振り返ってみればあのとき、2020年コロナ禍特別企画「from SNS」Part5「それぞれの“STAY HOME”」
大会の中止が相次ぐ中、選手それぞれが “STAY HOME”を呼びかけ独自のアクションを起こし始めた。 チャリティーイベントやSNSを使った面白企画など、テニス界の新たな一面が垣間見えた。(テニスマガジン2020年7月号掲載記事)
写真◎公式SNSからスクリーンショット、Getty Images
5月上旬にスペイン・マドリッドで開催を予定していた『ムチュア・マドリッド・オープン』が、チャリティーイベントの一環として “実施”された。とは言っても、選手たちは実際にコートに立つことはなく、自宅のテレビの前にスタンバイ。ビデオゲームのオンライン対戦を用いた“バーチャル大会”での開催を実現した。
男女各16人の選手たちがエントリーし、予選グループは4人が4つのグループに分かれる総当たり戦で行われ、上位2人が決勝トーナメントに進出。優勝賞金15万ユーロ(約1800万円)をかけて争われた。
男子シングルスには日本から錦織圭も参戦。予選はステファノス・チチパス(ギリシャ)、ファビオ・フォニーニ(イタリア)、フランシス・ティアフォー(アメリカ)と同組となり、ティアフォーから勝利したものの、チチパスとフォニーニに敗れて予選突破ならず。フォニーニ戦ではオンライン上の不具合により操作がうまくいかないシーンもあったが、プレー中は笑顔を見せるなどおおいに楽しんだようだ。
男子シングルスを制したのはアンディ・マレー(イギリス)、女子はキキ・バーテンズ(オランダ)が優勝。賞金の多くは新型コロナウイルスの感染拡大によって経済的に苦しむ下位ランク選手の支援に充てる。大会側もスペインのフードバンクに寄付を行い、ビデオゲームのオンライン大会を通じてチャリティーの輪が広がった。
今大会の正式名は「ムチュア・マドリッド・オープン・バーチャルプロ」/予選は3ゲーム先取のショートマッチで実施。下の写真は錦織対ティアフォー戦
IMGとゲーム会社の任天堂がオンラインゲームを通じたチャリティーイベント「Stay at Home Slam」を開催。マネージメント会社IMGに属する錦織圭や大坂なおみ、セレナ・ウイリアムズやマリア・シャラポワらトップ選手に加えて著名人も参加。任天堂スイッチのゲームソフト「マリオテニスエース」を使ったオンライン対戦が行われた。
テニス選手と著名人がペアを組んでプレーするこの大会は、8ペアによるトーナメント方式。錦織はDJのスティーブ・アオキと、大坂はモデルのヘイリー・ビーバーとダブルスを組んで出場した。まさかの1回戦で両ペアが顔を合わせ、錦織/アオキ組が勝利。準決勝も制した同ペアは決勝に勝ち進むも、テイラー・フリッツ(アメリカ)/アディソン・レイ(アメリカ=クリエイター)に敗れて準優勝に終わった。
錦織と大坂が対戦した1回戦ではこんなシーンもあった。錦織が操作するキャラクターが大坂のキャラクターにボールをぶつけてしまい、「ソーリー」と謝る錦織に対し、大坂は「大丈夫〜」と日本語で対応。和やかな雰囲気の中、試合はおおいに盛り上がった。
大会に参加したプロ選手や著名人には2万5000ドル(約260万円)、さらに優勝者は賞金100万ドル(約1億円)が与えられたが、そのすべては新型コロナウイルス対策への各自が選んだ慈善活動団体に寄付された。
1回戦の大坂&ヘイリーvs錦織&アオキ。試合解説はジョン・マッケンロー!
ATPの公式インスタグラムで面白い企画を発見! スタン・ワウリンカの顔写真を縦14枚×横13枚(計182人)並べ、その中にひとつだけグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)の顔写真を紛れこませて探すというもの。テニス選手だけでなく、他競技の選手も企画に参加するなど注目を集めた。
さらに2日後、ATPは第2弾として超難解な問題を投稿。それが「マイク・ブライアンの顔写真の中に紛れるボブ・ブライアンを探せ!」だ。画面上に敷き詰められた縦19枚×横27枚(計513人!)のマイクの顔写真に1枚だけボブが紛れている。
ワウリンカとディミトロフは顔立ちがまったく違うので見分けがつくものの、ボブとマイクは双子(しかも一卵性)。ファンも相当苦戦を強いられたようで、「(これは)超タフだ」とお手上げする挑戦者が続出。元世界8位のマルコス・バグダティス(キプロス)もコメントするなど話題となった。スマートフォンで根気よく探せば見つけ出せるはずなので、時間に余裕があれば、ぜひ挑戦を。
上の写真が初級編として公開された「ワウリンカ&ディミトロフ」『@atptour』より/下の写真が超難問と話題の「ボブ&マイク」。見つかるまで数分は要するはず……『@atptour』より
全世界がコロナ禍で外出自粛を余儀なくされる中で、ロジャー・フェデラー(スイス)がついに立ち上がった。誰でもひとりでできる練習として、壁打ちボレーを披露する動画をSNSに投稿した。
白いハットを被り、全身白に統一された装いで壁打ちボレーを行うものだが、ラケットの中心を正確にとらえ、速いテンポは一切乱れず。その技術はさすがのひと言。投稿文には「みんながプレーしたものを見よう。動画を返信してくれたら、いくつかコツも教えるよ。賢く帽子も選ぼうね」とコメントを寄せた。
レジェンドからの“宿題”にファンたちが反応したことは言うまでもなく、実際にフェデラーが投稿動画にリアクションすることがわかると、全世界で瞬く間に壁打ちボレーが大流行。セレナ・ウイリアムズやアシュリー・バーティらトップ選手たちも同様の動画を披露した。
上の写真はクラシックなテニススタイルで高度な技術を披露したフェデラー『@rogerfederer』より/下の写真はバーティで、選手として活躍したクリケットのボールとバットで“ボレー”『@ashbarty』より
マレーはふたり一組で行う「100回連続でのボレーボレー」を、妻のキム・シアーズといっしょに挑戦する動画を公開した。
1回目の挑戦はすぐさま失敗に終わったが、2回目には見事にチャレンジ成功。最後の一球はキムがマレーの頭上にめがけ、豪快にボールを打ち込んで終了。その一打に少しびっくりするマレーだが、すぐさまふたりは抱き合い喜びを分かち合った。
この挑戦に続いたのがジョコビッチで、妻エレナ・リスティッチと100回ボレーに挑んだ。テニス経験がほとんどないエレナのボレーは終始安定しなかったが、ジョコビッチはその“荒れ球”にすべて対応して1回目の挑戦でクリア。エレナが最後まではしゃぐ姿も見ていて面白いものとなっている。
最後に紹介するのはダブルス最強ペアで双子のブライアン兄弟。彼らが100回連続でボレーボレーするのは簡単ということで、ラケットをスマートフォン、テニスボールを卓球のボールに替えてチャレンジ! 息の合ったプレーで挑戦に成功してみせると、「100回ボレーは簡単というあなたは、このレベル2を……」とコメント。マレーから始まった企画は、さらなる広がりを見せそうだ。
(写真上)マレー夫妻の100回ボレーボレー『@andymurray』より /(写真中)ジョコビッチ夫妻は1回目で見事に成功『@djokernole』より/(写真下)ブライアン兄弟はさらにレベルを上げて挑戦『@bryanbros』より
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