デイビス&フルーリアン_試合に勝つテニスを養うための3ステップ戦略〜第32回(2018年)TTCスポーツ科学セミナーvol.03

練習 2 相手の頭に勝つ⇨自制の利いたショットを打つ

コートに目安となるマーキングをして、リスクを負って攻めるべきとき、リスクを負わずにプレーするべきときを判断する

 相手にいいプレーをさせない効果的なプレーや戦術を選択するために、まずはどういったプレーがポイントが取れるプレー(ハイリウォードのプレー=高い報酬があるプレー)なのか、どういったプレーが安全なプレー(ローリスクのプレー=リスクの低いプレー)なのか、といったことを理解する必要があります。

 基本的にプロの選手であれば、クロスラリーでミスをすることはほとんどありません。ですから、このラリーでポイントを取ることはかなり難しい。これはローリスク、ローリウォード(リスクが低く、報酬も低い)プレーです。

 基本的にミスが出やすくなるときというのは、ラリーの方向を変えるときです。プロの選手は腕だけではなく、体と腰を使ってボールを打っていますが、ショットの方向を変える際も体で方向を変えます。

 フェデラーなどトッププレーヤーは、素晴らしいステップでコートの内側に回り込んでクロス(インサイドイン)と逆クロス(インサイドアウト)を打ち分けますが、体をさばいて逆クロス(インサイドアウト)に打つ際は、クロスでラリーを続けているときよりは、ややミスのリスクを背負います。クロスラリーがローリスクというなら、インサイドアウトのショットはミディアムリスク(中くらいのリスク)です。

 そして、もっともポイントが取りやすいハイリウォード(高い報酬)のショットは、ダウン・ザ・ライン。ショットの方向を完全に変える必要があるため、これはハイリスク(高いリスク)のプレーです。高いレベルの試合では、ほとんどのミスがダウン・ザ・ラインのミスと言っていいでしょう。

 私が試合を見るときは、単に選手がどのようなショットでミスをしているかどうかを見ているわけではなく、そのミスが高いリスクを負ったミスかどうかを見ています。

 例えば、自分が教えている選手が試合でダウン・ザ・ラインのミスをおかしたとして、彼のポジションを見て、そのリスクを負うべきときだったかどうかを見ます。練習でわかりやすくするためには、例えば、マーカーを置き、その前から打つ場合はリスクを負ってダウン・ザ・ラインに打つべきときであり、もしその後ろから打つ場合はまだダウン・ザ・ラインに攻めるべきではなく、ローリスクのショットを選択すべきです。

 試合中および練習中のラリーでは、私はこのように選手の自制心を育てます。なにも「ハイリウォードのショットを打つな」と言っているわけではなく、打つのは構いませんが、そのリスクを理解した上でプレーしなさいと常に言っています。

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