フリッツが今季無敗だったナダルを倒してマスターズ初優勝「決して叶うと思っていなかった子供時代の夢が実現」 [ATPインディアンウェルズ]

写真は地元カリフォルニアの地でマスターズ初優勝を飾ったテイラー・フリッツ(アメリカ)、後ろは準優勝のラファエル・ナダル(スペイン)(Getty Images)


 ATPツアー公式戦の「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月日10~20日/賞金総額955万4920ドル/ハードコート)の男子シングルス決勝で第20シードのテイラー・フリッツ(アメリカ)が第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)を6-3 7-6(5)で倒し、2001年に成し遂げたアンドレ・アガシ(アメリカ)以来となるアメリカ人チャンピオンに輝いた。

 24歳のフリッツは単にアメリカ人というだけでなくインディアンウェルズのあるカリフォルニア州出身で、ATPマスターズ1000の大会で決勝に進出したのは今回が初めてだった。そして大会開始時に世界ランク20位だった彼は、この快挙で自己最高の13位に浮上することになった。

 試合後のオンコートインタビューでフリッツは感動に声を震わせながら、「試合後に僕は、『これが現実だなんて信じられない』と言い続けていたんだ。子供時代からの夢が実現したよ。決して本当に実現するなどと思っていなかった荒唐無稽な夢がね。まだ実感が沸かないけどね」と話した。

 試合前に起こっていたことを考えれば、さらに荒唐無稽だったかもしれない。昼過ぎにフリッツが足首の痛みのために練習を中断したという情報が飛び込み、女子シングルス決勝の最中には彼が棄権する可能性が噂となっていたのだ。フリッツは準決勝のあと、最終ゲームの前に脚にピリッとおかしな痛みを感じたと明かしていた。

 しかしその奇妙なムードの中で結局は行われることになった決勝が始まると、より身体の問題に苦しめられるように見えたのはナダルのほうだった。ナダルは第19シードのカルロス・アルカラス(スペイン)に対する準決勝の終盤に、トレーナーを呼んで治療を受けていた。

 出だしから2回連続でブレークしたフリッツは、あっという間に5-1とリードした。サービスを打つときに明らかに何らかの痛みを感じている様子のナダルは第1セット終了後にメディカルタイムアウトを取り、中継していたテレビの解説者は試合内容よりもナダルが途中棄権するのではないかという憶測について話していた。しかし第2セットに入ると痛み止めが効いたのかナダルが少し持ち直し始め、試合はより通常に近い様相を呈し始めた。

 その間はフリッツのほうにケガに苛まれている様子は見えなかったが、試合後に本人が明かしたところによれば開始前のドラマは非常に深刻なものだった。

「試合前、感情的にジェットコースターのようなアップダウンがあった。午前の練習で、足首にキャリアを通して経験したことのなかったほどの痛み感じたんだ。方向を変えたとき、あまりの痛みに叫び声を上げた。これでは試合をプレーするなんて絶対無理だと思い、文字通り泣きそうだったよ」とフリッツは打ち明けた。

「でも試合前の数時間に会場の医師にいろいろな治療をしてもらい、試合の少し前にスタジアム裏のコートに戻ったときは『もしかしたら試合をできるかも』という希望を感じたんだ。コーチやトレーナーも含めて僕のチームのほぼ皆が棄権するように言ったけど、僕はやると決めた。もし少なくともトライしなければ、ずっとそのことについて考えることになるだろうからと言ったら、皆は同意しないながらも僕の決断を尊重してくれたよ。そして試合が始まってみると、まったく問題はなかった。プレー中に全然痛みを感じなかったんだ」
 
 一方のナダルも試合後、「もちろん痛みはあった。肋骨の問題なのかはわからないけど、呼吸ができず、動くと針で刺すような痛みを感じたんだ」と肋骨周辺に感じた痛みについて説明した。

「痛みのせいで眩暈がして、呼吸にも影響が出ていたから痛み云々よりも気分が悪かったよ。プレーが制限されるような痛みだった」

 それでもよっぽどのことがない限り途中棄権はしないことで有名なナダルは、最後まで戦いを放棄しなかった。実際に治療を受けたあとの第2セットで彼は少しずつ体勢を立て直し、直ぐに追いつかれはしたが先にブレークしていた。ナダルはリズムを上げて相手のサービスゲームでより脅威を与えるようになったが、フリッツもストロークの安定感とフォアハンドの冴えでそれに対抗し、競り合いながらも食いついていった。

 もつれこんだタイブレークも一進一退で5-5まで進んだが、そこから長いラリーでの凌ぎ合いの末にやっと作った浮き球をナダルがボレーで叩こうとしてミスしてしまい、最後はフリッツがフォアハンドを逆クロスにを叩き込んで勝利をもぎ取った。

「僕はベストを尽くした。もちろん今日は僕の日ではなかったけど、そういうこともあるよ。決勝をこんな状態でプレーするのは辛いことだけど、僕は最後まで勝とうとトライし続けた。第2セットで(勝てる)可能性があったかもしれないけど、チャンスボールを決めきれなかった。今日は(体の問題で)多くのことができなかったから、自分のプレーを分析するのは難しいよ」と試合後にナダルはコメントした。

「今はそんなことを話すべきときじゃない。確かに今日の僕は通常通りのプレーができなかったけど、それがすべてだ。これは決勝だ。僕はトライし、素晴らしい選手に敗れたんだ。彼(フリッツ)はいいプレーをし、週を通して素晴らしい試合を切り抜けてきた。特に昨日の勝利は、今日の勝利よりも大きい。昨日の彼は、より厳しい相手に勝ったのだからね。言うまでもなく、彼は上達しているよ」

 ナダルに勝って優勝したという事実は、フリッツにとって勝利をいっそう特別なものにした。

「僕はここまでの人生を通してずっと、ビッグな相手に負けてきた。僕は常に、こういった選手たちを倒すのは不可能だと感じていたんだ。それを、こんな大きな舞台でやってのけるなんて! 大きなタイトルを獲るには、ビッグな相手を倒さなければならない」と試合後にフリッツは感慨を吐露し、それから「彼が大丈夫であるよう願っているよ」と目に見えて身体の問題に苦しんでいた対戦相手を気遣った。

 秋に開催された昨年の同大会で4強入りしていたフリッツは、「昨年のこの大会から、フォアハンドが大きく上達したよ。強打でき、同時に信頼できる武器となったんだ」と成長の手応えを口にした。

「以前はよくフォアハンドをふかしてミスし、そのせいで負けるようなこともあった。それが今は信頼を置き、重要な瞬間に攻撃の引き金を引ける武器となったんだ」

 殻を破ったフリッツは、「より高いところに登りたいけど、焦らず一歩一歩進んでいきたい」と話した。月曜日に行う最初の一歩は、足首のMRI(核磁気共鳴画像)検査と身体のケアだ。彼は右足首の状態を心配しながら、3月23日から始まるもうひとつのビッグイベントであるマイアミ・オ―プンでプレーできるよう願うと言い添えた。

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写真◎Getty Images

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