CLOSE-UP_添田豪「32歳の継続力」
広がった景色
添田の自己最高世界ランクは47位。2012年7月23日付だ。ロンドン五輪に出場するため、この年はフル回転した。トップ100入りにあれほど苦しんだのに、トップ50の壁はあっけなかった。念願の五輪出場を果たし、グランドスラム大会にも出られるようになった。ウインブルドンでも1回戦を突破したが、そこから何を目指していいのか、わからなくなってしまった。
「五輪の翌年(2013年)ですね。やめようとは思わなかったですけど、やめてもいいかなとは思いました。もう一回、昨年のようなことができるのかなって。それまでの100位以内というモティベーションがあまりに強すぎて、思いがけず50位にも入り、そこで疲れがどっと出てきてしまって」
どうやって気持ちを持ち直したかは憶えていない。トップ100から滑り落ち、モティベーションも失いかけたが、投げやりにはならなかった。練習をコツコツと続けることはやめなかったし、それを繰り返しているうちに、今までは見えなかった景色が見えてくるようになった。30代に突入し、結婚し、子供が生まれたことで、その景色がさらに広がり、それが今の添田のモティベーションにつながっている。
「テニスがわかってきたというか、楽しいなと思うようになりました。試合を見る目線が昔は勝敗とか、ショットの凄さだけだったんですが、今は配球だったり、体勢だったり、コーチっぽくなってきました」
世界ランキングを上げるために血眼になっていた昔とは違い、今は気持ちに余裕を持ってプレーができている。もちろん負ければ悔しい。ほかの日本選手の活躍も気にはなる。だが、それ以上にテニスができる喜びを感じている。
――心技体で言えば、今はどこに重点を置いていますか?
「心と体ですね。時と場合によって、どちらかに重点を置く感じで。技は練習次第ですし、積み重ねてきたものは簡単にはなくならないと思うので。最近はメモをとるようになりました。気づいたことや言われたことをすぐに忘れてしまって。技術的なメモと精神的なメモ。昔はしたことなかったです」
――まだまだ向上心は衰えていませんね。伸びしろもあると。
「これから大きく技術が変わることはないと思いますが、試合中の作戦とか、本当に少しのきっかけで大きく(結果は)変わるので、そこをつかんでいけばまだ上に行けると思います。直せる技術もあると思うし」
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