ジョン・マッケンロー「天才という名の悪童」
最高のシーズンからスローダウン
レフティからのサーブ&ボレーに、ベースラインからのカウンター攻撃のミックスが完全に確立された84年シーズンに彼が残した82勝3敗、勝率96・47%という勝率は、全盛期のフェデラーですら破れなかったシーズン最高勝率として今も輝いている。この年にはウインブルドンとUSオープンで優勝。生涯苦手としていたフレンチ・オープンでも決勝でレンドル2セットアップからの逆転で敗れはしたものの準優勝で、キャリア最高の成績を残している。オーストラリアン・オープンには出ていないが、出ていればおそらくグランドスラム3冠は確実だったのではないか。
マッケンローに関してはサーブ&ボレーヤーという評価が一般的だが、この頃の彼のプレーは、のちのピート・サンプラスやフェデラーなどに続くオールラウンダーに近いものだったと言ってもいい。「彼は天才だったがゆえに自分の時代は築いたが、後世には何も残さなかった」と言われることもあるマッケンローだが、そのテニスの先進性は際立ったものがあったと評価されるべきかもしれない。
ただし、この84年を境に腰などに故障を頻発させた彼のキャリアはスローダウンしてしまい、以降は波の激しい戦績が続くことになる。当時から「ジョンがもっと真面目にトレーニングに励んでいれば」という声は小さくなかったが、33歳になる92年まで一線で活躍し続けられたのは、彼のテニスへの情熱の強さゆえだろうし、同時にそのテニスの先進性の高さのおかげでもあったはずだ。
さて、ここまでは「伝説上の選手」として、いいことばかりを書いて来たが、もちろん、彼のもうひとつの側面でもある「悪童」と呼ばれた部分にも触れなければなるまい。
「You can not be serious!?」は彼が判定に対して主審にクレームを付けるときの決まり文句で、彼の決め台詞としては、もっとも有名なもので、今もシニアツアーで同じセリフを叫ぶことがある。日本語にすれば「本気か?」というぐらいの意味だが、マッケンローはプレースタイルだけでなく、その言動も常に型破りで、発言にもまったく遠慮がなく、相手が主審だろうが、大会主催者だろうが、ライバルだろうが気に入らないものは気に入らないと発言し、また、対戦相手の評価についても辛辣だった。
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