バックハンドは片手打ちか、両手打ちか_元世界4位ジーン・メイヤーのバックハンド・レッスン第1弾

テーマ5|それぞれの有利、不利はあるにせよ
融通が利くのは片手打ち、相手を騙せるのは両手打ち

融通が利くのは片手打ち

Q どちらのバックハンドのほうが融通が利きますか。

A 両手打ちバックハンドはかなり進化して、融通が利くショットになってきた。だが、それでも片手打ちのほうが少しだけ融通が利くショットだろう。片手打ちのほうが、スライスを打つのが容易で、より効果的なショットを打てる。低いボールを拾うのも片手のほうが打ちやすい。ドロップショットをマスターするのも片手のほうが早いだろう。

ダブルスでの両手の有利さと不利さ

Q あなたはシングルス、ダブルス両方で活躍しました。両手打ちバックハンドはダブルスではどのような点で有利、どのような点で不利に働きましたか。

A 両手打ちバックはダブルスでとても効果的だった。ダブルスのリターンゲームで、相手のサービスをブレークすることは大きなハードルとなるが、その点で両手打ちはかなり有利になる。選択肢が多く、特に鋭いアングルショットやトップスピンロブが打てるんだ。不利な点は、ネットで若干不自由すること。ネットプレーがうまいのは多くの場合、片手打ちバックハンドの持ち主で、両手打ちバックのプレーヤーはだいたい、スピーディーなボレーの打ち合いになると不利になる(次回でこの話題に触れます)。

フェデラーのスライスアプローチ|片手打ちのプレーヤーのほうが両手打ちプレーヤーよりもスライス、ドロップショット、低いショットの処理などのマスターが早く、融通が利く場合が多い

相手を騙せるバックハンドとは

Q どちらのバックハンドのほうが相手から見えにくいですか。騙せるのはどちらでしょう。

A いくつかの理由から両手打ちバックハンドのほうが相手から見えにくい。肩を動かす(回す)と、相手の視界からラケットを隠すことができるんだ。また、2本目の腕を添えることにより、最後の瞬間にその腕を使ってショットを変えることもできる。片手ではそのようにはいかない。遅いボールとのコンタクトでも、効果的にコントロールすることができるのは両手だ。

両手打ちプレーヤーはテークバックすると相手の視界からラケットを隠すことができる。この場合、パス、ロブなどの選択があり、相手を迷わすことができる

ドロップショットを打つコツ

Q 両手打ちバックのあなたのボールタッチは絶妙で美しく、ドロップショットがかなり上手でした。打つコツを教えてください。

A ドロップショットは、感覚的なショットだ。若い頃にたくさん練習することにより、ストリングがボールをとらえる(タッチ)感覚を身につけることができる。

 片手打ちバックハンドのプレーヤーにとってドロップショットは自然なものだろう。なぜならスライスを打つことが多いため、応用しやすいからだ。その点で、両手打ちバックハンドのプレーヤーに必要なマスター法を考えたい。

 まずは、スライスを打つ。これが最初だ。次にバックスピン(ボールに強力なバックスピンを与えること)を覚える。最後はボールが相手コートに落ちたときに、そのボールが前に進まないように、ボールの回転をコントロールすることだ。

 このような繊細なショットの感覚は誰でも身につけられるものではない。多くの練習が必要である。プロレベルでも、ドロップショットやドロップボレーをまったく打たない選手もいるくらいだ。また、セレナはドロップショットにチャレンジするが、繊細さを欠くためにミスをしたり、甘いドロップショットになってしまうことがある。

フェデラーのドロップショット(イメージ)|ドロップショットをマスターするための入り口はスライスにある。バックスピンをかける練習、回転量を増やす練習をしていく

両手は片手よりダウン・ザ・ラインがうまい

Q 歴代最高の両手打ちプレーヤーであるアガシ、ジョコビッチ、コナーズやナルバンディアンらはダウン・ザ・ラインに素晴らしいバックハンドを放ちました。しかし、片手打ちのトッププレーヤーは両手打ちのプレーヤーほどダウン・ザ・ラインを多用しません。これも両手打ちのアドバンテージのひとつに数えられるのではありませんか。

A 球速が速いボールをとらえる瞬間にラケットを安定させる能力が、片手打ちと両手打ちの大きな違いのひとつと言える。2本目の腕はそのときかなり大きな助けになる。

 ダウン・ザ・ラインへ頻繁に打つということは、バックハンドを打つときに方向転換が多い(必要)ということ。ということは、両手打ちのほうが方向を変えるときに、圧倒的にシンプルなタスクなので打ちやすいのである。

球足が速いボールをとらえるときは、特に両手打ちバックハンドは両手で支える分、ラケット面を安定させられ、方向転換もしやすい

それでも片手はなくならない

Q 現在、ほとんどすべての両手打ちのプレーヤーが片手でスライスも打てますが、片手打ちのプレーヤーは両手でバックが打てません。そういう状況なのに、片手打ちのプレーヤーがいなくならないのはなぜでしょうか?

A 体のつくりの違い、プレースタイル、特別な才能を持っているプレーヤーは、片手打ちのほうが合う場合があるんだ。カルロビッチやイズナーのように飛び抜けて身長が高ければ、片手のほうがいい。現に彼らのバックハンド・スライスは素晴らしい。また、フェデラーやエナンのように特別な才能を持ち、積極的にネットへ出る選手も片手のほうがいいと言える。(第2弾に続く)

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