チャンピオンのいない2020年ウインブルドン、栄光の歴史を紐解く

ウインブルドンに思いを馳せるとき、人は王族を思い浮かべる。ロイヤルボックスに座り、優勝杯を手渡す人々。そして、あのチャンピオンシップスのトロフィーを受け取る権利を勝ち獲る人々。しかしながら2020年のオールイングランド・クラブには、テニス競技もロイヤルファミリーの姿もない。試合はまったくないのである。

 本来であれば今頃はグラスコートでの2週間の大会が大盛況のはずだったが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのために75年ぶりの中止(戦争以外では史上初)を強いられた。そこで今は過去の大会を振り返り、ここ数十年にセンターコートを支配した伝説的な選手たちを思い出すいい機会と考えよう。

 男子の大会記録を持つのは8度の優勝を誇るロジャー・フェデラー(スイス)で、彼は少し前にウインブルドンを席巻したピート・サンプラス(アメリカ)をひとつ上回った。そのフェデラーを凌駕し、シングルスで男女を含めた最多記録となる9つのタイトルを保持するのがマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)だ。

 2週間を通してともに過ごすことを家族の伝統としたビーナスとセレナのウイリアムズ姉妹(アメリカ)は、ふたりのうちどちらか一方または双方が過去20年のうち16度に渡ってシングルス決勝でプレーした。その期間中にセレナが7勝(彼女はここ2年連続で準優勝だった)、ビーナスは5勝と合わせてシングルス12勝を挙げており、さらにふたりで組んだダブルスでも6度タイトルを獲得した。

 もう少し過去に遡れば、シュテフィ・グラフ(ドイツ)やクリス・エバート(アメリカ)らの女王からボリス・ベッカー(ドイツ)やジョン・マッケンロー(アメリカ)らの王者の名が浮かび上がる。

 それからもちろん、オールイングランド・クラブでナブラチロワと並ぶ個人通算最多記録となる20回(女子シングルス6勝、女子ダブルス10勝、ミックスダブルス4勝)の栄冠に輝いたレジェンドであるビリー ジーン・キング(アメリカ)も忘れてはならない存在だ。彼女はこれまでほぼ半世紀に渡り、選手として観客として毎年ウインブルドンに通い続けていた。

 そして“真のグランドスラム”を達成した1962年と1969年を含め、4度ウインブルドンを制したテニス界の偉人ロッド・レーバー(オーストラリア)も歴史に名を刻んでいる。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は2017年ウインブルドンで男子最多記録となる8度目の優勝を果たしたロジャー・フェデラー(スイス)(Getty Images)

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