バックハンドは片手打ちか、両手打ちか_元世界4位ジーン・メイヤーのバックハンド・レッスン第1弾

フェデラー、ワウリンカ、その後のディミトロフ、ティームなど、片手打ちバックハンドのトレンドは今後も続くものなのか、あるいは恐竜のように絶滅してしまうのかはわからない。だが、ファンがスタイリッシュな片手打ちバックハンドの台頭を楽しんでいるのは確かだ。何人かの元選手やトップコーチは「次にグランドスラムを獲得する片手打ちバックハンドの使い手」について、明るい未来を予想している。この特集では、片手打ちバックハンド、両手打ちバックハンドのメリットや、片手打ちの未来がどうなるかについて、元世界4位のジーン・メイヤー(アメリカ)に話を聞いた。取材・文◎ポール・ファイン【2017年7月号掲載記事】

取材・文◎ポール・ファイン 写真◎小山真司、菅原淳、Getty Images 構成◎編集部

Paul Fein◎インタビュー記事や技術解説記事でおなじみの、テニスを取材して30年以上になるアメリカ在住のジャーナリスト。多くのトップコーチ、プレーヤーを取材し、数々の賞を獲得。執筆作品はamazon.comやBN.comで何度も1位となっている。テニスをこよなく愛し、コーチとしても上級レベルにある。

ジーン・メイヤーはこういう人

Gene Mayer◎1956年4月11日生まれの61歳。アメリカ・ニューヨーク出身。スタンフォード大学卒。右利きの両サイド両手打ちのプレースタイルでツアー通算14勝を挙げた。ATP最高4位(1980年10月6日付)

まさかの片手打ちバックハンドの復活

 しばらく批判されてきた片手打ちバックハンドにとって、よかった時代の話である。テニスが誕生してから最初の100年は、すべてのレベルで片手打ちバックハンドが武器だった。それが劇的に変わったのは、1970年代にボルグ、コナーズ、エバートらのスーパースターが登場した頃だ。そこから両手打ちバックハンドが大多数を占めるようになった。ところが、ここ最近になって、まったく予想されなかったことだが、伝統的な片手打ちバックハンドが復活してブームになっている。

 31歳のワウリンカは2014年全豪、2015年全仏、2016年全米を制覇した。しかも、直近のグランドスラム13大会でワウリンカよりも優勝回数が多いのは、ジョコビッチ(5回)だけである。2017年1月のオーストラリアン・オープンでは準決勝に残った4人のうち、フェデラー、ディミトロフ、ワウリンカの3人が片手打ちバックハンドで、あと1人は両手打ちのナダルだった。

 片手打ちバックハンドのトレンドは今後も続くのか、あるいは恐竜のように絶滅してしまうのかはわからないが、ファンがスタイリッシュな片手打ちバックハンドの台頭を楽しんでいるのは確かだ。
何人かの元選手やトップコーチは「次にグランドスラムを獲得する片手打ちバックハンドの使い手は、世界8位のティーム(23歳)か、あるいは13位のディミトロフ(25歳)になるのではないか」と、片手打ちバックハンドの明るい未来を予想している。

 もしも、このふたりが“片手の炎”を絶やしたとしても、18歳で世界ジュニアランキング1位のステファノス・チチパス(ギリシャ)や、昨年17歳でウインブルドン・ジュニアを制したデニス・シャポバロフ(カナダ)が引き継いでいくのではないだろうか。

 女子テニス界では、すでに答えが出ている。両手打ちのほうが片手打ちよりもよい。片手打ちの選手が最後にグランドスラムを制したのは2010年全仏のスキアボーネだ。現在36歳の彼女は97位にまでランキングが落ちている。彼女のほかにトップ100の片手打ちは、14位のスアレス ナバロ(28歳)、25位のビンチ(34歳)、62位のゴルビッチ(24歳)だけである。

 この特集では、片手打ち、両手打ちのバックハンドのメリットや、片手打ちの未来がどうなるかについて、アメリカの元トッププレーヤーであるジーン・メイヤーに話を聞いた。メイヤーはフォア、バックともに両手打ちのプレースタイルで、1980年にシングルス4位、1980~82年にはダブルス2位となり、1982年にはアメリカのデビスカップ優勝に貢献した。また、全仏ダブルスで兄サンディとの1回を含め、2度優勝している。

 メイヤーは引退後、スポーツマーケティングとコンサルティングの会社であるトゥーハンド・エンタープライズの会長として活躍。一方で、ファブリス・サントロ(フランス)やダブルスのスターであるリーンダー・パエス(インド)らを指導してきた。

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