大坂なおみ『ほとんど死にかけた』とオフシーズンを振り返る
日本の大坂なおみ(日清食品)はオフシーズンに、『死をかすめた』と自らの経験を表現した。つまり彼女は少なくとも、自分の力がおよばないところに身をおいたと感じたということだ。
彼女はまた先月に、新コーチとしてウィム・フィセッテ氏を自分のチームに迎え入れた。それゆえ彼女は2020年には新しいものの見方、展望を持つことになるかもしれない。
オーストラリアン・オープンのディフェンディング・チャンピオンである大坂は、ブリスベン国際でのマリア・サカーリ(ギリシャ)に対する1回戦で今季を始める。大会は月曜日から始まり、会場はすでに進行中の男子世界国別対抗戦のATPカップと分け合うことになる。ブリスベン国際に出場するそのほかの5人の元グランドスラム大会優勝者の中には、世界ランク1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)の顔もある。
大坂は昨年1月末に世界1位に浮上し、年末のWTAファイナルズは肩の故障で途中棄権し、結局2019年を世界3位で終えた。
シーズンオフが長めの休暇となった本人によれば、“初の本格的バカンス”をカリブ海に旅することにした。しかしそこで、ことは彼女の力の範疇を超えてしまったそうだ。
姉まりが言い張ったため、彼女はタークス・カイコス諸島を訪れた際にパドルボートで海に出た。素晴らしかったと大坂は言ったが、それも“潮に流されてしまう前まで”だった。
「潮の流れが私たちをとらえ、私はもう少しで死ぬところだった」と彼女は明かした。
より詳細を話してほしいとせがまれた大坂は、その経験を振り返った。
「いい? 怖い話というのは誇張されてしまうものだけど、私は自分の物語を話すわ。まりは私が嘘をついているって言うかもしれないけど、これは個人的に私に起きたことなの」
その筋書きには、涙、喧嘩、サメを目にしたことが含まれていた。
「自分に何が起ころうとしていたか、見ることができたらいいと思うわ。とにかく私たちはパドルボートで海に出たの。最初は問題もなく、すごく美しかった。とても天気のいい美しい日で、ヒトデなんかを見たわ。それから不意に潮に流され、(元いた場所から)どんどん遠くなり始めたものだから、私は怖くなってしまった。私の見間違いでなければ、本当に遠くなってしまっていた」と大坂は語った。
彼女の姉はただ流れに乗っていき、より流れの穏やかな水のほうに回って戻ろうと彼女を励ましたという。
「私は、『私たちをどれほど遠くまで連れて行く気?』という感じだった。水はいまや黒く、ホームは小さな点のようになって見える。そして私は、泳ぎはそれほど得意じゃない」と大坂は話した。
「それから私は水の中に落ちてしまい、カリブの海にいる多くのサメのことを考えて彼女(姉)に叫んだの。『もし私は死んだらあなたのせいだからね。ママに、私がタークス・カイコス諸島でどんなふうに死んだか、あなたが話して聞かせなきゃいけないのよ』という具合に」
彼女は思い返しながら、その出来事について笑うこともできた。しかしその瞬間には、「私は泣きそうだったわ。それからなんとかボートの上に戻ったのだけれど、それから彼女(姉)が『サメが見える』なんて言うのよ。だから私はもう、泣き叫んでいたわ」。
「でもその瞬間、私はこんなふうに死にたくないと心から思った。それがこの物語のエンディングよ」
それは驚くべきエンディングではなかった。彼女は生き延びたのだ。
大坂のテニスキャリアの次章は、彼女のその経験に基盤を置くのだろう。
「私はただ、自分は人生で本当に多くのことを経験していると感じている。そして、それらすべてを大局的に見ようと努めている。それらはすべて、自分にできると決して思っていなかったことなのだと」
2018年USオープン、2019年オーストラリアン・オープンと、大坂は2大会連続でグランドスラム大会に優勝したが、タイトル防衛にはまだ成功していない。1月20日にメルボルンでオーストラリアン・オープンが始まろうとしている今、それが彼女が2020年にやることができればと願っていることなのだ。
(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)
※写真は大坂なおみ(日本/日清食品)、1月4日ブリスベンで撮影
BRISBANE, AUSTRALIA - JANUARY 04: Naomi Osaka of Japan speaks before the draw, ahead of the 2020 Brisbane International at Pat Rafter Arena on January 04, 2020 in Brisbane, Australia. (Photo by Jono Searle/Getty Images)
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