラの心地よい自宅からオールイングランド・クラブのグラスコートまで長い旅を終えたばかりだったキリオスは最終セット3-3で23時となっために前夜から持ち越されていた1回戦の試合で第21シードのユーゴ・アンベール(フランス)を6-4 4-6 3-6 6-1 9-7で倒して目覚ましい帰還を果たした。

「パートタイムプレーヤーとしては悪くない」と笑みを浮かべたキリオスは1番コートの観客たちに語った。彼はこれから“バブル”ホテルに戻ってガールフレンドとビデオゲームをすることを含め、この日の残りのプランを話した。

 月曜日と火曜日の雨で予定がずれこんんだ中、彼は大会3日目に1回戦を終えた20人以上の選手のひとりだった。雨のせいでコートも滑りやすくなり、ある選手たちは足を取られて転んだりした。

 ほとんどの時間帯でいいプレーをしたキリオスは、目覚ましいショットを打ったあとにはラケットを振ってファンたちに声援を促した。彼はまた、多くのミスを犯したあとには頭を振って「ゴミだ」などと自分をなじった。

 キリオスはまた読んだり聞いたりした自分についてのネガティブな意見をしっかり覚え込んでいるようで、それをモ​ティベーションとして使ったりからかうネタにしたりしているようだった。

「多くの人々が『チャンスはない。あんなに短い準備では行くことに何の意味はない』などと言っていた。多くのことを聞いたよ。『ソファから降りてすぐこのレベルで競える可能性なんて皆無だ』とか言われていたからね」と26歳のキリオスは明かした。彼は初出場だった2014年ウインブルドンでラファエル・ナダル(スペイン)を破るなどして準々決勝に進出したが、それ以降はこの大会でベスト8に至ったことがない。

「僕は自分のテニスは分かっている。グラスコートでどうプレーすればいいかも知っている。僕は誰をも恐れない。自分で信じ、メンタル的にいい状態なら自分に何ができるかは分かってる」とキリオスは続けた。彼は一時は世界ランク13位にまで昇ったことがあるが、ここ最近の活動不足で今は60位にランキングを落としている。

「僕は7歳のときからこのスポーツをやっているんだ。ビッグサーブを打ち込んで思い切ってプレーするだけさ」

 今年のオーストラリアン・オープンでもアンベールとフルセットマッチを戦って敗れていたキリオスはこの日、ただ「ビッグサーブを打ち、ビッグなプレーをする」だけにはとどまらなかった。

 もちろんサービスエースは23本あったし、何の前触れもなく叩くフォアハンドでポイントを仕留めたりもした。そしてアンベールのセットポイントでは、別に必要に迫られていないのに脚の間から打った無謀なトリックショットも見せた。それは彼が第3セットを落とすことになった1本だった。

 とはいえ恐らくそれが、キリオスの魅力の一部なのだろう。彼が相手では何が飛び出すか分からないから、それを見逃さないように注視したほうがいい。

 実際にキリオスは試合後半の長いラリーで印象的な辛抱強さを見せ、ときには相手のミスが出るまで待つことも厭わなかった。キリオスは14回あった9本以上続いたラリーで9ポイントを取っていた。さらに最後から2つ目のゲームでブレークを果たし、試合の舵を握ったのは彼のほうだった。

「いいプレーをしているときの彼はベストのひとりだよ」とアンベールは相手を称えた。

 それは事実だ。彼に聞いてみるといい。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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