「セレナのあとに親友と戦った夜は忘れない」キャリア通算マッチ200勝のキリオス [USオープン]

USオープン1回戦でコートに登場するニック・キリオス(オーストラリア)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス1回戦で第23シードのニック・キリオス(オーストラリア)がダブルスのパートナーで親友のタナシ・コキナキス(オーストラリア)を6-3 6-4 7-6(4)で倒し、試合を振り返った。

「キャリアの中でもっとも心地悪い試合のひとつだった。お互いのプレーをよく知っているから、それに基づいたゲームプランがどちらにもあったはずだ。(仲がいいから)彼の顔をあまりに見ないで体ばかりを見ていた。それがうまくいった。最初の2セットは素晴らしかった。なるべく相手を動かし、ショットを読ませないように意識した。彼は素晴らしい選手だし、読みもいい。彼のフォアハンドの餌食になりたくなかった。サービスもよかった。ファーストサーブの確率は60%台後半かな。リターンもよかったと思う」

倒した相手はコートを離れても仲のいい、一生の友達だった。

「テニス選手の中で2〜3人は、恐らく死ぬまで連絡を取り合うと思う。彼はそのうちの一人だ。彼は今コンディションが素晴らしい状態で自信に溢れていて、上位まで勝ち進めると思っていたはずだ。ドローを見たときは本当に不幸だと思った。俺自身も調子がいいから、今大会は大きなチャンスがあると思っていた。そこでドローを見たら、複雑な気分になった。プロとしてしっかり戦えたと思う。特に最初の2セットはよかった。コキナキスとの対戦はいつでも簡単じゃないんだ」

セレナ・ウィリアムズ(アメリカ)がプレーした直後の試合で、アーサー・アッシュ・スタジアムは異様な雰囲気に包まれていた。

「3〜4日前にドローがわかっていたのがよかった。ドローを見ると感情が揺れ動くけど、試合まで4日間で誰が相手なのかわかっていたし、2日前には自分の前の試合がセレナだとわかった。今大会でセレナの試合ほどのビッグマッチはほかにない。その直後にコートに立つのは特別な機会だ。そしてセレナのあとに親友と対戦する。セレナの最後の試合になる可能性があって、そのあとにプレーする。これは忘れられない夜になるよ。おまけにキャリア通算200勝目だ。でもセレナのあとでよかったよ。観衆は興奮したままで物凄い雰囲気だった。楽しかったよ」

サービスが好調で終始、試合の主導権を握った。

「タナシ相手に勝つには、多くのファーストサーブを入れる必要がある。そして読まれないことが重要で、打つ方向を意識して変えていた。心地よくリターンさせなかった。この半年ほどサービスの調子がいい。簡単に時速215km、220kmくらいで打てている。今日は少しスピードを落としてコートを広く使うように意識した。サービスがよければ、リターンで相手にプレッシャーを掛けることができるんだ。自分のゲームプランをうまく遂行できた。第3セットでリターンゲームを一つでも取れていれば、タイブレークにもつれずにもっと早く試合を終わらせられたはずだ。タイブレークはどっちに転ぶかわからない。今はここで話しているが、あのタイブレークを落としたらまだコートで戦っていた可能性もある。だからこそあのタイブレークを取れたことが本当によかった」

オーストラリア人選手ならではの疲労感があると語った。

「テニスのツアーを転戦している選手の99%は、これだけ長期間遠征に出ることがどれほどハードなのか理解できていない。しかも自分は他のオーストラリア人選手ほどたくさんの試合に出ていない。彼らは5〜6ヵ月も遠征を続けている。俺は4ヵ月に減らしているけど、それでも厳しい。家族に赤ちゃんが生まれ、母は病気で父も調子がよくない。そんな中でも遠征を続けないといけない。ほかに選択肢がないんだ。明らかに疲労困憊だ。でも、朝起きてコートで最高のパフォーマンスを発揮する努力はした。不平を言っている訳じゃない。ただ、ハードなのは確かだ。俺が経験していることを誰も理解できないから、ハードなんだ。だからこそ自分のパフォーマンスに満足している。家族が恋しいし、俺のガールフレンドだって家族が恋しい。彼女の家族にも生まれたばかりの赤ちゃんがいる。でも、毎週のように自宅に戻る贅沢ができないから、遠征を続けるしかない。これは自分が直面している大きなチャレンジでもある。でも、この大会が終わればようやく帰れる。ここで何ができるか、見てみようじゃないか」

試合後もロッカールームでコキナキスと会話を交わした。

「彼には“完敗だよ”と言われた。ロッカールームで隣同士だから、試合のあとは自分から彼の元へ行った。“これほどやりにくい試合はなかったよ”と伝えたんだ。ダブルスで一緒に何度もコートで戦ってきたけど、それとは別にお互いをリスペクトする気持ちを持っている。俺が苦しんでいるとき、彼はいつも助けてくれた。いつも気にかけてくれている。お互いがお互いの成長を見てきた。彼は多くのケガもあったけど、大きな舞台で活躍する姿は誇らしい。オフコートでもお互いをリスペクトしている。でも本当に心地悪かった。二度と彼と対戦したくないよ」

 キリオスは2回戦で、バンジャマン・ボンジ(フランス)対戦する。

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写真◎Getty Images

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